一般社団法人ジャパンEコマースコンサルティング協会

トップページ JECCICA記事 「総合物流施策大綱」の発表は物流問題を再認識する良い機会
シェア
ポスト
メール

「総合物流施策大綱」の発表は物流問題を再認識する良い機会

政府による「総合物流施策大綱」の閣議決定

3月31日、政府による「物流施策大綱(2026年度~2030年度)」が閣議決定されました。1997年に初めて制定されて以降、数年間隔でリニューアルされ、今回は数えて第8次の大綱となります。

本大綱は政府における物流政策の指針を示したものであり、関係府省庁が連携して総合的、一体的な物流政策の推進を図るうえで、その基礎となるものです。様々な物流課題を抱えるEC業界にとって、本大綱の中身はとても重要です。特に物流関係の方は中身の把握をお勧めします。

「総合物流施策大綱」の要点

今回の大綱の施策の要点は次の5つです。

  1. サービスの供給制約に対応するための徹底的な物流効率化
  2. 物流全体の最適化に向けた商慣行の見直しや荷主・消費者の行動変容、産業構造の転換
  3. 持続可能な物流サービスの提供に向けた物流人材の地位・能力の向上と労働環境の改善
  4. 物流に携わる多様な関係者の連携・協力による物流標準化と物流DX・GXの推進
  5. 厳しさを増す国際情勢や自然災害等に対応したサプライチェーンの高度化・強靱化

なお具体的な記述を確認できなかったのですが(※実際にありましたらご容赦ください)、報道によれば置き配など非対面による受け取り率を2030年度までに50%に引き上げる目標を政府は掲げているとのことです。しかし私はこの目標達成はかなり厳しいのではないかと考えています。

再配達率の推移

その理由を述べる前に、再配達率の推移について見ておきましょう。

国土交通省が半年に1度実施している再配達率調査では、2025年10月時点で、大手宅配便事業者3社9.5%、同6社8.3%となっています。グラフの通りここ数年逓減傾向ではありますが、2025年4月と10月はほぼ同じであり、頭打ちかもしれません。

元々の政府目標は2025年時点で7.5%でしたので、結果的に未達となりました。そのような状況であるため、さらに思い切った政策が必要と政府が判断し、置き配など非対面による受け取りを推進しようとする方針はとても理解できます。深刻な人手不足もあるため、なおさらその強化方針は理にかなっていると言えるでしょう。

非対面での受け取り率が伸びにくい理由

しかしながら、非対面での受け取りが進みづらい要因として、宅配ボックスを使用しない置き配の場合、窃盗などのリスクがあります。置き配に関する消費者アンケートの結果はいくつか公開されていますが、置き配にネガティブな消費者が一定数いることがわかります。

また政府統計によれば、戸建て住宅の比率は2023年度時点で52.7%と過半数です。最近は戸建て住宅でも宅配ボックスを設置しているケースを見かけるようになりましたが、まだ絶対数は多くありません。

加えて集合住宅の場合、築年数が古い物件は宅配ボックスの未設置が多く、特に賃貸物件の場合はボックス設置がオーナーにとってコスト増となるため、どうしても敬遠されやすいと思われます。

高い目標設定は政府の焦りと強い意志の表れ

置き配を敬遠したい消費者心理、ならびに宅配ボックスの設置数が飛躍的に増えづらいことを踏まえれば、非対面での受け取り率は伸びにくいのが事実だと思います。とはいえ、再配達率を改善するためには、どうしても率を改善するしか他に打つ手がないのが正直なところでしょうか。

政府が2030年の非対面での受け取り率の目標値を50%と高く設定した背景には、そうでもしないと事態が改善しないという政府の焦りと強い意志の表れではないかと私は捉えています。

大綱の発表は物流問題を再認識する良い機会

総合物流施策大綱の話に戻りますが、どれくらいの方々がこの大綱の存在を知っているでしょうか。仮にその存在を知っていたとしても、耳にしたことがある程度で中身を理解している人はさらに低いでしょう。加えて再配達率がなかなか下がっていない事実を知っている人も少ない気もします。

EC業界はモノを売ることに熱心ですが、再配達についてはどこか他人事のように捉えている人が多いように思えてなりません。今回総合物流施策大綱が数年ぶりに新たに発表されましたので、物流問題を再認識する良い機会であると私は思います。

シェア
ポスト
メール
客員講師

本谷 知彦

システムエンジニア、IT系研究員、システムコンサルタントを経て2013年よりECを中心としたリサーチ・コンサル業務に従事。EC業界のスタンダードとなっている「経済産業省の電子商取引に関する市場調査」を2014年度~20年度にかけて7年連続で責任者として担当。自称「Mr.EC化率」。

関連記事

客員講師

本谷 知彦

システムエンジニア、IT系研究員、システムコンサルタントを経て2013年よりECを中心としたリサーチ・コンサル業務に従事。EC業界のスタンダードとなっている「経済産業省の電子商取引に関する市場調査」を2014年度~20年度にかけて7年連続で責任者として担当。自称「Mr.EC化率」。

執筆記事の一覧

「顧客満足って何?」
ユナイテッドアローズのOMO戦略
Temu初月1,000万円セラーの実例