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ECで「消費の二極化」は本当に発生しているのか?

「消費の二極化」への関心

一昔前と異なり、最近は「消費の二極化」がキーワードとしてクローズアップされることが多いように思えます。富裕層でもファストファッションのように安価な衣類を好んで購入するかと思えば、収入レベルを問わず、こだわりがあれば高額商品でも購入したい意向が強いという話を耳にします。そのような話に触れると、私自身も確かにそうかもなあと思ってしまいます。自分自身の行動に置き換えた際も、あまりこだわらないものは極力安いモノを選び、どうしてもこだわりたいモノについては、ついつい財布のヒモが緩みがちです。

しかし冷静に考えてみると、「消費の二極化」に関するデータによる裏付けを目にしたことがありません。これは正しい事象なのでしょうか、それともイメージなのでしょうか?

実際に発生している事象は?

次のグラフは、Nint ECommerceを用いて作成した、2大ECモール(Amazon、楽天市場)合計での価格帯別の流通総額の比率に関する経年推移です。

2020年と2025年を比較してみると、5,000円未満の比率は下落している一方で、30,000円以上の比率は上昇していることがわかります。また、それ以外の価格帯についてはほとんど変化がないことも、数字を見ていただければよく理解できるでしょう。

もし消費が二極化しているとすれば、5,000円~10,000円や15,000円~20,000円といった中間価格帯の比率が下落し、その分5,000円未満や30,000円以上の価格帯の比率が上昇しているはずです。しかしながらそうなってはいません。このデータを見る限り、消費の二極化の事象は発生しているようには見えません。

全体的にどの価格帯でも少しずつ価格が上昇

この事象をどう捉えるかですが、両端の価格帯のみに変化が生じているのではなく、全体的にどの価格帯でも少しずつ価格が上昇したと見るのが正しいように思えます。その結果、両端以外の価格帯では、数字の変化が生じていないということです。

しかし実際には両端以外の価格帯でも中身(売れている商品)については変化が生じていると考えられます。とすれば、やはり消費の二極化は発生しておらず、イメージ先行であり、何らかの一部の事例や出来事をもってあたかも全体的に消費の二極化が生じていると思い込んでいるだけなのかもしれません。

自社ECでは消費の二極化が生じている可能性あり

ただし、ここで気を付けておきたいのは、あくまでもこのデータは2大ECモール(Amazon、楽天市場)合計での価格帯別の流通総額の比率であるということです。つまり、自社ECについては含まれていません。したがって、自社ECの世界ではひょっとすると消費の二極化が発生している可能性が考えられます。

既知の通り、ECモールでは競争状態が激しく価格を上げることが難しい側面があります。一方自社ECはいわば自由演技の世界です。もちろん価格競争力も重要ですが、ECモールと比較すればやや緩く考えられているのではないでしょうか。とはいえ、2大ECモール合計の流通総額は国内EC市場規模の6割以上に達しているほど大きなウェイトを占めている点を忘れてはならないでしょう。よって、仮に自社ECの世界において消費の二極化が生じているとしても、マーケット全体のインパクトは強くないということになります。

消費の二極化は限定的に発生している程度の認識で構わない

結論として「消費の二極化はECの世界で生じているかもしれないがある程度限定的」ということでしょうか。物価高騰の影響もあって、価格設定に悩む事業者は多いと思います。価格を上げることで売れ行きが悪くなる恐怖感はあるでしょう。思い切って商品を高付加価値化し、物価上昇分を吸収するアイデアも有効かもしれません。

しかしそれはそれとして、現実には消費の二極化は限定的に発生している程度の認識でよいのではないでしょうか。シンプルな思考を心掛け、自社商品に磨きをかけ、それに見合う価格設定を目指していただければよいのではと思います。

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客員講師

本谷 知彦

システムエンジニア、IT系研究員、システムコンサルタントを経て2013年よりECを中心としたリサーチ・コンサル業務に従事。EC業界のスタンダードとなっている「経済産業省の電子商取引に関する市場調査」を2014年度~20年度にかけて7年連続で責任者として担当。自称「Mr.EC化率」。

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客員講師

本谷 知彦

システムエンジニア、IT系研究員、システムコンサルタントを経て2013年よりECを中心としたリサーチ・コンサル業務に従事。EC業界のスタンダードとなっている「経済産業省の電子商取引に関する市場調査」を2014年度~20年度にかけて7年連続で責任者として担当。自称「Mr.EC化率」。

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