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データに見るクロスセル需要の潜在性

世界の消費者はECで1回あたり3.9個の商品を購入

今回のネタは、少し角度を変えてとても興味深いデータに関する日本と世界の比較を行いたいと思います。その興味深いデータとは、1オーダーあたりの平均購入商品点数に関するデータです。2025年のデータになりますが、グローバルの消費者の1オーダーあたりの平均購入商品点数は3.9個だそうです。残念ながら国別や地域別の詳細なデータはないのですが、3.9個という数値から、国別、地域別でみても恐らく3~5個のゾーンで分散するのではと私は予想します。グローバルの消費者はECで“そこそこ”まとめ買いしている状況が想像されます。

一方で日本の消費者は1回あたり1.7個にすぎない

では日本の消費者はどうでしょうか?残念ながらそのものズバリのデータがありませんでしたので、私は複数のデータから独自に算出を試みてみました。その結果、1オーダーあたりの平均購入商品点数は1.7個という数値になりました。グローバルの数値と比較すると、日本は半分以下に過ぎません。グローバルの消費者はある程度まとめ買いを志向する人が多い一方で、日本の消費者はECにおいて1個か2個程度購入するケースが大半であるということです。これは日本の消費者の「ECにおける消費行動特性」と見てよいのではないでしょうか。

1オーダーあたりの平均購入商品点数の比較(グローバル対日本)
1オーダーあたりの平均購入商品点数の比較(グローバル対日本)

実店舗網が充実する日本ならではの現象

なぜ日本とグローバルでこれだけの差が生じているのでしょうか?端的に申し上げて、やはり日本は実店舗が強いということが、このような現象を生じさせていると私は考えます。ご存じのように日本はEC化率が10%に届いておらず、諸外国と比較して低い状況です。日本は実店舗網が充実しているため、普段の買い物において実店舗の利用が消費者にとって便利である(特に大都市圏において)点は疑いようがないでしょう。したがって、日本の消費者はいざECで何らか購入しようとした際、1点か2点程度の購入で済むということではないかと想像します。もちろんそのような消費行動が全てではないでしょうか、概ねそのようなケースが多いということかと思います。

物流面での要素も影響しているのでは

さらに付け加えるならば、日本ではラストワンマイルのレベルがとても高いことがあるかもしれません。Amazonや楽天をはじめ、様々な事業者が配送スピードの高速化や料金の無料化(事業者側による負担)を競っています。よって消費者は思いついたときにサッと1品だけ注文してサッと届けてもらうといったスタイルのオーダーが多いように思われます。その結果、オーダーが小分けになっているということではないでしょうか。

シンプルに考えれば「クロスセルの余地が大きい」ことを意味する

以上のように、日本とグローバルの差は、実店舗網が充実していること、および物流面での要素が影響していることが考えられます。グローバルの3.9個に対し日本が1.7個ですので、シンプルに考えれば日本のECではクロスセルの余地が大きいことを意味します。しか
しながら上述のふたつの要素、特に実店舗網が充実していることを踏まえれば、そう簡単に消費者の消費行動が急に変化することはないでしょう。ですが少しずつ時間をかけてでもクロスセルを意識したアプローチが奏功するのではないかと、私は期待しています。ECの利用人口の絶対数がこれから先増えることはないでしょう。したがってEC市場がさらに活性化するためには、クロスセルは非常に重要であると考えます。

AIによるクロスセル効果に期待

事業者の方々からすれば「単純にはいかない」ということかもしれません。恐らく実際はそうなのだろうと私も思います。とはいえ、現在AIがとてつもないスピードで進化しており、例えばGoogleのUCPに代表されるようにエージェンティック・コマースが普及しようとしています。AIを使用してクロスセルのレコメンドを行うケースはこれまでにも取り組まれていると思いますが、さらにそのレコメンド精度が向上することで、より消費者を惹きつけることができるのではないでしょうか。データに基づいたアナリストとしての見解に過ぎませんが、ぜひ地道にでもトライしていただけると嬉しい限りです。

以上

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客員講師

本谷 知彦

システムエンジニア、IT系研究員、システムコンサルタントを経て2013年よりECを中心としたリサーチ・コンサル業務に従事。EC業界のスタンダードとなっている「経済産業省の電子商取引に関する市場調査」を2014年度~20年度にかけて7年連続で責任者として担当。自称「Mr.EC化率」。

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本谷 知彦

システムエンジニア、IT系研究員、システムコンサルタントを経て2013年よりECを中心としたリサーチ・コンサル業務に従事。EC業界のスタンダードとなっている「経済産業省の電子商取引に関する市場調査」を2014年度~20年度にかけて7年連続で責任者として担当。自称「Mr.EC化率」。

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