楽しく誰にも分かるマーケティング：Vol.58 コロナ禍になり改めて向き合えた「幸福」の本質②

「長続きする」幸せ４つの因子
前回に続き、幸福学の第一人者である慶応義塾大学の前野隆司先生による、心の要因による幸せ「4つの因子」から、前回は「自己実現と成長」「つながりと感謝」に関して、自身の経験をお話ししました。今回は後半の２つ「前向きと楽観」「独立とマイペース」について振り返ってみます。

幸せの因子③「前向きと楽観」
３つ目の、「前向きと楽観」。自己肯定感が高く、いつも楽しく笑顔でいられることです。私はＡＢ型ということもあってか、性格に二面性があり、人前では明るく笑顔で振舞う一方、とても心配性なところがあります。会社員を辞めてフリーランスへの転向も、「実際にやれるのか？お金や家族は？・・」など、いざとなると大きな葛藤があり、なかなか決断に至りませんでした。そんな３７歳の時に、幾つかの偶然が重なって受けた超音波検査で腎臓に影があり、癌宣告をされました。幸い初期の癌で手術後に退院しましたが、この体験で私の中のＯＳは再インストールされ、人生観は大きく変わったのです。「人間いつ死ぬか分からない」、「もしかすると転移して５年後はこの世にいないかも・・」と腹を括ると、仕事が来なくても「命まで持っていかれない」と思えて、怖いことがなくなったのです。「Cancer gift（キャンサーギフト）」という言葉がありますが、まさに癌体験をして得られた学びの贈り物だったようです。

そして３８歳になる年にフリーになり順風満帆でしたが、ちょうど設立１０年を経過した１９９８年のリーマンショック、そして２０１１年の東日本大震災と景気の悪い時期が続き、ちょうど私が４０代から５０代に入った自分自身も、人生とキャリアの転換期だった頃で厳しい局面が何度もありましたが、人とのご縁がつながり何とか救われてきました。

今でも人間ですから、今後の不安がよぎりますが、「まあ、いっか・・」と思えます。それは今年で私は６３歳、人生を競馬に例えると、第４コーナーを回り最終直線が見えて、残りの距離が長いか短いかも分からない中で、今この瞬間に健康でいられるだけでラッキーと楽観的に考えられるからです。昨今人生１００年時代に対して、今後のお金や生活を不安視する傾向が大きいですが、「人生は守りに入ると不安が大きい」ようにも思えます。

幸せの因子④「独立とマイペース」
最後の4つ目は、「独立とマイペース」。他人と比較せず、自分らしくやっていけることです。そもそも３７歳の時に、会社員を辞めてフリーランスになったのですから、その時点で私はかなりのマイペースです。とは言え、子供が巣立つまでは家族の大黒柱としての責任を感じていました。ですが、今では子供も社会人になり、自身の仕事の面では気負わなくなりました。４年前から自らの体験や気づきを基にして提唱している次世代シニア「ＡＢＳ世代」の仕事は、２０年に及ぶ趣味のディスコ通いで気が付いた、雑誌「ＪＪガールとＰＯＰＥＹＥ少年その後・・」です。自分がこの世代であり、この世代のプラス面もマイナス面も分かることと、自分が楽しんで好きで手掛けていることから、周囲の目は全く気になりません。

最近は物欲も低くなり、ファッション好きの私は４０代の頃にオーダーした好きなスーツを体型変えないように大切に着たり、ユニクロなどファストファッションをうまくコーディネートしています。最近の関心事は、まったくやらなかった「料理」、そして「運動」です。若い頃から憧れていた「お互いが自立した夫婦像」は、家内に頼らなくてもいい生活。独立とマイペースで、この先が生きていくことができれば最高です。

やはりいつでも「笑顔」は大切
前野先生の、心の要因による幸せ「4つの因子」に沿って自分自身の人生を棚卸してみると、案外満たされていることに気がつき、お金をかけなくても、身近なちょっとしたことで幸せな気持ちになれたりすることが、今回よく分かりました。そして自身の経験を振り返って、4つの因子に共通しているのは「笑顔」だと思いました。私より年上で人生楽しんでいる方は、皆さん気さくでニコニコしていらっしゃいます。また以前にご紹介したエイジング学の「ジェロントロジー」では、幸せの定義は「自分の大切な人や大切なお客様を笑顔にすること」と定義付けています。

ビジネスの対象であるお客様も一人の人間です。その「お客様をどれだけ笑顔にするか？」は、時代が変わっても、絶対に変わらない「人間の本質を捉えたマーケティング戦略」であり、その上位概念には「どのようにして自社の強みで人を笑顔にするのか？」が明言化された「企業理念」が必要不可欠です。仕事もプライベートも、どんなに大変な時でも、笑顔だけは忘れない。やはり「笑う門には福来たる」なんですね。