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楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.92 【マーケティング・ジェロントロジーが生み出す「生きがい消費」】

ジェロントロジー(加齢科学)をマーケティングに活かす

前回のコラムでは、ジェロントロジー(加齢科学)をマーケティングに活かすことで、「健康寿命」は日々の小さなワクワクから延ばせる、ということをお伝えしました。
今回はその続きとして、私が成熟社会の今、年齢に関わらず特に重要だと考えている「生きがい消費」について掘り下げてみたいと思います。

「生きがい消費」とは何か?

マーケティングの教科書で、最初の方に登場する理論に、米国の心理学者アブラハム・マズローの「欲求五段階説」があります。その内容は、人間の欲求は、「①生理的欲求⇒②安全欲求⇒③社会的欲求(帰属)⇒④承認欲求⇒⑤自己実現欲求」へと段階的に高まる、という考え方です。

ジェロントロジーを学び、改めて感じたのは、この理論は成熟社会そして50歳以上の新たな大人市場を理解する「マーケティングの核」だと認識したことです。

古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「人間は社会的動物である」と説きましたが、まさに人は“誰かとつながり、役割を持ち、自分らしさを発揮する”ことで、心身ともに健やかでいられる、こうした内容がジェロントロジーで解明されているのです。

考えて見れば、私たちは「モノやサービス・体験」を何故消費するのか?その欲求は、全てこのマズローの「欲求五段階説」で説明が可能です。

生きていく上での基本的欲求は「生理的欲求・安全欲求」です。一方で成熟社会になればなるほど、高次な欲求である「社会的欲求(帰属)⇒承認欲求⇒自己実現欲求」を満たしたくなります。

例えば、「ファッション」を考えて見ましょう。服を何故買うのか?基本的欲求は「体を守る、身を隠す、寒暖対策」です。一方で高次な欲求、言い換えれば真の欲求は、「自己表現したい、他者評価されたい、人を笑顔にしたい、若々しくありたい」このように整理することが出来ます。

特に60代(50代)以降は、不安解消にコンセプト(顧客価値)の視点が向く傾向があります。いわゆる「悩み解決=Pain Point」です。端的に言えば「生理的欲求・安全欲求」を満たすコンセプトの提案です。

一方で、人間の真の欲求「自分は何者なのか?」「これから何を楽しめるのか?」に応えるコンセプトの提案が、世の中に圧倒的に少ないと思います。そこには間違いなく、ブルーオーシャンな市場があります。

私は、この真の欲求を満たし、人生を前に進める消費を「生きがい消費」と呼んでいます。

マズロー理論を「実践に置き換える」ジェロントロジーとは?

「心がワクワクする」「自分らしさを再発見する」こうした潜在ニーズを顕在化させる際に、ジェロントロジーの知見は大きな力を発揮します。

幸福ホルモン(セロトニン・オキシトシンやドーパミン)、好奇心が脳にもたらす活性、更年期による心身の変化など、人は年齢とともに“変化する存在”です。重要なのは、その変化を「衰え」ではなく、「次のステージへの移行」と捉え直す視点です。

私がABS世代(アクティブ・バブル・シニア)を提唱した際に、もともと気が付いた「ディスコ」ですが、近年注目され、夜のイベントのみならず、フィットネスにも波及して人口は増加しています。

ディスコでワクワクしているABS世代は、50代・60代を迎え、何十年振りに訪れたディスコの時間と空間、コミュニティを体験することで、昔を懐かしがっているのではなく、「今を楽しみ、まだ自分には未来の可能性がある!」と知り、「これからやりたいこと」「自分らしさ」を発見するきっかけになっています。これこそが、生きがい消費の本質です。

生きがい消費の具体事例

私が「生きがい消費」の好例だと感じている事例をいくつかご紹介します。

①サントリー セサミンEX50代をターゲットに、俳優・上川隆也さんを起用。35年ぶりに同級生女性と再会するストーリーを描き、「若々しさ」や「心のときめき」を表現しています。健康不安解決ではなく、「まだ自分は魅力的だ」という潜在ニーズに訴求した好事例です。

②ディスコ(エンタメ&フィットネス)ダンスが得意でなくても、非日常感や人との交流を楽しめる“大人のエンタメ空間”。SNSとの相性も良く、「楽しみながら続けられる」「健康が目的化しない」フィットネス市場へと進化しています。

③雑誌「ハルメク」読者参加型の会員組織「ハルトモ」を通じ、記事・イベント・通販を共創。年齢を理由に自己表現を諦めさせず、ロールモデルを提示し続けています。

④「終活」から「総括(スターティングノート)」へ認知されたものの、なかなか普及が進まない終活。私は人生の終わりを準備する「終活」を、過去を整理し未来に活かす「総括」と再定義すると良いと感じています。学び直しや挑戦と結びつけることで、自己実現活動へと転換できます。

「不安解消消費」から「生きがい消費」へ

これからのマーケティングに求められるのは、「不安を解決する、減らす」ことだけではなく、「生きがいを増やす」ことです。生きがい消費は、人を動かし、外に連れ出し、つながりを生み、不安に感じることを減らし、その結果として健康寿命を延ばします。

マーケティング・ジェロントロジーとは、年齢を重ねるほど人生が面白くなる社会を、消費と体験でデザインする実践学です。

この実践に必要なのは、こうした視点を持ったマーケターとクリエーターだと感じています。

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客員講師

鈴木 準

(株)ジェイ・ビーム代表

マーケティングコミュニケーションコンサルタント。「顧客視点でのマーケティング」を信条とし、生活者の価値提供を最重要視した、マーケティングコミュニケーション領域の、コンサルティング&プランニングを手掛ける。

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マーケティングコミュニケーションコンサルタント。「顧客視点でのマーケティング」を信条とし、生活者の価値提供を最重要視した、マーケティングコミュニケーション領域の、コンサルティング&プランニングを手掛ける。

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