これまでの連載では、人口減少や情報消化不良、IT社会の定着、二極化といった「外部環境の変化」にどう対処するかを扱ってきました。いずれも避けられない長期トレンドです。
本号からは、新シリーズに移行します。テーマは「構造の再設計」です。
環境が変わったとき、本当に問われるのは対処法ではなく、前提そのものです。商いの重心はどこにあるのか。ECは何の役割を担うのか。関係はどこで生まれるのか。
「ネットショップをどう磨くか」だけではなく「商いの構造をどうするか」も一緒に考えていくシリーズ。第一回のテーマは、「ネットショップだけを磨かない」です。
今回はまず、構造の前提を整理します。事例は次号以降に取り上げます。
成長は延長線にあるとは限らない
これまで多くの企業が、EC成長のために取り組んできたのは改善です。
- ページを磨く
- 導線を整える
- 広告効率を上げる
- CVRを高める
これらは正しい努力です。問題は、その努力がどの構造を前提にしているかです。
2000年代以降、販売の重心はリアル店舗からネットショップへ移りました。その移行期においては、「ネットを作る&そこだけ良くすれば伸びる」時代でした。だから改善だけで、そのまま成長につながりました。
しかし今は、売場よりも先に関係が生まれる時代です。
入口はネットショップではない
現在、顧客との接点はネットショップに限られていません。SNSで出会い、投稿で共感し、コメントやDMで関係を持ち、イベントなどで体験し、その延長線上で購入する。
つまり、ネットショップは入口ではなく、関係の先にある通過点になっています。
ここを見誤ると、「店だけ磨けば成長する」という発想に留まり続けます。
出会いが生まれる場所は、SNS、コミュニティ、リアルイベント、コンテンツへと移動しています。売上を伸ばしたいなら、売場だけではなく、入口を育てる必要があります。
改善が間違いなのではありません。改善だけでは足りないのです。
重心が動いている
ここまでの背景として、商いの歴史を振り返ると、
2000年まで:売場はリアル店舗が中心
2000年代:販売機能がネットへ拡張
2020年代:顧客接点がコミュニティへ拡張
と、重心は「販売場所」から「関係の場」へと広がっています。
今もネットショップの最適化だけを続けることは、2000年代の成功モデルの延長線に立ち続けることになります。
何を問い直すべきか
問い直すべきは、商いの重心です。
- 売場を中心に考えていないか。
- 顧客との関係は偶然に任せていないか。
- ECを販路としてしか見ていないのではないか。
構造が変われば、努力の方向も変わります。入口の設計に時間を割けていますか。関係性もKPIに含んでいますか。どれだけ改善を重ねても、前提が古ければ成果は頭打ちになります。
まとめ
「ネットショップだけを磨かない」理由をご理解いただけましたでしょうか。
ネットショップは顧客接点の通過点であり、商いの重心は顧客との関係へと移っています。この構造を理解することで、「ネットショップを磨く」価値が変わります。
今後の記事では、実際にネットショップを磨いた具体的な事例を中心にお話していきます。