楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol㊱ テレワークで実現する新しい生活様式と健康長寿社会
一気に進んだテレワーク
昨年からの新型コロナウイルスの影響により、日本ではこれまでなかなか浸透しなかった「テレワーク」が、新しい生活様式として定着してきました。
東京都が昨年6月30日に、都内の従業員30名以上の企業を対象に実施した、「テレワーク導入実態調査」によると、テレワーク導入率は57.8%。2019年度の25.1%に比べ2.3倍に大きく上昇しました。また大企業だけでなく、中堅・小規模企業においても導入が加速し、今後もテレワークを前向きに捉えている企業は全体の80%にのぼります。
また、連合(日本労働組合総連合会)が昨年6月5日から9日にかけて、全国の18才から65才の会社員や公務員等に聞いた「テレワークに関する調査」では、テレワーク継続意向について「希望する」が81.8%となり、こちらも前向きな結果となりました。
ライフスタイルの多様性
私も最近は、自宅がある横浜市内から都内に出かけるのは、平均すると週に1~2回程度。そのため、中央区にある事務所に出向くことも少なくなりました。仕事内容が、「ミーティング、資料作成、セミナーや研修講師、執筆」ですから、殆どリモートで済んでしまいます。
今も、ある企画立案で、熱海とニューヨークのクリエイターとZoomミーティングを行っていますが、アイデアを出し合う「ブレーンストーミング」でも、お互いのキャラクターが分かっていれば、オンラインで十分にひざを突き合わせて話が可能です。
その一人である佐藤豊彦さん(63)は、4年前から熱海のマンションにお住まいです。パソコン通信黎明期から通信手段を使った仕事を手がけ、テレワーク歴は約30年。佐藤さんいわく、熱海の魅力は、「海・山・温泉・食」といった自然が満喫できることに加え、「東京まで新幹線で36分」という好立地です。
佐藤さんは、重要なミーティングや、体験を伴う情報収集などで東京に出かけますが、基本は熱海。加えて、故郷の別府やロサンゼルスに滞在することもありますが、まったく仕事に支障はないといいます。クリエイターという仕事柄、インプットを重視していて、多拠点でストレスなく暮らすことで、時代を俯瞰する感性が磨けるのだそうです。
自由と一体化する自分の意思
これほど働き方が変わると、「物価の高い東京に住む必要はない」とつくづく思うのです。経済評論家の森永卓郎さんは埼玉県の所沢郊外に住み、「トカイナカ(都会生活の利便性と田舎暮らしの愉しみを両立出来るエリアの造語)」暮らしを推奨しています。
人がこうした生活から受ける大きな恩恵は、「自分らしい自由な生き方」です。自由とは、他からの「強制・拘束・支配」などを受けないで、自らの「意思や性質」に従っていることを意味します。
私は今から24年前フリーランスになり、それ以降の人生で強く感じたことは、何から何まで自分の意思で物事を進めて行かないと生きていけないということです。会社員であれば、決まった生活パターンで、毎日出社すれば仕事があり、給与がもらえました。ですがテレワークは、目標とスケジュールを守れば、基本的にどこにいても、いつ仕事をしてもよいはずです。
今後は会社員も、雇用形態や副業解禁など働き方が変わるでしょう。この流れは、「自分らしく生きる」チャンスの到来です。自分の強みに磨きをかけさえすれば、年齢を重ねても仕事が続けられるからです。
デジタル化の恩恵で新たに創造される社会とは?
コロナ禍で「働き方改革」は一気に加速しました。また今年4月から改正高年齢者雇用安定法により、従業員に対する70歳までの就業機会の確保を努力義務化します。自分の経験を活かせる仕事の在り方や働き方は、従来の社員としての出社スタイルではなくても実現可能で、様々な働き方の多様性が創出されます。
ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を基本に、場所にとらわれず生涯にわたり自分自身の価値を人に提供する「アクティブエイジング」な暮らしは、新しい生活様式として浸透しそうです。
元気で前向きに働く60代以上世代が増えれば、労働力確保やお金の不安解消に加え、様々なシニアビジネスが広がります。当事者世代が、若い世代と一緒にプロジェクトに加わることで、真のシニアニーズを捉えたモノ・コトが誕生し、イノベーションを起こす可能性があるからです。
個々の人間の「意思や性質」が生かされ、「共存繁栄」を図る社会なら、年齢を重ねても健康で生きがいある暮らし方が出来るはずです。そのためには、固定観念をぬぐいさり、年齢を忘れることは大きなポイント。いつまでも心身健康で、社会に役立つ事が出来る、そんな「健康長寿社会」が到来したのです。
こうした社会を可能にするのは、デジタルテクノロジーの恩恵は非常に大きく寄与しており、様々な可能性を秘めていると思います。
コロナ禍で一気に普及したテレワークは、能動的な働き方、生き方にシフトする。熱海が注目されているのも、その現象の一つ。
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント