楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.57 コロナ禍になり改めて向き合えた「幸福」の本質①
いま注目されている「幸福学」とは?
2020年に入り突然世界を襲った新型コロナウイルスのパンデミックで、私たちの生活は大きく変わり、生きる意味や仕事、家族などに改めて向き合う機会となりました。
人間は誰でも「幸せ」になりたいという欲求はありますが、そんな中で注目されているのが「幸福学」です。この幸福学の第一人者、慶応義塾大学の前野隆司先生は、幸せには「長続きしない幸せと、長続きする幸せ」があるといいます。長続きしないのは、「金、モノ、地位」など、他人と比較できる「地位財」による幸せであり、一方、「健康であり、環境に恵まれている」など、心の要因から得られる「非地位財」による幸せは、長続きするそうです。
前野先生は因子分析によって、心の要因による幸せを「自己実現と成長」「つながりと感謝」「前向きと楽観」「独立とマイペース」という4つの因子に分類し、幸せのメカニズムを明確化しました。今回そして次回と二回にわたり、自分の経験を当てはめて振り返ってみたいと思います。
幸せの因子①「自己実現と成長」
夢や目標、やりがいをもち、それらを実現しようと成長していくことです。私は幼少期からテレビやラジオが大好きで、思春期には映像制作にも興味があったため、新卒で中小の広告代理店に入りました。制作希望で入社したのですが配属は営業部。モチベーションも今一つで、淡々と仕事をこなしていた営業マン時代の目標といえば、漠然と大手の広告代理店に憧れ、転職して給料を上げたいという程度でした。
そんな私の仕事や人生に影響を与えたのは、外部のマーケティング研修受講と、社内のある先輩からの学びでした。マーケティングの面白さを知るのと同時に、自分で企画書を作成し、それを形にする楽しさを覚えた20代の後半から30代にかけて、企画力や人脈を磨いて、37歳でフリーランスになりました。
そして約25年が経過しますが、新しさを追い求める面白さの一方で変化の激しい仕事柄、特に48歳から55歳の頃は、クライアントの現場の方との年齢ギャップや、若い世代の市場がなかなか理解出来なくなったことなど、年齢的に自分自身のスキルの賞味期限を感じて、いろいろ暗中模索の日々でした。
しかし、俯瞰的に世の中を見て人間の本質に立ち返り、時代がいくら変わっても人間の欲求は、「自分自身の価値で人を笑顔にさせ、自己実現を図ること!」であると確信しました。と同時に、趣味のディスコ通いと、そこでの現場体験や様々な人たちとの会話から、昭和30年代に生まれた次世代シニアのインサイトを掘り下げ、自分たち世代である「ABS世代(アクティブ・バブル・シニア)」を提唱し、再び60歳以降の具体的な目標を見つけました。それは、「固定観念を捨てて、年齢を諦めなかった」からだと感じています。
幸せの因子②「つながりと感謝」
人を喜ばせること、愛情に満ちた関係、親切な行為です。25年間フリーで仕事ができたのは、会社員時代を含め、本当に様々な人とのご縁があったからこそ。年齢や経験が増したら、自分のスキルの成長のために仕事は選んだ方がいいという考えもありますが、私は「自分に出来る仕事」は、どんな仕事でも受けてきました。その結果仕事が続いたことに加えて人脈が広がり、仕事の経験以上に「人生の経験値」が増えたと感謝しています。
また子供の頃から歌ったり芝居をしたり、人を笑わせることが好きでした。今年63歳になりますが、今思っているのは「もう歳だから・・」といった分別くさい人間になりたくないという思いです。大人の分別はもちろん大切ですが、あまり強いと固定観念や些細なプライドに閉ざされ、チャレンジ出来なくなると痛感しています。生涯私と一緒に居る人に「面白い・笑ってもらいたい」と思っています。それが自分らしさと感じていますし、58歳の時に知ったエイジング学である「ジェロントロジー(美齢学)」を学び、人を笑顔にさせると、「セロトニン、オキシトシン、ドーパミン」などハッピーホルモンで自分も幸せになることを知ってから、とても腑に落ちるのです。私と仕事をすると、なんとなく楽しい!と感じてもらいたい理念は、会社を辞めてフリーになってから変わっていません。それが自分自身の幸せへと繋がっていると、比較的最近になって改めて思いました。
次回の連載では、「幸せの因子③前向きと楽観」と、「幸せの因子④独立とマイペース」に関してお話します。
幸せの4つの因子に人生をあてはめると新たな気づきがあり、それはビジネスやマーケティングを発展させます。
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント