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小売業なのに「専業」じゃダメな未来

少量多品種なのに生産性が高い
これからは「専業」で満足してはいけません。最近、改めて痛感させられたのはその点です。例えば、昨今、話題を集めている「SHEIN」などは最たる例です。

彼らは「小売業」でありながら、製造工場と提携して、少量多品種で、格安の商品を手掛けて、話題を集めています。本来であれば、大量に同じ商品を作った方が生産性が高いはずで、工場にとってそれが割に合うはずはありません。

でも、皆、そこに従って動いています。それで彼らが今、勢いづいている理由はどこにあるのでしょう。デジタルをテコに「専業」から脱却しているからです。

SNSを基点として、数多くのインフルエンサーの価値観を背景に「小さな商圏」を「大量に」作り出しました。商圏自体が増えれば、大きなマーケットになっていきます。

確かに、個々の価値観やそこから生まれる商品は多種多様で、少量多品種です。でも、その製造から物流に至るその環境は共通化されていて、その上で巨大なマーケットが形成されています。だから、結果的に生産数が増えますから稼働頻度も高い。生産性が高く、サービス提供できているのは、それゆえです。

つまり、彼らは「小売業」でありながら生産と物流の価値を最大化させるために、インフルエンサーの特徴を活かしているのです。そうやってお客様を生み出す土壌を大きく作ってしまえば、そこに応える生産と物流環境を整えることで、あらゆるニーズのお客様に応えられ、事業を拡大できるというわけです。

要は、生産と物流を自ら備え、そこからデジタルの力でお客様をつかめば、到底「専業」では生み出せない、新しい時代のマネタイズが可能になります。

アダストリアの強みはそのインフラにある
実際に、これに近い仕組みを取り入れることで、新しい価値を創造しようという会社が出てきているように思います。例えば、ニュースで話題を集めた「アダストリア」です。アダストリアは「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」などを展開するアパレル企業です。

同社が、最近、脚光を集めたのは、アメリカ発ファストファッションの「フォーエバー21」の店舗を2023年から展開することでした。「フォーエバー21」の存在こそ「SHEIN」でいうところの「インフルエンサー」だと僕は考えます。

そもそも、アダストリアはブランドごと個々に会員を持つのではありません。それらを横断して「.st」という一つの会員組織を持っていて、この規模が大きいのです。その上で、彼らはリアル店舗とECサイトを連携させています。

生産性が高く、適量だけ、商品を製造する環境を作りました。だからセールをすることなく完売できます。その上、商品の配送、店舗受け取りまで具現化していて、オムニチャネルも徹底しています。

つまり、アダストリアのブランドはこのインフラの上に成り立っています。そうすれば、各ブランドはお客様との関係性を構築したり、自分たちの魅力を深掘りしていくほど、その生産体制や物流にマッチして、商品で価値を最大化していけるわけです。

だから、彼らはそれらのブランドと横並びで「フォーエバー21」を展開する事に意味を見出すわけです。横一列、同じ仕組みで生産と物流を担ってしまえば、「フォーエバー21」も生産性を高く運用できます。

「フォーエバー21」もまた、アダストリアのその仕組みに価値を見出したという事でしょう。アダストリアにしてみればブランドをゼロから育てるまでもなく、「フォーエバー21」の認知度は高い。ブランド力を取り込む事で、効率良く「.st」会員増に繋げられるわけです。ウィンウィンの関係です。

生産から物流までを共通化して回転数を上げる
それで、最初の話に戻ってきます。「専業」ではダメなんですと。たとえ、販売を主とする小売店であっても、売るのに終始してはいけません。店が一旦、多くのお客様を抱えてしまえば、そこに基づいて生産力と物流機能を強化して、回転率を上げるわけです。

話がそれますが、僕は敦賀へ行った時に「越前かに甲羅組」などを運営する伝食の物流拠点を見に行きました。わずか12年で、1万7000平米もの物流拠点を開設し、現在、年商約100億円。今後、300億円まで伸ばしたいと考えています。それを見てハッとしたんです。

大事なのは、増える出荷数に対応する為だけに、物流拠点を用意したわけではないという事です。やっぱり彼らもまた、一緒に生産拠点を併設していました。猛烈に小売店で売上が伸びている今の段階で投資して、生産から物流の回転数を上げていくわけです。

すると、新しい商品が生まれる可能性が広がります。

伝食がその成長を意図したのは、そこで生まれる新商品への可能性にかけているからなのではないでしょうか。そうすれば、物流と一体で見て、他と差別化できる商材を作って、もっと企業を拡大へと導くことができます。

「専業」ではなく、デジタルをテコに、特に生産と物流で差をつけ、視野を広く成長していくこと。これからの時代を考えると、小売業にとって、それこそが大事なことだと思っています。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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