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ネット時代に即した消費行動の4つのキーワード

2022年が明けました。徐々にEC市場が成熟化に向かう中でEC業界には毎年新たな変化が求められます。今年も様々な出来事が生じると思いますが、私は消費者の消費行動の変化について着目したいと思います。消費行動に関する考察はAIDMA(Attention→Interest→Desire→Memory→Action)といった標準的なモデルから、EBM(Engel, Blackwell, Miniard)モデルといった学術研究レベルのものまで多彩に存在しています。しかしながらインターネットを中心とした人々の社会生活の変化に合わせて、消費者の購買時における意思決定には変化が生じており、既存のモデルでは説明に限界があるように感じています。そこで本稿では私が着目している次の4つのキーワードについてご紹介させて頂きます。

1.タイパ消費
タイムパフォーマンスを重視した消費行動、略して“タイパ消費”。Z世代特有の消費行動スタイルとしてしばしば話題になっていますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。青山学院大学の久保田教授はタイパ消費の種類を次の2つと説明しています。1つは単に時間がないケースでの消費行動。いわば時間効率性に重きを置いた消費行動です。もう一つは“時間はあるが目的達成のために無駄な時間を費やしたくない”と考える消費行動です。前者を時短型、後者はバラエティ型と同教授は解説しています。またタイパ消費は必ずしもZ世代のみに見られるトレンドではなく高齢者にも見られるようです。タイパ消費はまさにネット時代ならではの行動でしょう。社会生活におけるネット利用の浸透は不可逆的であるため、タイパ消費は基礎的な消費行動として今後無視できないものになると考えられます。

2.リキッド消費
リキッド消費とは英国の2人の学者(Fleura Bardhi氏およびGiana M. Eckhardt氏)により提唱された消費行動です。デジタルの進化とともに消費者がモノの購入や所有に固執するのではなくシェアリングや二次流通を上手に活用する生活スタイルの象徴的なキーワードと言えるでしょう。まさに液体のようにモノやサービスを利用するイメージです。リキッド消費の対語はソリッド消費であり、所有にこだわった従来型のスタイルであると言えます。リキッド消費というとサブスク、シェアリングエコノミー、フリマのようなサービススタイルが頭に浮かびますが、本質的には「即自的な満足」「瞬間的な満足」「簡単」「手軽さ」「消費のスピード感」がキーワードになっているようです。リキッド消費が広がることでソリッド消費がゼロになることはあり得ませんが、ソリッド消費でも上述のキーワードを意識することが重要になってくると思われます。

3.コト消費的モノ消費
この言葉は私の造語です。コト消費とは一般的には体験やサービスを指すものであり、モノ消費とは物品購入を指すものとして認知されていると思います。コト消費とモノ消費は別々のものと考えられているかもしれません。ところが例えばキャンプ用品はキャンプを楽しむための商品であり、また別の例としてお気に入りの洋服を欲しい理由の一つに異性とのデートを楽しむためというのもあるでしょう。健康に生活したいためにサプリメントを摂取するのでしょうし、母と娘で料理を楽しむために食材や調理器具を購入するといったこともあります。要するに多くのモノ消費はコト消費と密接に関わっています。したがって商品を製造・販売する上でコト消費を意識することが大切と私は考えます。といっても自然体でコト消費を意識した商品CMは既に多く存在していることから、知らず知らずのうちにコト消費的モノ消費を意識したセールス面での取り組みは行われてきていると言えるでしょう。その流れをさらに多くの消費財に適用すると良いのではないかと私は考えます。

4.パルス型消費行動およびバタフライサーキットモデル
最後はパルス型消費行動およびバタフライサーキットモデルです。パルス型消費行動はGoogleが2019年頃から提唱する消費行動モデルです。AIDMAに代表されるように興味関心を持ってから購買行動に至るまでの一連のプロセスがシーケンシャルに行われるというのがこれまでの消費行動の考えであったように思えます。一方でパルス型消費行動とはある瞬間突発的に購買行動に至るモデルを指します。パルス型消費行動を起こす背景としてGoogleはバタフライサーキットモデルというものも同時に提唱しています。これは購買に至るまでの消費者心理として「気晴らしさせて」「学ばせて」「みんなの教えて」「にんまりさせて」「納得させて」「解決させて」「心づもりさせて」「答え合せさせて」という8つの項目がぐるぐると周回する思考状態を指しています。つまりパルス型消費行動は単なる衝動買いではなくバタフライサーキット型の思考があって発生する消費行動であると言えます。この背景にはスマートフォンおよびSNSの普及が大きく影響していると見てよいでしょう。

パルス型消費行動とバタフライサーキットモデルの関係

バタフライサーキットモデル

出所:Googleの説明を参考に筆者作成

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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