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ECタテ動画事情〜2023年編

ネット検索も文字から動画へ
人類の文明やテクノロジーは、文字→画像→音声→動画と進化してきました。2023年現在、ネットユーザ、特に若い世代の情報源やコミュニケーションの場はTikTokをはじめとした動画SNSが中心となり、彼らが使う検索エンジンは1位は相変わらずGoogleですが、2位はYahooからYouTubeへと移行しはじめ(株式会社GO TO MARKET「Utilly」調べ:2022年12月6日)、コンテンツの滞在時間では動画がある場合と無い場合では平均30秒異なる(PLAN-B社調べ)といった傾向も明らかになりつつあります。

とかく文字と画像が多くなりがちな旧態依然としたECサイトですが、いよいよ動画でのユーザコミュニケーションは喫緊の課題となっており、今回はタテ動画への対応と準備ネタをご紹介します。

EC動画のタテ化=スマホ化
既に動画による情報発信をはじめている、という店舗運営者さんも多いと思います。が、ここで忘れがちなのが「動画のスマホ対応」です。かつてECサイトを横長から縦長に最適化したように、動画もタテ化が効果的になりつつあります。ただ現時点では「必ずしもタテがベスト」と言い切れません。使い分けの目安は、タテ動画は「画面を回転せずに画面一杯に表示できる」という点です。この特長をECで活用する際、検証してみると明らかに効果的な場面がいくつか存在しました。

●商品の細部を拡大して見せたいとき
●あと1商品、カートに追加してほしいとき
●サイト離脱を防止したいとき

目的はECです。バズらせるのであれば手法は異なります。まず大前提として、タテ動画が一般的なTikTok、Instagram、LINEなどのスマホSNSアプリのユーザと自店舗が親和性が高いかどうか、見極めることが重要です。つまり、ヨコ動画のままが良い場合もあるわけです。
例えば
●局所ではなく全体を広く俯瞰して見せたい
●パソコンやテレビで閲覧するユーザが多い

といった目的や環境のユーザが多いECサイトなら、ヤミクモにタテ化せずa/bテストで検証してみたり、パソコンユーザにはヨコ動画を見せるといった工夫が必要になります。

その上で、動画タテ化計画を実行されたい、という場合は、まずはサイト内に埋め込んでいる動画のタテ化を検討してみましょう。YouTubeチャンネルにタテ動画をアップして右クリックして「埋め込みコード」取得し貼り付けるだけです。なお、GA4で動画解析をしている場合は、埋め込みコード内の動画URLの末尾にパラメータ ?enablejsapi=1 が付与されているか確認が必要です。

タテ動画は「タイパ」を意識
ただし、効果的なタテ動画の作成にはいくつか注意点もあります。
タテ動画は、原則ショート動画です。TikTokで最大3分、Instagramリールは90秒、YouTubeショート動画は60秒の動画を投稿できます。ではECのタテ動画ではどのくらいの動画の長さが最適なのでしょうか。

筆者は毎月、大学生とのMTG「日本イーコマース学会ECビジネス研究部会」を開催して、若いネットユーザと情報交換をしています。タイパ(タイム・パフォーマンス=時間対効果)という言葉がトレンドワードになる以前から、映画を倍速で見て、音楽も動画もイントロは飛ばし、読書はまとめ動画で1分で読了すると豪語していた彼らに、ある問いかけをしてみたことがあります。ECに求めるショート動画は何秒くらいなら適切と感じるのか?結論は初めてその店舗と接触する時に限れば「5〜10秒」。動画広告でよく見る実測データとほぼ合致しました。つまり多少長い動画でも良いのですが、最初の10秒である程度の「ツカミ」と「結論」が無いとその動画によるPR効果は期待できない、ということになります。この点は、動画の企画・構成や編集の際に注意が必要です。

ECに特化したタテ動画サービスも登場
海外のECにおけるタテ動画事情はどうなっているでしょうか。本稿執筆時点で、間もなくラスベガスで開催予定の「SHOPTALK 2023」、世界の小売関係者が集まる大規模イベントですが、その基調講演やディスカッション予定表を見ていると、時間帯とブースの広さから、firework.com というタテ動画マーケティングのサービスに高い注目度がよせられていることがわかります。

すでに日本でもローンチされているサービスで、無印良品や花王をはじめとしてアパレルや食品など多くの国内ECがタテ動画ショートやライブコマースなどを採用しています。fireworkによると、SNS上のタテ動画との大きな違いに、SEOを挙げています。揮発性の高いSNS動画と比べて長期的なSEO戦略には確かに向いています。加えて、彼らのサービスを利用することで、動画内に自由にコンテンツを埋め込むことが可能となるので、ECサイトのパフォーマンスや回遊性を改善することが期待できるようです。

高品質化が要求されるタテ動画
またこうしたショート動画の中でも、区別化を図るために「シネマティックな動画」が効果的なケースもあります。そうした撮影に必要なシネマカメラなどの業務用カメラ界隈でも対応は既に進んでいて、図の様なタテ動画に対応した機能や機材も揃ってきています。

カメラリグメーカーTiltaのタテにも使える
回転トップハンドルTA-QRTH5

ヨコ動画を撮影しながらタテ動画も獲れるフレームガイド

ただ現場的には、ジンバルや外部モニターを使ったりヨコ動画メインという要望もまだまだ多いのに上図の様な機材や設定を使って、いちいちタテ専用動画は撮ってられません。動画を外注している場合などは、別途料金でコストが高くなる場合もあります。そこで効率的なハイブリッド撮影方法として、9分割グリッドの2番目の列にタテ被写体を収めて4K撮影することでヨコタテ両対応する、という方法があります。これならタテ動画でクロップしやすいし劣化はありません。またYouTube上でタテ動画を使いたいだけなら普通にヨコ動画撮影して、あとは上下にテロップを付けることでショートタテ動画の対応ができます。このように長尺のヨコ動画をあくまでメインにしておくこともひとつの解決方法になります。

とはいえ、スマホで気軽に撮影できるのもタテ動画のメリットです。iPhoneなら ジンバルの代替に「Filmic Pro」、動画でも一眼レフ並みにボケる「Focos」などアプリを使えば、スマホ一台でシネマティックな表現も可能です。

まずは手元のスマホで特徴的なタテ動画を撮影して、ECサイトに貼り付けてコンバージョン率をアップさせてみましょう。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 宮松 利博

得意分野/Eコマースの立ち上げ・販売拡大
株式会社ISSUN(イッスン)代表取締役。2000年より自社製品販売のECを立ち上げ、2006年に株式上場させる。同時に保有株を売却し、渡米などで海外のEC研究後、国内外でコンサルティングサービスを提供。


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