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“直接つながれなかった人たち”に、ようやく光が当たり始めた──LINEが変えた、メーカーと店舗の関係性

「売る」より前に、“思い出される”が重要になった時代

最近、僕が強く感じたことがあって、それは、ようやく今の時代、“リアル店舗を持たないメーカー”や、“直接顧客とつながれなかった企業”に光が当たり始めたのではないか、ということでした。

これまで、メーカーという存在は、どうしても「卸す側」だった。良い商品を作っても、最終的に消費者と接点を持つのは小売店であり、スーパーであり、飲食店でした。つまり、「誰が作ったか」より、「どこで売っているか」のほうが強かった。

実際、食品メーカーなどは典型だろう。バーモントカレーは知っている。でも、それがハウス食品の商品だと、どれだけの人が意識しているでしょう。

商品は知られている。けれど、企業としての存在は、意外なほど生活者の中に残っていない。

これは、メーカーにとって長年の課題だったのだと思います。

一方で、美容室のようなリアル店舗も、別の意味で難しさを抱えていたように思います。人が来て、初めて関係が始まる。しかも、その関係は極めて人間的。会話をし、空気感を共有し、「またこの人に会いたい」と思ってもらうことで、ようやく次回来店につながる。

つまり、メーカーも美容室も、本来は“関係性”が重要な仕事なのに、その接点を継続的に積み上げる仕組みを、これまで持てていなかったのです。

LINEは、“広告媒体”ではなく、“生活インフラ”だった

共通していたのは、LINEを活用していたことで、単なる販促ツールとして扱っていなかった点でした。

例えば、ハウス食品は、公式アカウントと連動して、「HOUSE QUEST WORLD」というゲーム型施策を通じて、日常の中に自然な接点を作ろうとしていました。つまり、LINEミニアプリを併用しているのです。クイズやミッション、ガチャを通して、生活者が“遊びながら”企業と接触する設計です。

おそらく、公式アカウントでの接点は、こうした体験設計とセットになることで機能するのだと思います。なかでも、興味深いのは、そこに強烈な売り込み感がないことなのです。

大量クーポンをばらまくわけでもない。ポイントを過剰に配布するわけでもない。むしろ、「なんとなく毎日触れてしまう」ことを大事にしていました。

これは、美容室AguのLINE活用とも非常によく似ていました。

今まで、紙のスタンプカードを用いていましたが、それを全て、LINEでのメンバーズカードに切り替え、公式アカウントとセットでつながることで、来店周期に合わせて、必要なタイミングだけ連絡していたのです。

デジタル化で変わったのは、“効率”ではなく、“関係性”だった

途絶えることのない関係性。それを彼らが共通して述べていたのが印象的で、本当に変わり始めているのは、“関係性の作り方”なのではないかと思ったのです。

例えばハウス食品は、JANコードを読み込ませることで、「家にある商品」と「ハウス食品」という企業を結びつけようとしていました。これは単なる購買証明ではありません。「これ、ハウスの商品だったんだ」。その“気づき”を作ろうとしていたわけです。

つまり、「企業と生活者の距離」を縮めようとしていたのです。しかも、それを押し付けるのではなく、これも“遊び”として成立させていました。

一方、美容室Aguもまた、LINEを「予約ツール」としてではなく、「関係を継続する基盤」として使っていました。美容室というのは、本来、人に会いに行く場所でもある。

そういう感情が積み上がることで、指名が生まれ、リピーターが増える。つまり、美容室もまた、“関係性の商売”なのです。これまで、こうした接点は、どうしてもリアルな場に依存していました。来店時に話す。紙のポイントカードを渡す。電話をする。

ここが放置されていたけど、今、こういうインフラができることで、つながり始めている。だから、僕は、リアルにもデジタルの力を借りて、付加価値を底上げできるかもしれない好機が生まれたのだなと思ったわけです。

「深く囲い込む」から、「浅く長く触れ続ける」へ

思うに、こういう話をすると、CRMを思い浮かべますが、それとも少し違う。旧来のCRMは「濃いファン」を作る発想が強かったように思います。

会員化する。囲い込む。ロイヤル顧客を育成する。もちろん、それも重要。しかし今は、それだけではない。むしろ、“浅い接触を長く続ける”ことに価値が出始めている。

ハウス食品のゲーム施策も、毎日数十秒、軽く触れると、なんとなく思い出す。それが積み重なり、「棚の前で選ばれる」につながっていく。

Aguも同じです。毎日予約を取る必要はない。でも、数カ月後に、「あ、そろそろ行こうかな」と思い出してもらえることが重要です。

つまり今は、「強く押す」時代ではなく、“自然に思い出され続ける”時代へ変わりつつあるのでしょう。

CRMは、“管理”ではなく、“日常に住まう”ことへ

どれだけ日常の中で自然に触れられているか。どれだけ、“思い出される存在”になれているか。それが、今の時代の企業価値になり始めている。

しかも面白いのは、その接点が、「広告」ではなく、「遊び」や「会話」や「日常」の中で生まれていることでした。

ハウス食品は、“遊びたくなる”を設計した。Aguは、“また会いたくなる”を積み上げた。

どちらも共通しているのは、「売り込み」ではない。“自然に触れたくなる状態”を作っていたのです。

“デジタルによって、ようやく企業の側からも、人間的な関係性を育てられる時代”になってきたのかもしれません。

今日はこの辺で。

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理事

石郷 学

(株)team145 代表取締役

ファンシー雑貨の業界紙ライター出身、ネット通販向け商材の問屋で企画営業や商品開発にも携わる。自らの企画の持ち味を生かし、ECのミカタ編集長を担う。2019年(株)team145を設立。

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(株)team145 代表取締役

ファンシー雑貨の業界紙ライター出身、ネット通販向け商材の問屋で企画営業や商品開発にも携わる。自らの企画の持ち味を生かし、ECのミカタ編集長を担う。2019年(株)team145を設立。

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