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「伝える」と「伝わる」のあいだに Vol.44 本日のアジェンダは「やたら横文字」イシューです。

ビジネス用語が横文字になる理由

「ビジネス用語ってなぜわざわざ横文字にするの?エビデンス、ローンチ、リスケ。それぞれ『根拠』『公開』『日程変更』にした方が伝わりやすいのに」…先日、SNSでこんな投稿を見ました。

私はIT業界に長く居て「やたら横文字使い」にどっぷりつかっていた身。それでもその疑問には同感です。ほんと横文字の会話多すぎますよね。

ではなぜ横文字が横行(横文字だけに!)するのか?冒頭の疑問投稿に対して興味深いリプライがあったので、それに沿って考えてみようと思います。

帰属意識とギョーカイ感

まずは「共通言語として社内に根付いていて、横文字の方が解像度が上がる」「マニアやオタクが独自用語によって一体感やコミュニティへの帰属意識を高めるのと同じ」という意見。これはとても頷けます。

ゼロ年代のITバブル期では、海外IT企業からの言葉が輸入されてきた感が強かった。今はマーケ用語が溢れている気がします。界隈や業界生まれのワード、つまり古い言い方をすれば「ギョーカイ用語」の一種なんですよね。

そのワードを使っていた方が「業界や組織やコミュニティにしっかり属していますよ」「ここんちのトーンや価値観を共有していますよ」というニュアンスが出る。新参者にはちんぷんかんぷんな言葉を駆使できれば、マチュアな(手練れな)雰囲気も出る。

さらに、「議題」だと学級会ぽいけど「アジェンダ」だと何だか高尚に聞こえる。「保留」だと優柔不断ぽいけど「ペンディング」だと主体的な意思を感じる。横文字による格好よさげな雰囲気というのも、なかなかあなどれません。ギョーカイ用語を使うモチベーションって、そもそもカッコつけが最初の動機でもあるしね。

曖昧さはクッションになる

さらに「横文字の方が解釈がふわっとするので、コミュニケーション上のクッションになる」という意見にはハッとしました。その目線は私にはなかった。

発言主いわく「例えば日本語で『根拠はありますか?』と言うと強く聞こえてしまう」と。なるほど、「エビデンス」よりもなぜか少し問い詰めているように聞こえますね。解釈を円で表現するとしたら、「エビデンス」の描く円の方が大きくてふんわりしており、「根拠」の描く円は急所を突くように小さく的が絞られたイメージかも。

それはきっと、日本語より馴染みの薄い横文字ゆえの曖昧さや揺れのせいでしょう。その単語についての個々の解釈の幅や差が大きい。もっと言ってしまうと「何言ってんのかよう分からん」という場合も多い。だから会話の中での鋭さがすこうし薄まり、コミュニケーションの中で角が立ちにくい…という認識ですね。

すべてはニュアンスに過ぎないのですが、大変面白いです。

なぜ過去形にする?

それでふと思い出したのが、店員さんなどがお客さんに対して問う「よろしかったでしょうか?」のことです。

「なぜ過去形にする??」とさんざんツッコまれ、揶揄されている接客上の「よろしかった」言葉は、まったく滅びる兆しはありません。私も使う意図がわからんなーと思っていたのですが、もしかしたらこれも「クッション」なのではないでしょうか。

正しく使うならば「○○でよろしいでしょうか?」なのですが、これだと最終決定を突きつけるというか、「ファイナルアンサー?」感が強くなります。

…いや、正直こんなのは口調次第でどうにでもなるし、私は決して強い言葉だとは思いませんが、「ちょっと強いかも」と感じる使用者はいるかもしれません。そこで「よろしい」を「よろしかった」にしてみる。するとワンクッションが生まれる。なるほど、彼らは過去形にしたいわけじゃない。踏み出した一歩の着地をふんわりさせたいんだな。

例えば目の前の相手に「遅れたの?」と聞くより「遅れちゃったの?」、さらには「遅れちゃったりした?」と聞く方が、やんわりします。正面からいきなり差し出すより、肩ごしにそうっと出してみる。私のこのやり方で合ってる?これで大丈夫?というニュアンスも込める。それが「よろしかったでしょうか?」なのかもしれません。

「横文字でふんわり曖昧にする方が角が立たない」もおんなじですね。いかにも日本的な姿勢だなー。

言葉づかいと価値観の関係

いずれにしても、特定の業界やコミュニティで使われる用語やネットミームは、当たり前のように使っていくうちに自分の内部に染み込みます。たかが言葉だけど、それが内面化しすぎると危うい。もしかしたら価値観までも修正されていくかもしれない。支配と言ったら大げさだけど、それを避けるためになるべくフラットな言葉づかいを心がけるのは大事だと思います。

最後に横文字の話に戻ると、私は「アドオン」という言葉をエンジニア以外の皆が使い始めた時、「さすがにそこは『追加』でええやろ!」と思いました。その時「やたらと横文字を使わないようにしよう」と心に決めたのをよく覚えています。

ちなみに個別面談のことを「1on1」と言うのも納得がいってません。面談でええやろ、そこは。

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コピーライター

近藤 あゆみ

Lamp代表

博報堂コピーライターから(株)ネットプライス・クリエイティブディレクターを経てフリーに。企業のMMVやネーミング、サイトディレクションなど手がける。恋愛コラムやブログも人気を博す。

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