大都市への人口移動が止まらない
2025年の都道府県別の人口流入・流出ランキングを調べてみたところ、表の通りでした。予想通り東京都がトップで65,219人、以降埼玉県(28,052人)、神奈川県(22,427人)、千葉県(15,667人)、愛知県(7,836人)となっています。反対に流出を見てみると、ワーストは広島県で-9,921人、以降福島県(-7,197人)、静岡県(-6,711人)、新潟県(-6,379人)、三重県(-5,986人)です。

出所:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」を基に作成
ちなみに2015年と比較すると、上位は数値に多少の差はありますが似た顔ぶれです。下位については2015年と2025年で10県中6県が入れ替わっています。下位の方はあちこちで人口流出が発生しているということでしょうか。いずれにせよ地方都市から大都市への人口の移動は依然として止まっていません。大都市集中が社会的な課題になって久しいわけですが、ほぼ状況は変わっていません。
生産年齢人口も減少するというダブルパンチ
地方都市から大都市へ移動する人は、入学や就職が主たる目的でしょうから20代が中心でしょう。つまり地方都市では労働人口が減少していることを意味します。加えて言えば、少子化によって消費や労働の中心となる15歳から64歳までのいわゆる「生産年齢人口」は年々減少の一途をたどっています。政府の予想によれば今から20年後の2026年には、今よりも20%以上生産年齢人口は減少するとされています。これはやや甘めの予想かもしれませんので、25%程度減少すると見ておいた方が良いでしょう。
地方都市にとっては「大都市への人口流出」と「少子化による生産年齢人口減少」のまさにダブルパンチです。地方都市において労働力を確保することは、年々困難になるということです。現時点でも人材確保は相当厳しいと思うのですが、これは不可逆的なことであり、深刻さは増すばかりです。
地方都市において小売店舗の維持か難しくなる未来
さて、そのような未来が容易に予想できる状況を、ECの観点で捉えてみたいと思います。私はこのような未来について悲観するのではなく、EC市場、EC業界はプラスに捉えるべきと考えています。というのも、人口減少に悩む地方都市ではおそらく小売業において労働力を確保することが相当厳しくなるはずです。これは決して難しい予想ではなく簡単に想像できることです。東京に住んでいると地方都市の小売業のことなど気にする余地もないでしょう。しかし大都市と地方都市では全く状況が異なるということを意識する必要があります。
小売業の未来に関する議論では、DXを活用した新たな顧客体験どうこうといった議論をよく耳にします。しかしそれはあくまでも大都市の話ではないでしょうか。地方都市にとってみれば、それ以前に労働力不足によって小売店舗を維持すらできない事態に直面しているわけです。私は小売業のDXに関する議論に触れるたびに、果たしてそのようなことが前提として認識されているのだろうかと思います。
ECへシフトする戦略ビジョンをどう描くか
私は、小売店舗の維持が困難になる分、ECへ軸足をシフトせざるを得ないと考えています。コロナ禍の状況を今一度思い出してください。あの状況が労働力不足によって将来的に再来するということです。やや行き過ぎた考えかもしれませんが、少なくとも小売店舗の維持が困難になることは明白です。したがって今からでも実店舗とECとのバランスについて各社議論を行い、どのようにシフトしていくのかその戦略のビジョンを描きはじめて欲しいと私は願っています。
これは、例えるなら「アリとキリギリス」の話に似ているように思います。こういうと「何を馬鹿なことを言うのか」や「遠い将来の話だろう」と批判的に捉える人は多いのではないでしょうか。しかし急に戦略を変えることは難しいです。よって今からでも議論をはじめ、徐々にシフトしていくことをお勧めします。「備えあれば憂いなし」と言いますので、1社でも2社でもこの考えに賛同していただける企業が増えることを願うばかりです。