【ECコンサルタントによる「勝手にECサイト分析」】46 ジャパンEコマースコンサルタント協会 小林厚士理事〈ハトヤ商会「蔵元直送の焼酎・梅酒・日本酒販売 はとや」〉/サイトに極力手をかけず無理のない運営
長野県長野市にある、いわゆる町の酒屋さん「蔵元直送の焼酎・梅酒・日本酒販売 はとや」。
来店者への小売りはもとより、地元の飲食店への卸販売をメーンで行いながらも、ネットシショップ運営ではとても効率のよい活用を行っている。
こちらの強みは、きき酒師と焼酎アドバイザーの資格を持つ店主が、地酒ブームが沸き起こる前から真正直な造りを行う蔵元と正面から向き合い、大切にその関係を育てあげてきたこと。自分の舌で味わい、納得した本物の銘酒を蔵元から直接仕入れ、大切に品質管理をしている点が強みとなっている。
そして、知名度は高いが入手困難な状態である超有名な焼酎や日本酒を、ネット上ではよく見る「プレミア価格」ではなく、「正規価格(定価)」で販売している点が、リピーターが耐えない理由の一つだろう。
肝心なサイト環境だが、最新の技術や手法を取り入れることなく、決して優れた環境とはいえないが、全国各地の入手困難な有名銘柄の商品名検索により、広告費もほとんどかけることがない、典型的なプル型環境となっている。
運営に関しては、定期的に新しく直送契約が取れた蔵元の商品ページの構築、定期的なメルマガ配信、在庫管理のみの「自動販売機運営」がされている。
不定期配信のメルマガでは、数量限定の入手困難な銘柄を優先的に販売しており、準備された本数が数時間で完売してしまうほど、爆発的な人気を誇っている。
また、7年前のサイトオープン当時から、現在でいうオムニチャネル要素も兼ねそろえている。ネットで購入した後、商品は直接来店で受け取る地元ユーザーも多いと聞く。
その際には、きき酒師と焼酎アドバイザーならではの知識豊富な店舗接客で、ついで買いが発生し売り上げも大きく伸びるという。
有名銘柄の焼酎や日本酒などは、蔵元からの直送で仕入れることができても、やはり販売できる数には限界がある。
しかし、プレミア価格ではない正規価格と、きき酒師と焼酎アドバイザーによる販売商品の目利きにより、サイトに極力手をかけずにそれなりの売り上げが見込める無理のないショップ運営スタイルができている。
現在苦戦を強いられているEC展開を行う地方の小売店。この中では成功者といえるだろう。
※記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。
JECCICA理事・特別講師 小林 厚士
地方拠点かつ海外事業部展開をしたEC企業経営で培ったマーケティングノウハウ及び実績を活かし、経営戦略的視点を重視した、現場最優先の実践的なアドバイスを得意とする。