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ニューノーマル時代のECは何を追求すべきなのか

「コロナ疲れ」から「コロナ慣れ」へ
この原稿を書いているのは、5月の緊急事態宣言の真っ只中です。そこで最近気づいたのは、言葉の変化。ほんの少し前までは「コロナ疲れ」という言葉をよく耳にしたものですが、最近では「コロナ慣れ」という言葉に変化しています。その象徴が、緊急事態宣言化の人流の変化ではないでしょうか。つい先日、休日に通院する必要があり、緊急事態宣言下の渋谷へ出掛けました。しかし、スクランブル交差点は人・人・人!想像以上の人混みでとても驚きました。緊急事態宣言1回目の期間の休日の人手の平均と比べると、3回目の今回は、どの都市でも2倍以上に人流が増加していたのだとか。

モノを買いに行くのではなく、モノが来る時代に
この「コロナ慣れ」という言葉が象徴するようにコロナウイルスとの付き合いは早いもので1年が経過し、まさに「withコロナ」の状態となっています。新しい生活様式(ニューノーマル)が浸透したこれからの人々の生活はさらにどう変化していくのでしょうか。今回は、VRの流行とZOZOGLASSの体験から、新しい消費行動について考えたいと思います。

費行動の大きな変化
1.ECでのショッピングが一般化
2.デリバリーサービス(飲食や日用品)の一般化
3.現金からキャッシュレスへ

消費行動の大きな変化は、私たち消費者が物理的に買い物に出掛けられなくなったという点です。これはリテール業界に大打撃を与えました。かくいう私もリアル店舗で全く買い物をしなくなりました(もともとECでの買い物が多い方ですが)。部屋の中を見渡しても、ソファやテーブルといった大型の家具・家電といった物ですら、9割以上のものがECサイトで購入したものですし、洋服や化粧品・日用雑貨もほとんどECサイトで購入したものです。上記1と2を見てもわかるように、「今までわざわざ店頭に出向いて、商品を買ったり、美味しいものを飲食すること」が当然だった時代から、「欲しいものたちが家にやってくる」ことが当然の時代になってきました。

VR「Oculus Quest 2」が好調。コミュニケーション様式が変わる
またもう一つ大きな変化として実感しているのは、コミュニケーションツールの変化です。

コミュニケーションの変化
●オンライン会議やスマホでのビデオ通話の普及
●VR・AR・MR等の仮想世界を体験できるツール・サービスの拡大
●音声SNSの普及

Zoom等のテレビ会議ツールや、「あつもり」や「フォートナイト」といったメタバースの一般化、「stand.fm」や「Clubhouse」といった音声SNSツールの流行など、テキストベースのコミュニケーションから動画や音声といったインタラクティブなコミュニケーションツールが台頭し、市民権を得ました。これからは、インタラクティブにプラスして、没入感がより求められるのかなと感じています。
去年の緊急事態宣言下では、Zoom飲みが流行りましたが、最近では周囲の友人・知人たちの間で「Oculus Quest 2」が流行り始めています。時間を指定して集合しボードゲームや釣りなどのゲームをプレイしたり、コミュニケーションを取るのが日課になっているようです。スタンドアローン型VR「Oculus Quest 2」の出荷台数は公表されていないようですが、好調な様子で、VRの普及に一役買っているようです。

このVRの普及に関連して気になるのが、市場規模です。VRというとゲームやビデオなどエンターテイメント系としての利用目的をつい想像しがちですが、人材育成、産業領域での活用、小売など幅広い市場が存在します。こと小売に限った話ですと、HIKKYがVR上で行うイベント「バーチャルマーケット」に「ディズニーストア」や「BEAMS」、「伊勢丹」、「阪神百貨店」が出店したり、バーチャルSNS「cluster」上では原宿が再現され、5月下旬にスニーカーショップ「atmos」が出店する予定だったりと、VR上でのアパレル・百貨店のアプローチが盛んな印象です。またVR上で伊勢丹新宿店での買い物が体験できる「REV WORLD」も登場しましたね。2020年から2021年にかけては、急速な勢いでVR市場が日本に浸透する年になるのではないでしょうか。

ECの弱点を肌色を計測することで克服した「ZOZOGLASS」
EC領域の新しいトピックといえば「ZOZOGLASS」のリリースです。


私の元にも届いたので、早速試してみました。「ZOZOGLASS」は、カラースケールを計測する眼鏡型の器具です。それを装着した自分をアプリで指示された通りに撮影するだけで、ヘモグロビン量・メラニン量を計測し、肌の色を診断してくれます。先述したVRとは異なり、プラスチックでできた簡易的・物理的なものを装着をして、肌の色を測定するので、ともするとアナログで前時代的に感じるかもしれません。しかし、結果はとても満足なものに。というのも、他社のアプリで肌色を診断したことがあるのですが、結果に納得がいかないことが多かったからです。それに比べ、「ZOZOGLASS」は精度の高さに驚き。なんと測定後に、ZOZOTOWNのアプリ上に普段使っているファンデーションがレコメンドされて、レコメンドされた色味も実際の手持ちの色にすごく近かったのです(完全には一致していなかったのは残念ですが)。

ARシミュレーションが主力だったコスメECに対して、実際の色データを測定するというアプローチが新鮮に感じた
ECでコスメを売るためのツールとして、よく導入されていたのが、ARを活用したメイクアップシミュレーター。自分の顔写真を撮影し、その顔の目頭、眉毛、広角などの顔の特徴点を取得して、その輪郭に合わせて口紅などの色を上から重ねる機能です。この機能が普及し始めたころは、話題になりましたが、デメリットとしては、実際に化粧品を塗布したときのイメージの再現性が低いということです。なぜなら、この機能の場合、肌色に対する照度などの周辺環境の影響を考慮できない場合も多く、結局手元に届いたら印象が違ったということもあり得るからです。商品購入の障壁を下げる効果は、私自身そこまで高くないのかなと感じていました。それに対し、今回の「ZOZOGLASS」のアプローチは、VRやARといったバーチャルで似合うか似合わないかを判断するのではなく、実際のデータからレコメンドする、というアプローチに、新鮮な印象を与えられました。

今後のECは没入感か、それとも購買時の情報補完を追求すべきか?
「VRコマース」という単語も出現し、VRで実店舗を再現したECサイトも徐々に増えはじめ、VRという技術を今後どう活かしていけば良いのか、導入した方が良いのか、とお悩みの方もいらっしゃるかと思います。現状のVR系のECサイトは、私の主観にはなりますが、没入感が感じやすいイベント型・ライブ型の商品販売に向いていると思っています。理由は、やはり大量の商品をVR上で展示したり、それを消費者が購入するという体験は、リアル店舗との違いや良さはあるものの、商品を買う場としては、まだまだ改善の余地が多いように感じられるからです。商品を3Dスキャニングして撮影したりしなければならず、運用工数もかかると聞いています。また、最大の課題は、次世代通信規格「5G」の普及が日本において遅れていること、そして、VR自体の普及率のこの2点です。この2点が成熟しそうなタイミングが参入のタイミングかと考えられます。
まずは現時点では、「ZOZOGLASS」のアプローチのように、通常のECサイト(ブラウザやアプリで閲覧できる)での商品情報をいかに現実のものに近づけるか、想像しやすいようにするかに注力した方が良いでしょう。また時計や家具、家電と言った商材によっては、AR機能があるだけで購買意欲が向上するというデータもありますので、消費者のニーズに合わせて、必要な仮想ツールを導入するのが良いのかもしれません。

新しい消費生活を通して感じたのは、新しい技術によって買い物体験をより楽しいものと捉えられるということ。制限が多いこの昨今ですが、テクノロジーの進化に感謝しつつ、将来に期待し、今体験できることを有り難く体験していきたいですね。

muraishi

JECCICA客員講師 村石怜菜

株式会社パルコ・シティ シニア・コンサルタント。

日本女子大学被服学科卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイトの構築や運用に携わる。現在は、ファッション専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意としている。また、クライアント企業のオムニチャネル戦略の計画・実行を支えている。


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