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売ろうとしないで知ろうとすると売れてくる

これからは売ろうとすると売れなくて、知ろうとすると売れる時代なんじゃないかと思う。最近、僕はまくらの河元智行さんと話す機会があって、それを痛感した。きっかけは「まくら診断」で商品を販売する「pillow.jp」というサイトについて話を聞いたことにある。

このサイトは最大で41項目の質問に答えれば、既製品256商品の中から3つと、パーソナライズの枕が1つ紹介されるというお店である。例えば、リアルネットを問わず、こういう商品を売るときは、ずらっとありったけの商品を並べて販売して、その選択をお客様に委ねるのが常識であるから、逆をいく発想だ。

ただ、それをやろうと思えば誰でもできる話だが、肝心のその精度が伴わないので成立しない。でも、この会社はそれを最初から絞って4商品しか出さずに、しかもその極めて精度が高い。なぜ、こういうことができるのか。そして、こういう発想で商品を売ろうとするのかには、河元さんなりの考え方があって、ここが興味深い。

相応しいものに巡り会うことに注力している
元々、河元さんはまくらのメディアをやっていて、その理由は「自分が使った枕が合わなかった」ので、自分に合う枕を見つけられる為そこに特化した情報サイトを作ったわけだ。すると、同じ悩みを持った人が多く人気サイトとなり、それでメーカーとのつながりもできたので、商品も販売したというのがスタートである。

ここがミソで、だから語弊を恐れずいえば「売ろうとしなかった」のである。メディアで自分に合う枕を指南して、それを通して「売っていた」わけで、だから売れたかどうかで一喜一憂することなく、注力したのはマッチングの精度なのである。

だから「不良品でなくとも自分には合わなければ」一定期間なら返品を受け付けた。普通の店なら返品を避けるように仕向けるのだけど、彼は敢えて率先して行ったわけで、それはマッチングの精度を高めるためである。

そう考えると返品すらもプラスの価値に変えていたことになる。

データ蓄積に重きを置いたから今がある
そう考えれば意識は返品させないための商品ページの説明や見せ方、メディアでの紹介の仕方ということになる。しかも在庫を抱えることなく、受注発注でそれをやっていたので、精度が高まれば、利益は格段に増える。

そして、売上とは違った目的があるから、精度が高まって、利益額が大きくなった時、河元さんが投資したのは「受注予測システム」であったというが、この辺からして見ているものが違う。配送まで含めて、届けるまでの満足度向上に重きを置いた。

そういう発想に立っているから、先程の「まくら診断」につながってくる。単なる性格診断的なものではなく、本気で過去、そのお客様とのやりとりを通して蓄積されたデータをもとにしている。そこに紐づく必要な質問を用意して、お客様はそれに応えることで、さらに違った角度でマッチングを実現させたというわけである。

売っているのだけど、それは売れて満足ではなく、お客様を知るのである。だから、僕は「売ろうとすると売れなくて、知ろうとすると売れる」と書いた次第である。

お客様に合わせる準備できているだろうか
一方、昨今、多くのショップさんとやりとりをしていると、多店舗展開をするときに、メインのモールの商品登録内容を“コピー&ペースト”でやっていると耳にする機会が非常に多い。でも、それは売ろうとしているだけで、知ろうとする視点がない気がする。

話は少し逸れて恐縮だが、以前、ブランド「WEGO」のネット通販が各モールで売上を伸ばして全モールトータルでの売上が半年で2.17倍になったという話を以前、その事業部長の濱中眞紀夫さんから聞いたことがある。

その文脈で述べていたのは、モールごと比較すると、下手するとユーザーの年齢が干支一つ違うということだった。

だからそれまで、各モールごと運営者しかいなかったところに、商品選びのMDと仕掛けのSNS担当を新たに着任させて、売上情報をもとに商品の見せ方にはじまり、SNSなど施策部分にも反映して、個々の違いを明確にしたのだ。

そりゃ干支ひとつ違えば、戦略が違うはずだ。

つまり、“コピー&ペースト”体質からの脱却である。それらの検証は全てデータに基づいているのが肝であって110分類に分けて、前年比、モール比で勝っているもの負けているものを一つ一つ検証。

大事なのは、その「負けているものの幅をどれだけ最小化していけるか」に意識を割いて、それぞれの売り先のお客様のニーズにあわせた。やったのはそれだけであると。

売れば売るほど、蓄積するのはお金でもあるけど、大事なのはデータの方であり、そこで完結させることなく、そのデータこそが未来のその店の個性を引き出す。無論、そのデータは精度を増して、さらにその店の可能性を引き出す。

だから思うのである。もう発想の転換をすべき時だろう、売るという事について。これからは売ろうとすると売れなくて、知ろうとすると売れる時代なんじゃないか。コマースは着実に、時代とともに変化している。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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