CVR向上の根底 CVRの構成要素とチェックポイント
CVR(コンバージョンレート=購買率)を向上させるために「何をどうすればいいのか」ということについては、「ショップ」も「ECツールやサービスを提供している企業」も「もちろんコンサルタント」も、ほとんど全てと言っていいぐらいのECプレイヤーが「重要な課題」と考えているかと思います。
今まで何度も申し上げたので詳細は割愛しますが、CVRが向上すれば集客数は「後からいくらでも買える」という採算構造になりECサイトが急成長できる大きなカギとなるからです。これについては異論をはさむ余地がないかと思いますが、CVR自体について深く考察した例はあまり見受けないのも実情です。今回は少し固めの話を含めてCVRの構成要素を考えて行きたいと思います。
さて、読者の皆様に質問です。
CVRを構成する【 要素 】とは何でしょうか?考えてみたことがありますか? 以下、笹本が思うCVRの構成要素を述べてみたいと思います。
UI(ユーザーインターフェース)のクォリティー
UIとはコンピューターとユーザーとのやりとり「=表示と入力」を意味するものですが、平たく言えば「=使いやすさ」と考えて頂いて良いかと思います。但し、システム系の用語と言うよりは「やりとり=接客対応」という様な文系のニュアンスでとらえて頂いた方が より質の高いUIを生み出せるのではないでしょうか。
「使いやすさ」の要因は大きく分けて2つあります。
・「選びやすさ」(探しやすさ/比較しやすさ)
ナビゲーションや検索、また商品一覧ページなどの機能と考えて頂ければと思います。UI的な表現をすればサイト側からの発信や回答 ということになりますが、これが発信や回答というレベルからもう一歩踏み込んで、提案やキュレーションというレベルに達して初めて「リアルの店頭」に近づけるのではないでしょうか。「選びやすさ」とは「決めやすさ」と同義であり、ショップ側からの提案で「決めてあげる」という機能を持つまでの構成になっているショップはまだまだごく僅かです。
以前のコラムに、モールなどで「黄色+財布」で検索した時の結果を例にして、必ずしもお客様のデマンドに対応していないケースが多分にあることを述べましたが、品番やブランド名で探すごとくの「指名買い」を除いては、多様化しているお客様のニーズを汲み取っているとは言い難くCVR向上の余地が充分にあるテーマだと思っています。
・「入力のしやすさ」
ECサイトはお客様に連絡先やお届け先、あるいは見積条件などを「入力」して頂いて初めて売上に繋げることができます。
一方、スマホのタッピング入力やPCのキーボード入力のごとく様々な入力方法があり、決済サービスやカート各社はセキュリティーと入力のしやすさを、いかに両立させるかについて切磋琢磨しているわけですが、「入力」については今後もCVR向上の大きなカギになると思っています。
たとえば大成功を収めているLINEを考えてみてください。LINEの登場前にも1対1の会話はメールでできました。グループでの会話もメーリングリストやクローズドの掲示板などで可能でした。無料通話もスカイプなどがありました。つまり「各種の機能自体」は既存のサービスで対応できるものであったわけですが、会話の相手の登録やグループへの招待など「入力のしやすさ」が格段に向上した結果、多くのユーザーから支持されたのです。スマホ向けの各種専用アプリやアマゾンペイメントなども「さらに便利に簡単に」入力を改善するためのモノであると言えるでしょう。
いまだブルーオーシャンが残るであろうシニアシルバー世代や、越境EC=外国語対応や海外向けの送料や納期 輸入関税の表示など「従来のECにも増して」UIに高いクォリティーが求められる「巨大な潜在市場」であることは間違いありません。
音声入力やAI(人口知能)などの活用を経て、最終的な目標として「いつものお米10kgお願いします」=住所も言わず 商品の銘柄も言わず、電話番号と声色と注文履歴からお客様と配達先の住所と注文の商品を「間違いなく特定」し、昼間のご注文であれば「夕食に間に合う時間帯」に届ける必要があることを「正確に認識」し、住居が実在していることを以って本人確認と与信確認と見なすごとくの「入力のしやすさ」が今後要求されてくるのではないでしょうか。大きな課題の一つです。
安心感の醸成
ECも世間一般に浸透してきており(注:浸透しており とは思っていませんので念のため。いまだ発展途上だと思います。)昨今では安心感の醸成についてはあまり大きなテーマとして語られることはなくなっていますが、今もなおCVRに大きな影響と与える要素の一つです。
特定商取引法に関する表示はもとより、返品規定や送料と納期の目安、営業時間や休日の記載あるいは受注時の自動返信メールなども「あれ?電話に出ない/返信が無い」などの不安の発生を「事前に解消」しておくコンテンツと言えます。
古物商など各種免許/登録番号などの記載は「売り手として充分な資格がある」という安心訴求そのものですし、SSLやトラストeなどセキュリティー関連の訴求も同様です。また店長や社長の「ご挨拶やプロフィール」なども売り手の人柄やポリシーなどを伝えることによって安心感の醸成を図るのが目的です。ちなみに生産や収穫までの工程の開示もこの安心感醸成のためのコンテンツなのではないでしょうか。
ECサイトを構成するコンテンツの中で、どれだけ多くの項目がこれに該当しているかと考えて頂ければと思います。初めて来訪したユーザーがそのまま1stセッション内でお買い上げ頂いた場合、最後の最後に会社案内のページを見るケースを多く見受けますが、ユーザーはそこで何をしようとしているのでしょうか。商品と価格、あるいは送料や返品規定などの「全てに納得した後」に【 念のため確認=安心を求めている 】のではないでしょうか。カゴ落ちあるいは「カゴに入れる直前」に離脱する原因は、決済手段や入力ユーザビリティーの不備だけではないことをお忘れなく。安心感醸成コンテンツの大切さを再認識して頂ければと思います。
以上の基本的なこと以外に、実は安心感の醸成の面において多くのECサイトで放置されていることがあります。
「違和感の排除=安心感」これが大きくCVRに影響します。
「違和感」については大変多くの項目があり全てを列挙することはできませんが、まずは分かりやすい例から。リンク切れやバナーの列がずれているなど「レイアウトの整然性の欠如」は当然違和感発生の原因になりえます。
基本中の基本ではありながら、最近の大変多様化した閲覧デバイスとブラウザの全ての組み合わせをチェックすることは難しく、実際の現場においてはワードプレスを使っているから大丈夫、信頼できる業者にサイトを作ってもらったから大丈夫という感じの空気が支配的の様な気がしています。しかしながらごく最近の笹本のクライアントにおいても昨年同月対の大幅減の原因がこれであった事例もあり、一定規模のECサイトであれば健康診断のつもりで定期的に専門業者にブラウジングチェックを頼んでみるのも一つの方法かもしれません。
もう一つは「感性系の違和感」です。これが大変多岐に渡るのですが、総じて言えばそれぞれのコンテンツとしては違和感がないにも関わらず、組み合わせとしては違和感があるというパターンに属するかと思います。
いくつか例を挙げれば、数百万円の着物の横に「5千円以上送料無料」と書いてあったり、高級食材の説明文が「~食べ“られ”ます」ではなく「~食べれます」であったり、詳細は割愛しますが商品価格帯とデザイン&テーマカラー&フォントなどの不一致などもその一つです。
(re:色彩やフォントと価格帯は強い関連性があります。看板がオレンジの牛丼屋とこげ茶色の牛丼屋→いくらぐらいの価格帯を想像しますか?では、明朝体と丸ゴシックがイメージする価格帯は?)
他、色彩やフォントだけでなく「文体」と「商品価格帯」の不一致などもありますし、感性系の違和感がいかに多岐に渡るかの例として・・・「カワイイ系」ファッション雑貨ショップの社長の写真が「いかにも体育会系の角刈り」で、社長挨拶の冒頭が「当社は昭和〇〇年に創業以来、精進を重ねて参りました。云々~」そして社長の写真と挨拶を削除した日からCVRが急上昇。社長はとっても寂しそうでした。(笑)ショップ名が特定できない様に少し脚色はしていますが、もちろん実話です。
また、検索サイトなど外部からのユーザー流入に対するLPO(ラインディングページオプティマイゼーション=リンク元の広告文やサイト説明文などと、リンク先ページの内容の一致)も感性系の違和感の排除に相当するかと思います。
CVRの向上という課題に向き合う際、どちらかと言えばUI=機能面での「選びやすさ」「使いやすさ」などに重きを置きがちですが、今までの経験で言えばCVRへの影響は「感性系」の方が大きいと思います。また笹本の私感としては大規模サイトほど「全ページ共通」のコンテンツと「個別商品」との間に不整合が起こりやすい様です。データベースからの商品ページ制作と個別ページのカスタマイズの度合=違和感の排除については業務負荷とのバランスも考慮する必要があり一朝一夕で改善するのは難しいのですが、各コンテンツの小さな改善の積み重ねが全体のCVRを左右することをお忘れなく。
感性系の違和感は「コンテンツを作った本人」は違和感がないからこそ、そのままサイトにUPしているわけで、またサイトを見慣れている人ほど違和感が薄れていきます。つまり「内部の人」には「発見が大変難しい課題」です。新人のアルバイト君などが発見してくれる例などはよくある話ですが、いずれにしても「外部の目」が必要となるでしょう。これも定期的なチェックをお勧めします。(そんな時には是非JECCICAのコンサルタントをっ。)(笑)
JECCICA客員講師 笹本 克
全国各地で有名ネットショップを輩出。 自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務める。 DeNA社やYahoo!Japanショッピング事業部スタッフへのレクチャーや、ドリームゲートの起業講座の他、上場企業から中小企業までコンサルサイトの累計は約600社、多岐にわたる業種でのコンサルティング実績も豊富。