ネット通販で重要視される「LTV」とは
JECCICA特別講師 松橋 正一
お店の売上げを上げるには、たくさんの人にご来店いただき、商品やサービスを気に入ってもらい購入いただく必要があります。
新規顧客を獲得するには、たくさんの工夫と努力、そしてコストがかかります。
「来店さえしてもらえば、必ずウチの商品を気に入ってくれ、また買いに来てくれる」と自信を持って集客のためのコストをかけたとします。
しかし、コストをかけて新規顧客を獲得しても、なかなかリピートにつながらない。
新規顧客獲得にかけたコストを回収できないとしたらどうしましょう?
一人の顧客が取引期間を通じてお店にもたらす利益(価値)を、LTV(顧客生涯価値)と呼びます。
つまり一人の顧客がお店とお付き合いをしてから幾ら買ってくれたか?
一人の顧客がもたらす損益を算出したマーケティングの成果指標です。
このLTVが、新規顧客を獲得するためのコストと顧客を継続して維持するためのコストを上回っていればお店に利益をもたらすことになります。
繰り返し購入してもらうことでLTVを高めていくことは、ネット通販を運営する上でとても大切です。
LTV ( Life Time Value顧客生涯価値 )とは
1人の顧客が取り引きを始めてから終わりまでの期間(顧客ライフサイクル)を通じて、その顧客がお店にもたらす損益を累計して算出したマーケティングの成果指標のことをいいます。
「1人のお客様が、あなたのお店でどれくらいのお金を使ってくれるのか?」と言い換える場合も多く、DMや広告の費用対効果を考えるときに、必ず意識しないといけない指標です。
「LTV」の具体的な算出方法
「LTV」=「平均注文単価×粗利率×年間利用回数×平均利用年数」
例えば、1回の来店でお客様の注文単価が平均5,000円、お客様は1年の間に1回リピート、平均3年間利用してくれ、粗利率0.6とすると、
「LTV」=5,000円×0.6×1回×3年=9,000円
実際の算出方法としては、
「LTV」= 「(期間総売上÷ユニーク客数)×粗利率」
例えば、3年間の総売上が15,000,000円、期間中の利用お客様人数が1,000人(ユニークユーザー数)、粗利率0.6とすると、一人のお客様が3年間に平均15,000円利用してくれたことになり、
「LTV」= (15,000,000円÷1,000人)×0.6=9,000円
期間中利用のお客様1,000人のうち、600人が1回のみの利用、400人が平均6回リピートすると、注文数は、
600人×1件= 600件 400人×6件=2,400件 合計3,000件となり、平均注文単価は5,000円となります。
3年間の平均注文単価は5,000円、平均客単価は15,000円となります。
一人の顧客が3年間で、9,000円の粗利益をもたらすことになりますので、仮に新規顧客を獲得するため粗利率60%のお試し商品1,000円を販売し、送料無料や広告費など新規顧客獲得費用に2,000円かけたとしても、その先継続してお店を利用してもらうことで得られるLTV(顧客生涯価値)から、お店に利益をもたらすことになります。
新規顧客獲得コストCPO(cost par order)と既存顧客維持コストを考えないといけませんが、これらのコストがLTV以下であれば、ひとまず費用対効果はOKということになります。(実際には固定費も考える必要があります)
ここで注意は、「お試し商品」が、お店の平均注文単価を主に構成する売れ筋商品に関連づいているものでなければなりません。
新規顧客を獲得するための「お試し商品」を購入してくれた顧客が、どれだけリピーターとして残ってくれるか?既存顧客維持費用をどのくらいかけるか?を考え、継続的フォローなど顧客を維持するための努力が重要です。
長期的なLTV向上施策としては、既存顧客維持等のコストを抑えながら、顧客のリピート率・顧客単価を上げていくことが必要です。
つまり単純に顧客のリピート率を増やしていけばよい話ではなく、そこに顧客維持(獲得)費用の相対的な抑制も結果として備わっていないとなりません。
さて、既存顧客維持で重要なリピート率、リピーター率について考えてみましょう。
今月の来店者数が100人で、そのうちリピート者数70人です。
今月の「リピーター率」は何パーセントでしょうか?
この場合、「リピーター率は70%」ということになります。
この「リピーター率」は、 新規顧客が増えなければ、リピーター率は上がり、新規顧客が増えれば、リピーター率は下がることになります。
常連客だけで売上げが構成され、新規顧客が増えなければお店の売上げは縮小していきます。
次に、開店から今月まで来店したユニーク者累計数が、700人です。
今月のリピート者数は70人です。
この場合、「リピート率は10%」ということになります。
このリピート率は、美容院、理容院、歯医者、エステサロン、鍼灸院、整体院、パン屋、ケーキ屋など、地域的(ローカル)な顧客で利用されるお店でのリピート率の考え方で、広域な範囲で利用するネット通販ではリピートの指標としては考えにくいと思います。
ネット通販では、お店や商品に合った適切なリピート指標を考え、リピート購入をしてもらう既存顧客維持の工夫と努力が必要です。
長期的に見て効率的なネットショップを経営するために、新規顧客の獲得に力を入れるだけではなく、既存顧客との関係性を重視し、LTVを向上させることが重要です。
新規顧客を獲得するためには、まずは顧客に商品やサービスを認知、理解してもらう為に、ある程度の広告費など新規顧客獲得コストの投入が必要です。
限られた市場の中では新規顧客獲得に頭打ちがあり、残りのシェアを取るために競争が激化していく傾向にあります。
まず「販売シェア」を拡大するために、商品やサービスを広く認知させ、新規顧客を獲得します。
一方で、長期的に見て効率的に利益を上げていくために、リピート購入の拡大、つまりLTVの向上が重要です。
「新規顧客獲得」と「既存顧客維持」にバランスよくコストを配分すること、それがお店と顧客の絆経営となり、お店が成長し顧客も育成することになるのです。
JECCICA特別講師 松橋 正一
楽天、ヤフー、amazon、自社サイトなどECサイトの運営経験を基に、数々のショップを構築サポート。大規模ECサイトの効率的な構築、データ処理システム構築を得意とする。