嘘偽りなく店の姿勢、出せますか?noteで知る今の時代
「気持ちに偽りなく」の時代
「嘘偽りない自分を出せるか」。これからの通販でそれが肝に銘じておくべきことではないか。「嘘偽りがない」というのは「気持ちにおいて」である。
最近、noteプロデューサー徳力基彦さんと話す機会があった。それは、ネットショップの方々から「noteの使い方について知りたい」と聞かれたのがきっかけである。noteについて説明するならブログのようなプラットフォームである。
確かにネットショップの人が関心を抱くのもわかる。最近、かなりの割合で経営者がnoteで自らの意見を投稿していたりする。何がそのような行動へ駆り立て、彼らにどんなメリットがあるからやっているのか。そこに今の時代の特徴があるように思えた。
あなたの中身を知りたがっている
それでいうとnoteは「記事スタイル」であるという事がその特徴を言い当てている。元々このプラットフォームは紙メディアが廃れていく中で、編集者たちに発信する場を与えていく為に提供しようという事が創業者の加藤貞顕さんの頭にあったという。
だから、事実を伝える「ブログ=日記」よりも、主張やストーリーへと引き込む「論説文」をイメージさせる体裁で、それを補完するべく画像や動画などを交えながら、より深掘りできる設計にしていて何よりそこには広告が存在せず、余計なノイズがない。
ありがちな投稿のランキングもなくて純粋に作品としてと向き合い、良いと思えば作品自体に課金をするスタイル。確かに、今の時代にマッチしているのかもしれない。それは次の理由からである。
最近、ECの文脈で言えば、D2Cが盛んな中で、冒頭話したように「嘘偽りなく」メッセージを発信することが大事になっている。より気持ちに正直なコンテンツが評価され、それがそのまま、購買行動につながっているからだ。
売り込む営業は昭和のやり方!?
つまり「これ、売れてますよ!」とか「他より個々の部分が優れてるんです」とか「安いよ!安いよ!」ではない。それが通用するのはECのショッピングモールでの話であって、D2Cを求めるお客様は全く違う。そのブランドの考えや価値観などに触れて共感して、自分にも取り入れることがメリットに感じるから商品を購入している。「嘘偽りがないか」は大前提である。
noteであればその意味でノイズなく主張ができる。例えば、どこの企業も企業ホームページこそあれど、多くは今そんな「飾られた姿」に一般人が興味を示さないのである。
真相を知りたいから。経営者がnoteなどで自らの考え方などを語ることで、知りたいその企業の真の姿に巡り会えるわけだ。現に、FABRIC TOKYOの森 雄一郎さんはよく自分の考えを文章に示したほうがいいと話していますよと徳力さんからも教えられた。
宣伝が絶対的な力を持たない時代
そんな話を徳力さんと僕はしていて、とある話に至るわけである。彼は僕のいう「嘘偽りのない時代」という視点に関心を持って、こう応えたのである。
「確かに、かつてマスマーケティングの中においては『宣伝』が絶対的な影響力を持っていたけど、それって少しばかり大げさに言わなきゃいけないからその意味では嘘が少しばかり入るって事かもしれませんよね」と。
そう言って彼が紹介してくれたのは「73歳の寿司屋のnote」であった。確かに偽りない切実な言葉であった。コロナ禍で来店が減る中、寿司の素晴らしさをせめて、文章や写真で伝えようとした。結果、新しいお客様が増えたそうだ。
商品だけでなく企業も経営者も見られている
何かしら人の行動には意味がある。今の時代は飾り気のない、ありのままの自分を曝け出しながら、だから何をしたいのか、何をしているのかを示す時代なのだと。
ECに絡む分脈で言うと、「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)がそうである。チョコレートに対しての並々ならぬ魂が文章の中に宿っている。チョコレートという素材は数あれど、商品だけ売り込むのではなく、チョコを素材に企業の姿勢を伝えているのである。
つまり、今や見られているのは商品をだけではない。その商品を出している企業すら、調べられていて、その価値観を知りたがっている。今一度、モールに出店している人にこそ、「売れているよ!」的な視点だけではないのである。モールという街で、買い物に慣れた人たちを相手にしたやり方が全てではない。そのあり方を取り除いた時、真に自分のお店の価値を伝え切れるだろうか。
案外、自分で自分のことは知りすぎているだけに、何をチョイスして、どう伝えればいいのかは難しい。ここに向き合わない限り、D2Cなどの気持ちを分かりきることはできないように僕は思うのだ。
JECCICA客員講師 石郷 学
(株)team145 代表取締役