テレビCMでも加速する、「クッキーの終焉」
勝ち組WEB担当者にとって欠かせない「リマーケティング広告」。もちろん単なる「追っかけられる広告」ではお客様に嫌われておしまいです。グーグル、ヤフーからクリティオまで、知れば知るほどお客様がついつい「買ってしまいたくなる」機能が満載の高度なcookie技術を使った広告です・・・いや、だったわけです。
ことの発端は、GDPRやCCPAなど欧米の個人情報保護法が、GAFAと呼ばれるグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどの企業が行うcookieを使ったデータ収集がプライバシー侵害に当たると圧力を高めたこと。
日本で大きなニュースになったのは2020年1月。グーグルが2022年でこのcookie技術を廃止すると宣言して、「リマーケティング広告」「ターゲティング広告」が機能しなくなってしまうことが広く知れ渡ることになり、広告業界は騒然としていたわけです。
原稿執筆時点の2021年6月には「プライバシー、これがiPhone」というテレビCMによって、実質的に「リマーケティング広告終了のお知らせ」が全国に流れるという事態に発展しています。
▲前号でご紹介したiOS14.5以降で実装された「ATTコンソール」が画面いっぱいに表示されるアップルのCM
そこでGoogleは、cookieに変わる技術として「プライバシー・サンドボックス」なる技術を早々に発表し、2022年のcookie廃止までにはなんとかしてくれる感が漂っていたのですが、つい先ほど弊社の広告部門から速報で「グーグル社、「Chrome」のサードパーティークッキー廃止を2023年に延期」というニュースが舞い込んできました。
つい数日前に、イギリスで「プライバシー・サンドボックス」を使った広告の実験をグーグルが開始したという希望に溢れたニュースで各SNSのタイムラインを賑わせた矢先、あたかも返す刀で「プライバシー・サンドボックス」は延期です、という悲報です。
そうした動きを知ってか知らずか、アップルのiOS14.5以降にアップデートするユーザは、テレビCMの影響も追い風になってかどんどんと急激に増加していることがグーグルアナリティクスから見て取れます。
弊社サイトでのiOS14.5以降(iOS14.6)ユーザの占有率の推移
iOS14.5以降で「トラッキングを許可する」をクリックしている割合
つまり、もうほとんどのiOSユーザがiOS14.5以降(最新は14.6)に切り替えており、日本での状況はまだこれから調査が必要ですが、アメリカでは90%のユーザは「トラッキングを許可しない」を選択しているわけです。こうなるとアプリ間を跨いだコンバージョン計測も怪しくなってきます。
さらにcookie代替技術として期待のホープだった「プライバシー・サンドボックス」のリリースが2023年まで延期になったわけですから、ことターゲティング広告の成果は壊滅的打撃が予想されます。
そこで代替案となるマーケティング戦略の一つに「SNS活用によるエンゲージメント向上」が挙げられます。テクノロジーがダメなら人力で頑張るしかありません。SNSで投稿しても全くフォロワーが増えない、見てもらえない、という状況を解消して、見込み客となるユーザとの接点を知恵と労力で増やしてゆくしか無いわけであります。
最近のセミナーでも人気コンテンツになっていますので、この辺りの具体的な方法については次号「インスタグラムのアルゴリズムーシグナル攻略法」で詳しくご説明いたしますのでお楽しみに!
JECCICA客員講師 宮松 利博
得意分野/Eコマースの立ち上げ・販売拡大
1998年に公開したフリーウェアがヒット。その知見で開発した商品が大手ECコンテストで12部門受賞、3年で年商20億円に(現ライザップ)。上場と同時に保有株を売却し、ECコンサルティング会社を立ちあげ、業界No.1クライアントを多数抱える。日本イーコマース学会専務理事。