クリックアンドコレクトの定着
従来型のEコマースは、オンラインで注文して家まで配送してもらい商品を受け取るというのが一般的なプロセスでした。このプロセスですと、実際に商品を受け取るまで数日要することが通常で、また配達の際に家の玄関前に商品を置いていくことにより盗難の心配もあります。Amazonでは、配達の証拠として玄関前に商品を置いた写真をEメールで通知してくれ、さらにAlexaでもメッセージを伝えてくますが、これだけでは盗難防止の解決策にはなりません。
このようなことから、商品の受け取りに関して他の場所で受け取るというオプションを提供する企業が増加しています。Amazonロッカーのように、自分が頻繁に行く場所や都合のいい場所にて受け取ることは、玄関前に商品を置いていかれることによる盗難のリスクを減少させることができます。また、実店舗などでの受け取りは、受け取り場所まで出向かなければなりませんが、商品受け取りまでの日数を短縮することもできます。このオプションは、オンラインで注文して店舗内で受け取ることからBOPIS (Buy Online Pick upin Store)、もしくはクリックアンドコレクトと呼ばれ、実際には2012年ころからすでにAppleやWalgreensで提供されていましたが、一般に定着しているという感はそれほどありませんでした。
が、新型コロナウィルスによるパンデミックの影響で、ソーシャルディスタンスの徹底や店内に入れる人数制限から、店舗のすぐ前や駐車場で商品を受け取るカーブサイドピックアップサービスが増加しております。言葉的に言いますと、店舗の外でも受け取ることからクリックアンドコレクトという言葉のほうがBOPISより適しているかもしれません。
このクリックアンドコレクトの総利用者は、2019年の1億2,740万人から2020年には1億4,380万人と大幅に増加し、それに伴い次のグラフにあるとおり、2020年のクリックアンドコレクトの売上は前年よりなんと2倍以上となっています。
このように大きく成長した2020年のアメリカのクリックアンドコレクトですが、全体売上の約3分の2が、Walmart、Target、家電のBest Buy、日曜工具品等のHome Depot、Lowe’sおよび百貨店のMacy’s、Nordstromeといった7つの主要な小売業者で占められています。中でもTargetは、2020年のEコマースの売上が前年比100億ドル近く増加し、この大きな要因となったのが235パーセント増を記録したクリックアンドコレクトを中心とする同日受け取りサービスであることを3月の決算発表で述べています。
前年のクリックアンドコレクトの成長は、パンデミック下における安全性のための利用増と考えられますが、今後はその利便性から利用者が定着していくと考えられます。
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。