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Eコマース運営者が知っておくべき
「巨額ビットコイン消失事件」3つの誤解

「ビットコイン=怪しい?」

先日、JECCIA8月のセミナー「ネット通販を取り巻く『FINTECH』フィンテック」が開催され、僭越ながら筆者もパネラーとして登壇させて頂きました。その質疑応答の際に「ビットコインは世間から信用されていないのでは?」と会場からお声があがり、依然としてビットコインへの「ぬれぎぬ」は着せられたままなんだな、と再認識した場面がありました。
おそらく世間一般へのこうした印象の引き金となったのは、2015年8月の「ビットコインの社長を逮捕」という、日本のテレビ局や新聞社などによる「誤った見出し」が原因でしょう。意図的なミスリードが仕込まれていたかどうかは私はわかりませんが、いずれにせよこの見出しがネットニュースなどでは独り歩きして、「ビットコインは円天の再来」「ビットコイン社はネズミ講」と、SNSなどで拡散されていました。結果的に、一部のニュース媒体を除き、事実を正しく説明した大手メディアの記事はほとんど無かったように記憶しています。

事件の概要

もともとは、自宅アパートでトレーディングカードのオンライン売買交換所を運営していた日本在住のフランス人の青年が、ある日ビットコイン取引システムを開発者から買い取った格好で、東京渋谷にオンラインビットコイン取引所「マウントゴックス」社を設立しました。その後、ビットコインを含め約114億円相当をなんらかの不正により消失させ、2014年に倒産したという顛末です。
そもそもが、ずさんな経営と脆弱なシステムで海外からも問題視されていたマウントゴックスだったのですが、急激なビットコイン人気に後押しされ、世界中のビットコイン70%の取引量を占めるまでに成長してしまったのです。被害者の中には個人で数千万円分の損失を受けた方も出た不正横領事件でしたが、社会的認知や法整備も不十分だったため、損失補填などがなされないまま現在に至っています。

未だに払拭されない「3つの誤解」

このようなセンセーショナルな事件を、「ビットコイン社長倒産」とも取れる見出しで大手マスメディアが取り上げたため、当時はビットコイン相場も荒れて、1BTC(ビットコイン)=11万円が、2万円相当まで下落していました(2017/08/15現在は、1BTC=約49万円)。
現在は、投資目的以外にも、海外送金に手数料がかからないということで利用されるビットコインですが、Eコマース運営者の期待としては、手数料ゼロの有効な決済方法になるかもしれません。この「ビットコイン」の可能性を正しく評価・判断するためにも、いわゆる「巨額ビットコイン消失事件」の「3つの誤解」を解いておく必要があるとおもいます。

1)逮捕されたのは「民間による両替サービスの社長」
まず「ビットコイン社長」という人物は存在しません。ビットコインはいわばインターネットのような「しくみ」なので、ビットコイン社という組織自体が存在しません。逮捕されたのは、マウントゴックス社という「ビットコインの、民間による両替サービス」の社長です。

2)世界一の両替施設「マウントゴックス」は問題の巣窟だった。
とはいえ、マウントゴックス社のビットコイン両替所は、当時、世界のビットコイン取引の70%を占めた取引所です。しかしその実態は、倒産前からアングラ取引や換金遅延などの社会的問題、セキュリティ事故などの技術的問題が多々指摘されていました。あくまで個人的な印象ですが、当時の「マウントゴックス両替所」は、リアル店舗でいえば以下のようなイメージでした。

全世界の70%を取引するにはあまりにプアな施設だっただけでなく、両替所の中には「社長以外は入室禁止」の部屋があり、首謀者はまだ不明ですが、ここで横領が働かれていたのではないかとも指摘されています。
 
3)ビットコインは「ウォレット」で保管すべきだった。
今回のマウントゴックスの事件では、被害にあったユーザ側にも問題があったと指摘する声もあります。というのは、ビットコインは両替交換する際、一時的に両替所に預ける必要があるのですが、ユーザの中には、両替した後も銀行よろしく数千万円分ものビットコインを、長期間にわたって両替所に預けたままにしていたケースがあるというのです。
2017/4以降は、「仮想通貨法」によって、オンライン取引所の資産も個人の資産とは分けられるようになったことと、各取引所の厳格な認定基準が設けられたので、損失補填など消費者にとってのリスクは軽減されています。それでもビットコインを安全に保管するには「ウォレット」という機能が現在でも一般的です。こうしたユーザの誤用をついた、という点も事件のポイントではないかと思います。

どうして不正ができたのか?

ではなぜ、ビットコインは技術的に不正ができないしくみ「ブロックチェーン」を使っているのに横領が可能だったのでしょう。答えはシンプルで、「両替するときに、顧客には円やドルをデータだけ渡した。」というものです。つまりビットコインは、やり取りすれば価値を移管できるデータですが、円やドルの数字はオンライン両替においては単なる画面上のデータに過ぎません。ユーザもオンラインで換金して、すぐに円やドルを使用するわけではないので、前述のように両替して放ったらかしにしていると気づかないケースもあります。その間に、犯人は両替したビットコインを、別の口座に移動していたという手口です。
こうした事件・事故を防ぐ為の法律が「仮想通貨法」ですが、一方で、ブロックチェーンのメリットである「自律したシステム」が崩れ「中央集権化」の方向へ向かってしまうという側面も持っています。中央管理がダメということではなく、ブロックチェーンの革新的な側面が損なわれてしまったり、大きな権威や圧力で技術促進の芽が摘まれなければ、と思います。

余談ですが、今回の事件で逮捕されたマウントゴックス元社長が、驚異的な変貌を遂げていました。ご興味をお持ちの方は「マウントゴックス ビフォアアフター」で検索されてみてください。

宮松利博プロフィール写真

株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博

営業時代に開発した顧客管理システムで営業業績を伸ばし1997年にシステムを売却。2000年、EC立上げ初年度で月商1億円に急成長するも数年後に上場失敗。新たなECを3年で年商20億円に成長させ、2006年株式上場。同年に保有株を売却し海外視察の後、2011年「小よく”巨”を制す」を掲げ株式会社ISSUNを立上げ、WEB/ECの運営・制作・コンサルティングで、業界No.1に成長するクライアントを多数抱える。

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