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顧客と共創できますか?新時代の小売は今

自分達は何がしたい?から始まる一歩
自分たちの企業は売ることを通して、何がしたいのか。当たり前のテーマではあるけど、そこが問われる世の中になりそうです。今まではメーカーも小売も基本的に、一方通行でした。でも、これからはそうはいかない。ともすれば、顧客との関係が希薄になりそうなEC事業者こそ、気づかなければいけない現実です。

デジタル化を、小売の手段として取り入れることは「やれて当たり前」で、海外では、むしろその先を見据えた動きへと変わっています。

例えば「PELOTON」というフィットネスブランドがあります。本来であれば、彼らはメーカーでもあるので、最低、30万円はするであろうマシンを売るでしょう。日本メーカーであれば、真っ先に量販店で売る事を思い浮かべるはずです。 ですが、「PELOTON」は敢えて、マシンをお客様に送り、サブスクで提供しています。なぜなら、ECで容易にお客様の情報が手に入る時代の側面があるからで、彼らの使命まで辿れば、そうすることが必然でした。

お客様を知り満足度に繋げて高まる企業価値
お客様の運動状況を的確に把握して、そのマシンに搭載されたモニターを使えば、マシンと一体でレッスンを提供することで、マシン以上の価値を提供できます。

似たようなところでは「ルルレモン」というヨガブランドがあります。わざわざミラーという企業を買収することによって、鏡を使ったデバイスを手に入れました。ヨガなので全身での運動であり、だからこそ、姿見に近いデバイスが彼らの付加価値を高めます。 全身を見ながら、その運動の仕方に適切なアドバイスをもらうわけです。もはやデジタルは「売る」ための「ツール」ではないということがわかります。そして、次なる視点で「EC以外の」デジタルを取り込んで、付加価値を高める工夫をしていることがわかります。

そうすると、大事になるのは「自分達の提供する価値はなんだろう」ということなのです。ただデータだけを蓄積したところで、それは宝の持ち腐れ。そのデータをどう活用して、自分たちの企業の姿勢に合致させ、その文化を広く、顧客とともに共創していけるか。そこに尽きます。

EC以外に投資をするほど、ECが伸びる
誰もが知るであろう大手ブランド「ナイキ」にしても、先駆けた動きで、成果を出し始めています。2023年度第2四半期の決算では、売上高133億米ドルの中で、ナイキ・ダイレクトの売上高は54億米ドルだと発表しています。ナイキ・ダイレクトは全体の売上に対して40%以上を占めていることになります。

ナイキ・ダイレクトの成長の背景を見ると、デジタルを巧みに取り入れた戦略があります。彼らはその会見でも「Nike Training Club」というアプリの話をしていましたが、自宅で簡単にトレーニングのサポートをしてくれます。いうまでもなく、彼ら仕様のランニングアプリだって存在しますから、個々のレベル感に応じて、密着するわけです。

アプリの前提となるのが会員化です。つまり、商品単体ではなく、心身ともにメンテナンスを行います。それがお客様の満足度を高めるから、ナイキは直営店やECも積極的に、この会員化を促します。商品を売り込むよりも、会員となりアプリを通して、お客様の行動形態を変えていくのです。

核が見えれば次の手も見えてくる
こうやって会員となると、ナイキがお客様の生活の一部となります。だから、商品を買うのが自然となり購買頻度も高く、リピート顧客となって、会社の成長エンジンを担っていくことになります。日頃、彼らはスポーツ選手のスポンサードで「イノベーション」を掲げて、アスリートたちの可能性を最大化していますから、それをお客様に実践するのみです。注目すべきは、そういう土台があるから、次の時代で何をすればいいかも見えてくるわけです。

意外なことに、これがメタバースの文脈にも通じてきます。え?と思われるでしょう。ナイキは最近、「アーティファクト」 という会社の買収を発表しました。アーティファクトは既存のブランドの世界をオールドワールドと表現し、デジタル上に必要なアイテムをNFTとして提供しています。ナイキのシューズをNFTの世界でも浸透させようというのはわかりますが、一見すると、彼らとは関係なさそう。流行に乗ったのでしょうか。いや、違うでしょう。

彼らはそれに関連し、こう言いました。「ナイキは靴を売っている会社ではありません」と。

各々意図するライフスタイルを提供していく
では何かというと「ライフスタイルを提案している会社なのです」。かつて、マイケルジョーダンにそのシューズを履いてもらったのは、そこに憧れのライフスタイルがあったからです。

未来を想えば、憧れの対象もそれだけではない。例えば、eスポーツのプレーヤーなどに憧れる人が出てきた時に、ナイキはしっかりそことも連携していく。なぜなら、人々の憧れのライフスタイルを提供していく会社だからというのです。

そうすると、そこでもやるべきことは見えてきて、そこでもイノベーションをきっと起こしていくのでしょう。裏を返せば、「売る」ということにとらわれるほど、売る機会が減っていくということでしょう。

今一度、自分達のイズムが何であり、それをもっと伝えるべき相手に伝え、お客様と社会を共創して、社会を変えていこうとする姿勢の中にこそ、飛躍があるのだと思います。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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