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自社ECは大丈夫か?

2022年の国内物販系BtoC-EC市場規模は14兆円
8月末に経済産業省より2022年の電子商取引市場規模が発表されたことは既にご存じの方も多いでしょう。2022年の国内物販系BtoC-EC市場規模は13兆9,997億円、EC化率は9.13%でした。市場規模の伸長率は5.37%に止まりましたが、カテゴリー別に見てみると「食品、飲料、酒類」は9.15%増、化粧品、医薬品は7.48%増である一方、家電は3.84%増、アパレルは5.02%増と、カテゴリー間で伸長率にバラツキが生じています。とはいえ全体では5.37%ですので、この数値はEC市場が成熟化の時代に突入したことを証明しているのではないでしょうか。ちなみに私は、2023年の伸長率は5%を切るかもしれないと予想しています。

ECモールのGMVは10.5兆円
この13兆9,997億円のうちECモールのGMV(Gross Merchandise Value)がどれだけの比率を占めるのか各種リソースを活用し独自の手法で計算してみました。ここで言うECモールとは、Amazon、楽天市場(物販系BtoC-ECのみ)、Yahoo!ショッピング、au PAYマーケット、Qoo10、ZOZOTOWNの合計6モールとします。推計したところ、6つのECモールの合計GMVは10.5兆円となりました。全体が13兆9,997億円でのすで、ECモールがEC市場に占める比率は75%にも及びます。私の計算では2021年は9.3兆円と推定されますので、1年間で1.2兆円GMVが増加したことになります。このなかでも特にAmazon、楽天市場の伸びが際立って大きかった点が特徴的であることを付記しておきます。

自社ECはどうか?
では非ECモール、すなわち自社ECはどうでしょうか。2021年の国内物販系BtoC-EC市場規模は13兆2,865億円でしたので、全体では7,132億円の増加です。一方上述の通りECモールは1.2兆円の増加です。一瞬“あれっ”と思ってしまいますが、計算すると自社ECは3.5兆円と約なり、5,000億円のマイナスという計算になります。そうなのです。あくまでも計算上ではありますが、自社ECは市場規模が前年割れしていることになるのです。EC市場は右肩上がりで上昇しているというイメージに慣れきっている方は多いと思うのですが、その観点に立てばこの結果は衝撃的でしょう。

あらためて自社ECの市場規模を試算してみた
ただし、経済産業省の電子商取引市場調査を長年担当していた私としては、現在の担当者にはたいへん申し訳ないのですが、2022年の市場規模にミスがあった可能性を考えています。具体的には物価上昇分が反映されていないように思えており、仮に物価上昇分を織り込んだ市場規模を独自に計算してみたところ、13兆9,997億円ではなく約14.5兆円とプラス5,000億円という結果になりました。この数値を基にあらためて自社ECを計算すると4兆円、前年比プラスマイナスゼロ、つまり横ばいという結果になりました。いずれにせよ自社ECは厳しい状況であると数字上は言えます。

自社ECの実態はおそらく売上高の二極化
自社ECの市場規模が横ばいかマイナスかはさておき、プラスではなさそうだということでしょう。しかしながら、すべての自社EC事業者が軒並み横ばいまたはマイナスということではなく、売上高が伸びている事業者もいればマイナスの事業者もいて、両者が入り混じっている状態と推察します。つまり売上高の二極化が発生しているとみられます。自社ECを展開している事業者の多くはECモールにも掛け持ちで出店、出品しています。したがって消費者が自社ECのほうではなくECモールのほうを選択している可能性も考えられます。仮にそれが影響しているのであれば、EC市場全体は伸びているため大きな問題ではないかもしれません。そうではなく、やはり自社EC自体が地盤沈下しているとしたらそれはEC業界として大きな課題と言わざるを得ません。

戦略の立て直し、戦術の練り直しを
コロナが収束し消費者のリアル回帰が目立っています。訪日外国人の影響があるのかもしれませんが百貨店売上高が前年同月比でプラスが続いており、消費者のリアル回帰を象徴する数値となっています。コロナ渦でEC業界には追い風が吹いたわけですが、コロナが収束し数字の面から結局勝ち残っているのはAmazon、楽天市場といったメガECモールということになります。AmazonはPrime、楽天は経済圏というそれぞれの特徴が奏功したということでしょうか。また両者は大型セールを実施しておりそれが要因ともとれるでしょう。相対的に消費者のリアル回帰の波に多くの自社EC事業者が飲み込まれてしまったのかもしれません。苦戦を強いられている自社EC事業者は今一度戦略の立て直し、戦術の練り直しを通じていただければと願います。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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