JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

ドローンは物流問題解決の切り札になり得るのか

改正航空法の施行
2022年12月に改正航空法が施行されました。これにより有人地帯でもドローンを目視外で飛行させることができます。いわゆる「レベル4」の解禁です。つまり一般住宅街でもドローンを目視外で飛行させることができるようになったわけです。この改正航空法の施行をきっかけにラストワンマイルでのドローンの活用機運が少しずつ盛り上がろうとしているように見えます。ドローンを活用した実証実験は山間部や離島等を対象に行われてきましたが、いよいよ住宅街でも活用しようと考えている関係者は多いと思います。しかしながら私はドローンの活用は上述の用途に限定されると考えています。関係者の方々にお叱りを受けるかもしれませんが、住宅街での活用について私はやや懐疑的です。

22年のECを通じた宅配便個数は推定40億個
理由の説明に先立ち宅配便個数の統計データを確認しておきましょう。ヤマト運輸(宅急便・宅急便コンパクト・EAZY・ネコポス)、佐川急便(飛脚便)、日本郵便(ゆうパック)それぞれの2022年の宅配便個数を計算したところ、3社合計で約47億個になりました(※ヤマトHD、SGHD、日本郵便各社のHP上での発表データに基づく)。尚この数値にはEC以外も含まれます。一方自社配送分はこの数値には反映されていません。それらを考慮すると2022年の年間でのECによる宅配便個数は40億個程度と私は推測しています。2022年の物販系BtoC-EC市場規模を約14兆円と私は予想していますので1個あたりの購入単価は3,500円になります。3,500円と言われると何となく妥当そうな金額に思えますので2022年の年間でのECを通じた宅配便個数を40億個と仮置きし話を続けます。

30年には22年より宅配便個数は17億個増加
仮定の話ばかりで恐縮なのですが、私は2030年頃に物販系BtoC-EC市場規模は20兆円に達すると見ています。2022年の市場規模を14兆円とした場合、宅配便1個あたりの購入単価が変わらないとすれば宅配便個数は1.43倍になる計算になります。40億個に1.43を掛けると57億個ですので、差し引き17億個宅配便が増えることになります。物流業界は2024年問題を抱えています。今後宅配便事業者による配送能力は多少向上するとしても、17億個もの増加分を十分にさばける能力向上を期待できるでしょうか。また国土交通省が実施している再配達に関する半年ごとの定点観測調査によれば、2022年10月時点の再配達率は11.8%であり2020年10月時点からほとんど変化がありません。よって宅配便個数の母数が増えれば再配達の個数も増えることになりさらに事業者を圧迫します。

飛び交うドローンの台数の具体的なイメージは?
ここでは増加分17億個の3割相当の5億個分をドローンが引き受けると仮置きしましょう。年間5億個を1日あたりに換算すると137万個になります。1個の荷物を1台のドローンが運ぶとの前提を置けば全国で1日あたり137万個分の配送でドローンが飛び交うことになります。配送可能時間帯を12時間とすれば1時間あたり11.4万個です。もう少しイメージしやすいように東京23区で考えてみましょう。東京23区の人口は970万人。人口比に基づいた大雑把な計算ですがEC市場規模の約10%が東京23区と考えられます(※東京都のEC化率は他よりも高い点を考慮)。つまり東京23区に限れば年間5千万個、1時間当たり1.14万個ドローンを活用することになります。1個の荷物を1台のドローンが運ぶとすれば空を見上げると1時間あたり1万台以上のドローンが東京23区を飛ぶことになります。皆さん想像できるでしょうか?

考えられること
以上を踏まえた上で考えられることを列挙してみます。

①衝突および落下時の損害リスク
車両は道路渋滞があるが空はないという人がいます。上述の前提や仮定に基づいた話ですが、1時間に1万個以上もドローンが飛び交うとすれば、ドローン同士の衝突や建物等への衝突が想定されます。無論落下時には人体や家屋、器物への損害リスクが考えられます。

②受け取り方法
自宅の受け取り方法はどうでしょう。集合住宅だとベランダやバルコニーでしょうか。普段ベランダには洗濯物や物置等があるためドローンが着陸できるスペースの確保は課題です。また届いたことを受取人に知らせる方法も考えないといけません。ドローンはピンポンを押せません。仮に1台のドローンで複数の配送先を回るとした場合、間違って他人の荷物を受け取ってしまうことや故意に盗むこともあるでしょう。

③運用体制
完全自動運行にならない限り人が操作しなければなりません。ドローンを単に飛ばせるといったことではなく安全に操作できる技量が必要です。そのような人材を大量に養成することは容易ではありません。

④エネルギー面
この部分は試算が必要ですので正確な言及は難しいですが、エネルギーコスト面が気になります。趣味用の小さいドローンの電力消費は少ないと言いますが、宅配用のドローンはそれなりのサイズでしょうから消費電力が気になります。それでも自動車配送よりはエネルギーコスト面、環境への配慮面で優位かもしれませんので、正確な試算による比較が知りたいところです。

⑤再配達
上述の通り再配達率が11.8%で変化が見られません。ドローンでも同様に再配達は必ず発生するでしょう。1台のドローンで1個の荷物を配送するとした場合、再配達には手間と時間が掛かります。再配達時にもう一度ドローンを使用するのか自動車に切り替えるのか手順を考える必要がありそうです。

⑥騒音問題
騒音も気にならないでしょうか。時々1台飛行している程度であれば気にならないかもしれません。しかし音の感じ方は人によって様々です。ドローンの音が気になる/気にならないの個人差はあるでしょう。しかし1時間に1万台以上となるとそれなりに気になる人は多いのではないでしょうか。

ドローンは物流問題解決の切り札にはなり得ない?
以上のことからドローンを物流問題解決の切り札と見るには現実的ではないように私には思えています。結局のところ置き配、BOPIS、カーブサイドピックアップ等の推進がポイントになると見ます。ギグワーカーによる配送も重要かもしれません。ただしドローンは山間部や離島等への配送ではとても有益でしょう。また、BtoB物流での活用もよいのではないでしょうか。ドローンの活用については漠然としたイメージではなく、具体的なデータや運用のイメージをもって議論する必要があると思います。2024年問題もあって物流業界は待ったなしの状態です。物流あってのEC市場ですので現実的な議論と解決策を期待しています。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


 - JECCICA記事, お知らせ, その他, コラム, ニュース

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2023 All Rights Reserved.s