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小売業の「稠密(ちゅうみつせい)性」はどう変化するのか

8月12日、経産省より「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」がリリースされました。国内物販系BtoC-EC市場規模は13兆2,865億円、前年比8.61%増、EC化率は8.78%。まあ予想通りといったところでしょうか。少し気が早いのですが、私はいくつかの統計データをもとに早速22年のEC市場規模の予想をたてています。22年は過去2年の反動が大きいようで、このままのペースだと5~6%の上昇に止まるのではと見ています。とすれば、22年のEC化率は9.2%~9.3%。23年にEC化率10%突破と期待していましたが、実際には24年になると思われます。ともあれEC化率10%時代が日本でもやっと視野に入ってきました。

とは言え、諸外国と比較して日本はEC化率が低い状況に変わりはありません。ところでこれをもって日本にはまだ大きな伸び代があるというコメントをしばしば耳にします。しかしながら私は少し異なる見解を持っています。具体的には日本独自の流通構造がEC化率の伸びに影響しており、そう簡単にEC化率は伸びないというのが私の見解です。経済センサスによれば16年時点と少し古いデータですが日本の小売拠点数は990,246。一方米国労働省の統計では21年Q4の小売拠点数は1,062,285と日本と似た数値となっています。米国の人口は日本の約2.6倍、面積は26倍。そのような米国と小売拠点数がほぼ同じということですので、充実した日本の小売網がいかに消費者と密接に関わっているのかを理解頂けると思います。またこれだけの小売拠点が存在しているということは、同時にそれを支える卸売網と物流網が形成されていることも意味します。これが日本独自の流通構造です。

EC業界に携わる者としてそもそも日本の流通構造をもっと深く理解しておかなければならないのではないか、普段よりそう私は考えています。そして日本の流通構造を深く理解するにあたり、日本の流通の歴史にそのヒントがあるのではと思っています。第二次世界大戦が終結し、戦後日本は敗戦から立ち上がって世界有数の経済大国に上り詰めました。その過程で今の日本の流通構造が形成されたと考えれば、戦後復興における小売業や卸業の発展の歴史を理解することがとても重要であり、その中にこれからのEC業界のあり方を知るヒントがある、そう私は長年考えていました。

ところが21年末に有斐閣より発刊された「日本流通史」(著者:満薗勇氏)では、日本の流通の歴史に関し江戸~明治~大正~昭和(戦前)~昭和(戦後)の流れで解説されています。同書では江戸時代まで遡って分析されており、それぞれの時代における流通のポイントをわかりやすく理解することが出来ます。つまり戦後復興を起点とするのではなく江戸時代から続く流通の歴史の中に現代の日本の流通構造の形成に纏わる要点があるということです。詳しくは同書をご一読いただければと思いますが、それぞれの時代のプレーヤー構図や商流が形成される過程、商習慣などが一本の線として今の時代につながってきていることがよくわかります。

同書では日本の流通構造の特徴を、卸売業の「多段階性」と小売業の「稠密(ちゅうみつせい)性」という言葉で表現しています。前者は1次卸、2次卸、3次卸といったように卸売業が多重的なレイヤーによって構成されている点を表した言葉です。後者の稠密性ですが、稠密とは密集している様子を表す言葉であり、数学でよく使用されている用語のようです。まさに日本の小売業を表現するのにピッタリな言葉でしょう。日本の流通史について私はこの書籍ほど詳しく解説することは到底できませんが、戦後復興からの流れとして以下私見を述べさせて頂きます。

戦後から現在に至るまで小売の稠密性が日本で保たれてきた要因は「社会インフラの整備」「自動車産業」「安価で大量の労働力」「製造技術」にあると思います。戦後復興として道路、橋、エネルギー供給網といった社会インフラが整備され、加えて自動車産業が育ったことで効率的な物流が可能となりました。高い製造技術によって生産された消費財を国民に広く展開するにあたり、そのような社会インフラは有効に機能したと思われます。ましてや国土が狭く人口の多い日本では、小売業の密集性が消費者にとって都合がよかったのでしょう。また安価な大量の労働力がそれらを強力に支えることで、流通の相乗効果が発揮されたと私は推測します。そして製品を効率的かつ緻密に展開するにあたり、現在における卸売業の多段階性が時間をかけて形成されたものと理解します。

これからの日本の流通にとって何が効率的であるのかその正解を求めることは容易ではありません。ですが一つ言えることは小売業の「稠密性」がどう変化していくのかは重要なカギではないでしょうか。ECが今後重要な位置付けとなってくるこれからの時代、状況に応じてベストな効率性の模索が常に行われることでしょう。微力ながら私はその一端を担えればと願うばかりです。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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