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地方企業のEC運営環境事情について

JECCICA理事・特別講師 小林 厚士

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今回は、成果を導けていない地方ECにおける現状と実態、そして運営者が抱えている、もしくは気がつかれていない点をピックアップし、地方EC運営企業ならではのいくつかの諸事情をお伝えしたいと思います。

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まず、私に多く寄せられる質問がこちらになります。

「EC運営について、首都圏の企業と地方の企業で具体的にどのような点が異なるのか、ぼんやりとしかイメージができません。」

多くの方がこのような認識でおられますが、結論的には、「情報収集能力と実行力の圧倒的な格差」に尽きますとお伝えしています。

 

それもそのはず、首都圏、地方都市、過疎地関係なく、現在誰もが平等に、WEBを介して様々な情報を入手する事が可能な時代であるがゆえに、逆にこのような状態になってしまっているのです。

住む地域によって、物価感、風土、食文化、その地に住む人のDNAや生活スタイルが違う訳ですので、首都圏のECマーケティングノウハウをそのまま地方に持ってきても、まず理解に苦しみ、現場に落とし込む事が出来ないまま情報が劣化していくという状況を無限ループのように繰り返している企業も多く見受けます。

最新の情報をWEBで入手したところで、まずそれが本当に今の自分に合った情報なのか、取り入れる事で成果を導けるのかの判別が出来なかったり、判別できたとしても、それを最優先に現場に落とし込まれ、即座にPDCAが行える実行力を持った企業が非常に少ないのが現状です。

 

 

これより、よくある地方企業のEC運営環境事情について、いくつかお伝えしたいと思います。

1:地方のEC支援会社は首都圏に出向き最新情報のインプットを行う事を殆ど行なわず、WEB上で得られる遅れた知識をクライアントに実践投入するケースが多い。

 最新のECマーケティングを勉強していない地方にあるEC支援会社(特にHP制作会社、デザイン会社、SOHOなど)のクライアントだったりする為、その支援企業のスキルやノウハウの中だけで運営が行われている。

 

2:本業の片手間で中途半端なEC運営を行っている現状で、求める成果に対しての要望が非常に高い企業が多い。

→ 首都圏はEC専門の会社が多い。本業の片手間でEC運営を行うという中途半端な感覚が少ない。たとえ本業があっても、EC事業部として現場任せでは無い本気の運営を行っている。

 

3:地元テレビや新聞等には広告予算を当たり前の様に捻出するが、WEBには捻出したがらない企業が多く存在する。

→ 古い体質の企業が多いため、リアル媒体への広告予算投入が当たり前の感覚になっています。経営者のECに対する理解力の圧倒的な不足により、要望は高くても運営予算がなかなか捻出されないため、EC運営担当者は常に肩身の狭い環境で運営を行っています。

 

4:ECやマーケティングに対して敏感な人材や、EC業界の経験者が地方には極めて少ない。

→ 首都圏でもいえる事ですが、圧倒的なEC運営経験者の人材不足状態であり、即戦力となる人材確保が難しい中、自社に合ったアウトソーシング先を見つける事に大変苦戦している。それを補うべく、経営者が自ら舵取りを行ってEC運営を行っていくというケースは非常に少ない。仮に首都圏の実績あるベンダーを見つける事が出来ても、そもそも予算的に合わないケースが多い。

 

5:地方EC 農産物、果樹等、一年を通じて販売できるものが無い。

→ 旬の時期だけガツンと販売して利益を得る為には、1年を通じてサイトの整備やSNSでの情報発信等が必要だが、なかなか実現できていない。仕入れ商品販売の小売店等、仕入れ力の弱さによる機会損失と仕入れ条件的な障壁による問題もある。

 

6:地方企業は首都圏にマメに出向いて、人脈を作るという術を知らない。

→ ベンダーや団体が主催するセミナーや勉強会、交流会等にマメに足を運び、情報収集や有効人脈を作る事を行わない。週代わりで変化していく、現在のEC業界のトレンドや有効な販促手法、アーリーECについての「本物の情報」が得られない。地方ECで成功している企業は、このあたりの感度が最高に高く、かつ凄くマメだったりします。

 

……つらつらと書きましたが、ここ1~2年の中での大きな動きとして、今までEC(BtoB・BtoC)を一切行ってこなかった地方の老舗企業や、事業承継を迎えた若手経営者によるECへの本格参入が増えてきています。

そして中小企業基盤整備機構主催のセミナーや、動画配信セミナー等の普及も確実に地方企業に良い影響を及ぼしていると思われますが、企業を守る地元銀行のECにおける理解力はかなり低く、EC運営における運転資金や設備導入資金調達について、地銀自体の理解力がまだまだ低い状態であり、かつシビアだったりもします。

 

地方にはまだまだ他の人の目に触れられていない逸品が沢山眠っています。

時間はかかるかも知れませんが、様々な障害をバランス良く乗り越え、地方企業がECを確実に活用することが出来、今まで以上に利益を生み出していける時代が来る事を切に願っています。

 

 

JECCICA理事・特別講師 小林 厚士

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地方拠点かつ海外事業部展開をしたEC企業経営で培ったマーケティングノウハウ及び実績を活かし、経営戦略的視点を重視した、現場最優先の実践的なアドバイスを得意とする。

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