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新たな方へ舵を切る「au PAY マーケット」に見るECの変容

身銭を切ってポイント放出するのとは違う視点で
「どこが売れるか」ではなく「どこの誰に売るか」。その視点こそがこれから大事になってきそうに思います。きっかけは、僕が取材を行った際のau コマース&ライフの代表取締役社長桑田祐二さんの言葉でした。開口一番「新たな方向へと舵を切ったのがよかった」。そう話して、ECの捉え方の違いを明らかにしました。

今までプラットフォーマーは身銭を切って、ポイントを放出することで、ECの売上を上げようとしていました。でも僕の個人的見解によれば、それは楽天に限られる戦略じゃないかと思っています。楽天の祖業がECにあり、カード利用の親和性が高いから、ポイント経済圏として、価値が生まれたのです。

桑田さんがいうのは、それとは違うということです。

彼曰く「au PAY マーケット」でいえば、au、UQ mobileの回線のお客様を経済圏全体で、どれだけエンゲージメントアップに貢献できるのか。

垂直統合型で自前で企業を作り上げて広げる
携帯電話は“継続”顧客で成立しており、彼らの財産なんです。だからそれらの携帯電話の利用者の「信用」をフックに、他のサービスの利用を促す。つまり、ポイント経済圏をむやみに拡大するのではありません。

他のサービスはというと、全てKDDIが自前で作り上げることを念頭に置いていて、幅を広げすぎず、「電気」「金融」など、生活への密着度の高いものを優先して、自前で1から作り上げています。
要するに、桑田さん曰く、これがバーチカル=垂直統合型のビジネス。自らで川上から川下まで行い、大きくなくとも、盤石にグループの裾野を広げていきます。

あとは、au、UQ mobileの回線のお客様を軸にして、自前で作り上げた企業に送り込み、それらの力を強化する。その強化された度合いは、ARPU(一人当たりの売上金額)となって現れ、通信利用者の継続の礎になります。

通信を起点にARPUをあげれば恩恵がさまざまなところへ
その顕著な例が、「auマネ活プラン」と「使い放題MAX5G/4G」のセット提案です。

利用数が70万件を突破して、解約率が25%改善。利用者のARPUが10%増加したのです。それらの親和性をより高めるために初めてPontaポイントがあるというわけです。自前のサービスが、自然に消費されますから、Pontaポイントが蓄積されているはずです。
そうするとECでの戦略は自ずと変わってきます。au PAY マーケット「ベストショップアワード2023」でその傾向が見られました。総合賞で一位が「お酒のビックボス」で、二位が「リカーBOSS」であり、共にお酒を扱う店なのです。
「元々、日頃、auを使い続けているという特性。そこから結果、お酒もその中で、日常的に買うというものとして認知され始めたのでしょう」。桑田さんはそう話しています。

通信とセットで生まれたことによる継続的な購入です。だから、両店舗とも、au スマートパスプレミアムの利用者を軸に、そのクーポンとの相性の良さを語ります。

また、お酒が優先して好まれたのは、それらの会員に発行されるクーポンの金額がちょうど、平均単価の10%OFF程度になる傾向が見られるからのようです。なおさら継続的な利用が通信とセットで行われます。

ローソンもまたその延長線上にある
ゆえに先日、三菱商事との間で「ローソン」を子会社化したのもうなづけます。ポイント経済圏というのではなく、人の生活の要、消費活動のインフラ部分を、自前で手がけようとする心がけの表れです。しっかり信用をフックに、通信のユーザーをそこに送り込む。だから、それを触発するために「au スマートパス」があるわけで、これをより強化するために、「Ponta パス」へリブランドしローソンを含めた特典を備えるとしています。

バーチカルな形でKDDIグループの体制を整え、そこで成果を上げる。そのアセットを最大化させるために、Pontaポイントで共通して使えるイメージを定着させれば、その利用も拍車がかかり、各々の企業自体の価値を底上げし、グループは最大化するわけです。

繰り返しますが、土台となっているのは、通信を起点とした継続的なユーザー。長年の信頼関係があるからこそ、利便性の向上としてのそれらの動きはプラスに働きます。信用が深いほど、ポイントの蓄積が多いから、ECにも還元されるのは上顧客ということになります。

それが根付けば、先ほどのお酒の店舗のように結果が生まれるようになります。ただ、なにも「au PAYマーケット」だけがいいと言っているわけではありません。

各社戦略がこれだけ異なるからこそ、顧客の質が変わって当然。そこに合わせて店がアプローチすることで、売上が盤石になるのではないかという話なのです。改めて「どこが売れるか」ではなく「どこの誰に売るか」の時代になっていきます。

今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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