人生100年時代 キャリア人材の働き方を考える
人生100年時代と言われています。職業を選択する自由と多様化された働き方は年齢や性別を問わず社会での活躍の場と自身に合った仕事を長く続けることが可能となってきています。また少子高齢化が進み、平均寿命が延び、ITの進化とワーク・ライフ・バランスの促進等によっても多様な人材と多様な働き方はより求められていると言えるでしょう。しかし物事はそう単純ではありません。健康な身体と知識とスキルは大前提でしょうが、そもそも労働意欲はあるのでしょうか。どのくらい何歳まで働きたいですか。またどのように働きたい、または働くべきなのでしょうか。それぞれ置かれている環境や事情もあるでしょうから一概には決められないですね。私個人としては自らの頭と体がクリアであるうちは働いていたいと思っています。確かに年齢とともに気力・体力の減退は否めませんが、そこは経験とさらなる学びとアイデアでカバーしていきたいところです。必要とされる場所で働き、その対価をいただき、そしてそれを消費するということです。可能な限り経済活動に参加し続けることを目指したいと思います。
幅広い年齢層で仕事をしている割合は増加している
内閣府『令和4年版高齢社会白書(全体版)』によると、
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就業率の推移を見ると、60~64歳、65~69歳、70~74歳、75歳以上では、10年前の平成23年の就業率と比較して、令和3年の就業率はそれぞれ14.4ポイント、14.1ポイント、9.8ポイント、2.1ポイント伸びている
男女別に就業状況を見ると、男性の場合、就業者の割合は、60~64歳で82.7%、65~69歳で60.4%となっており、60歳を過ぎても、多くの人が就業している。また、女性の就業者の割合は、60~64歳で60.6%、65~69歳で40.9%となっている。さらに、70~74歳では、男性の就業者の割合は41.1%、女性の就業者の割合は25.1%となっている
役員を除く雇用者のうち非正規の職員・従業員の比率を男女別に見ると、男性の場合、55~59歳で10.5%であるが、60~64歳で45.3%、65~69歳で67.8%と、60歳を境に大幅に上昇している。また、女性の場合も、55~59歳で59.1%、60~64歳で74.7%、65~69歳で83.9%となっており、男性と比較して上昇幅は小さいものの、60歳を境に非正規の職員・従業員の比率は上昇している
現在収入のある仕事をしている60歳以上の者については約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しており、70歳くらいまで又はそれ以上との回答と合計すれば、約9割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる
従業員31人以上の企業約16万社のうち、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%(16万4,033社)となっている。また、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は80.4%(13万2,014社)となっている
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実際働いている方も増えているし、働く意欲もある。環境も整いつつあるという状況に見えます。
必ずしも先人たちの真似はできないのですが…
明治・大正時代の実業家である渋沢栄一氏(1840年3月16日生)は、数え70歳で実業界からの引退を表明しましたが、その後は民間外交、教育、福祉、医療等に軸足を移し、数え77歳からは社会事業や道徳普及運動、民間外交に注力し、満91歳で亡くなりました。パナソニックホールディングスの創業者である松下幸之助氏(1894年11月27日生)は、66歳で社長を退任し会長に就任。80歳で現役を引退し相談役に就任。86歳の時に松下政経塾を設立しました。満96歳で亡くなりました。
前出のおふたりには比べようもありませんが、わが実父(1927年生)も60歳でそれまで勤めていた会社を定年退職した後も72歳まで再就職した会社でフルタイムで働いていました。若いころに患った喘息が悪化したので退職していただきましたが、それがなければいつまで働いていていたのでしょうか。いまでもとても残念ですが心から尊敬できる父親でした。とりあえず私の当面の目標は父を越えることです。まずは健康です。
定型作業はIT化される宿命
手作業は徐々に機械化されてきました。単純演算と情報の蓄積は徐々にコンピューター化されてきました。ルーティンワークや熟練技術も徐々にAI化されてきています。というわけでどんなに頑張っても定型作業部分はある程度IT化されていってしまう宿命だと思います。もちろんすべてではありません。どうしても人の手に残したいもの、残すべきものは残るでしょう。残したいですしね。それと一部教育的観点からも残るような気がしています。若い労働者向けの教育としての単純作業は残る可能性があります。あくまで教育的見地と経験を積ませるためで直接生産性には寄与しないと思われます。
ではキャリア人材はどうすべきなのか
若いうちに稼ぐだけ稼いで早期リタイアし悠々自適の老後を過ごすとか、老醜と言われないようにさっさと若手のためにポジションをあけて役職定年となる。なども潔い生き方なのかもしれません。人それぞれの生き方と働き方は自由に選択できるのです。
私はできうる限り社会と接点を持って生きていたいと考えています。多様な働き方の選択が可能となりつつある今、既存ビジネスのポジションは自らが育てた信頼できる後輩・部下に譲り、新しいビジネスの創造に注力することがこれからのキャリア人材、シニア人材の目指すところなのではないでしょうか。経験と実績こそ新規ビジネス創造の糧だと考えます。さらに経験を積むべく日々研鑽することと、新しいことに拒否反応を起こさず謙虚に学ぶ姿勢が大切です。
あなたはできそうですか。これから一緒に研鑽していきましょう。
JECCICA客員講師 和田 務
株式会社シーズファクト代表取締役社長 クライアントサイドに立ったITコンサルティングを経営、業務改善、物流といった幅広い視点から行い、企画から運用・保守まで全てのフェーズでのプロジェクト支援が可能。複数のITベンチャー企業の設立・経営に参画し、幅広い人脈を生かしての新規ビジネスの企画、アライアンス提案も行う。