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ザッピング考 デマンドと離脱

ペットボトルの日本茶を買おうと思い近所の自販機へ。自販機の前で小銭入れを見たら百円玉と50円玉が1枚づつ。ペットの日本茶は160円でその横にあるウーロン茶は150円。結局買ったのはウーロン茶でした。高い安いというよりは千円札で160円のお茶を買い840円のおつりで小銭入れが重くなるのが少し嫌だったからかも。あるいは小銭が減るのが“ちょっと”嬉しかったからかも知れません。

もしも和菓子やおにぎりなどを持っていて「日本茶じゃなきゃダメ」という“雰囲気”の状況であったなら、迷わず千円札を崩してやはり日本茶を買ったと思います。でもその時の笹本のデマンド(欲求)は「何か飲みたいな」「飲むなら日本茶かな」という“程度“のものだったのでしょう。

小銭入れの中にちょうど150円があったというほんのちょっとした理由/あるいは偶然で私のデマンドは覆(くつがえ)されたのですが、最初は”一応指名買い”の「つもり」でした。日本茶ならコカ〇―ラよりもサ〇トリーかキ〇ンの方が良いかなと思って一番近い赤い自販機ではなく20~30m先の色々なメーカーの飲料を売っている自販機の方に行ったのですが、結局そのあとは前述の通りの買い物をした次第。

この「ex.自販機で飲み物を買う」というリアルではありふれた購買行動にもECに活かせるヒントがいろいろと隠れている様に思います。

例えば前述の例をECに置き換えて考えるならば検索キーワードは“日本茶”であったはずです。カテゴリステップならば 飲料>日本茶の順にクリック/タップして行ったと思います。ウーロン茶ではなく日本茶。わざわざ少し遠い方の自販機に行ったのですから。でも結果としてはウーロン茶を買ったのです。ここに留意すべき重要なヒントがあるかも知れません。この例で言えば わざわざ20~30m先の自販機まで行かせた「指名買いキーワード」=日本茶も実は本当のデマンドを表しているものではなかったと言えるのではないでしょうか。指名買いキーワードを持って来訪されたユーザーにも関わらず、ユーザー自身も「(まだ)本当のデマンドに気づいていない」場合もありえるということにもなります。

この際のデマンドと購買行動を正しく把握するためには細かなブレイクダウンが必要になってくると思います。前述の笹本のケースでデマンドを正しくブレイクダウンするならば、(主)「何か飲みたいな」(副)「飲むならお茶かな」が“本当の”デマンドであったと思います。そして本当のデマンドには本人も気づかない段階で「とりあえず“副“のデマンドをキーワードにして」行動を起こした=自販機を選ぶ/あるいは検索/あるいは商品カテゴリの選択/あるいはショップの選択・・・etc.をした ということになるのでしょう。でも 持っている小銭 という小さな「きっかけ」が本当の(主)のデマンドを呼び起こし、この例の場合には日本茶は販売機会を逸した/ウーロン茶は販売機会を獲得したということになるかと思います。

加えて申し上げれば、自販機にお金を入れた後で「何を買うか迷っている人」を見たことはないでしょうか。あるいはスーパーやコンビニで「食事は何にしようか」とあれこれ見回っている人を見たことはないでしょうか。あるいは洋服屋さんでどれがいいか選ぼうとしている人を見たことはないでしょうか。見たことがないというよりも【 大多数の人 】がこの様な購買行動のステップを踏んでいるかと思います。

つまり大多数の人のデマンドを正確にブレイクダウンするならば「何かex食べたい/飲みたい・・・etc.」がデマンドであり、この段階では銘柄品番はおろか商品ジャンルまで決まっていないということになるかと思います。そして例えばex.昼食を買いにコンビニに入店したお客様は「ex.定食屋じゃなくてもいいや」程度の(副)デマンドを“一応のキーワード”=一応の行動のトリガーとして「とりあえず」コンビニに入店するという購買行動の第一ステップを踏んだと言えるかと思うのです。

絶対必ずコンビニで昼食に〇〇を買うという堅い決心の上でコンビニに来店したお客様は少数派のはず。もちろん習慣的に買っている新聞・雑誌やたばこなど銘柄指定の「完全指名買い」もあるのですが、完全指名買いのお客様であれば「店内を見て回る/商品選択に迷う」必要はないのではないでしょうか。(主)デマンドでのキーワード=行動のトリガーと(副)デマンドでのキーワードでは購買行動が決定的に違うのです。コレ、かなり重要なお題だと思っています。特にECプレイヤーが見過ごしている部分がコレかもとも思うぐらいです。

ECに置き換えて考えてみましょう。昼食を買おうとコンビニであれこれ見て回っている“ユーザー”も日本茶を買おうと少し遠い自販機に向かった笹本もそれぞれコンビニ/日本茶という「一応の指名買いキーワード」=行動のトリガーを持っていました。しかしながら購買行動は全く異なります。従ってクロージング方法もそれぞれ異なるはずです。

ちなみに完全指名買いのデマンドに対してはECは大変親和性が高いと思っています。ex.どの店でも同じ価格で販売されている書籍やドラックストア関連商品あるいは芸能人がTVでオススメした〇〇などのケースでは、「本のタイトルや商品名」で検索してそのままお買い上げという形となり売り手としても購買行動が想定しやすいお客様です。売り手の方から見た差別化の論点は商品選択から決済までのUIやポイント付与の他、物流などに限られてくるかと思います。また完全指名買いのお客様に対しては、「リッチコンテンツは不要」です。完全指名買いなのですから、既にお客様は「その商品を知っている」わけです。リッチコンテンツに要するスペースは他社より優位性を持つex.物流の訴求やUIの向上あるいは完全指名買い商品をシーズとしたついで買いの促進に使った方が効果的とも思います。もう少し言えば、商品画像でさえテキトーでも構わないとも思います。

仮に多少画質が悪くても いつも買ってるこの商品/TVでやってたあの商品 ということさえ分かればよいのですし。アマゾンさんや今は楽天さんとなったケンコーコムさんなどは将に構造的にも完全指名買いに的確に対応している好例と言えるでしょう。

ここで少し考えて頂きたいのですが、アクセスログなどの分析の際に重要な指針となる流入キーワードやサイト内の閲覧ステップでクリック・タッピングされた「カテゴリ名」などを「そのまま鵜呑みにして」 またその全てを「完全指名買い」の(主)デマンドが表現されたものとして、これを前提として次なる施策を導き出そうとしていないでしょうか。

たとえばSEMであればコンバージョンキーワードの方に分類した指名買いキーワードの中に揺れ動きやすい(副)デマンドが表現された「一応の指名買いキーワード」が相当の割合で=コンビニで昼食を何にしようかなと商品を選んでいる人と同じぐらいの割合で含まれている可能性があることを全く想定していない様に思うのです。

「完全指名買いキーワード」で来訪したユーザーは価格やUIや物流などで決定的な違和感がない限り「原則としてはサイト離脱はしない」はずだと笹本は思っています。コンビニでいつものスポーツ新聞を買う のごとく「どこで買っても価格は一緒」などの要因があればザッピングも有り得ないはずではないでしょうか。ネットショップ内の閲覧も「色々な商品を見て回る」ことはしないかと思います。他の商品と見比べる必要もないのですから。

たとえば新幹線の指定席を予約しようとしてJRのサイトに訪れたユーザーが簡単に離脱をするでしょうか。もちろん切符を少し安く売っているチケットショップの存在や希望の列車が満席、電波が途切れたなど様々なサイト離脱の理由はありますが、(主)デマンドがうつろいだわけではないと思うのです。そもそもで言えば、切符を安く買えるチケットショップや旅行社の存在を知っていてこれらのショップで買うことを選択したユーザーはJRのサイトに来訪しないと思います。もちろん「夏休みの切符、まだ予約できるかな」などの“ひとまずの確認”というケースの来訪者なども考えられますが、このケースはデマンドの分類的には「まだ購買デマンドをもっていない」来訪者と考えるべきと思っています。

(副)デマンドが表現された「一応の指名買いキーワード」で来訪されたかなりの割合のユーザーのデマンドはいつも揺れ動いています。同一のEx.ティファニーで検索して/カテゴリをクリック・タッピングして来訪したユーザーでもA・「プレゼントもらうならティファニーの〇〇がいいなっ♪」と言われた男性とB・「プレゼントするならやっぱりティファニーかなぁ・・・」と思って“とりあえずティファニーで探してみた男性。ユーザーが女性で自己消費型の場合は「絶対ティファニー」と「自分へのご褒美。やっぱりティファニーかな・・・」の差。Bさんの(主)デマンドは「贈ろうとしている人に喜んでもらう」で、ティファニーというキーワードはあくまで(副)です。商品としては花束でもいいし豪華な食事も選択肢の中に入るかも知れません。ザッピングそのものが/商品一覧ページからの離脱が/ある特定の商品ページからの離脱が/あるいはショップ内を見てまわった=商品を比較検討しようとした足跡が/etc.・・・(副)デマンドが表現されたキーワードで来訪した割合を推測させるもので、少なくとも完全指名買いではないことを指し示していることは確かだと思っています。

完全指名買いのAさんが離脱するとすれば、物流や決済などが同条件であればサイフと相談/他店との価格比較だけが理由かと・・・。今のところの笹本の仮説としてですがザッピングを含む離脱対策が進まない最大の要因は”ひとまずの確認“ユーザーの流入を別にすれば(副)デマンドと(主)デマンドを混同しているところにある様に思うのです。(副)デマンドの中に隠れた(主)デマンドに対応する方向性を見出せないままデータ分析などから有効な施策を考えても徒労に終わる確率が高い様にも思います。リッチコンテンツの中で(主)デマンドを直接満たすクロージングのコピーやステップは必須かと。

もう一つ自販機で笹本から(偶然にも?)販売機会を獲得したウーロン茶を考えると・・・この先はいずれまたの機会にっ♪

JECCICA特別講師

JECCICA特別講師 笹本 克

全国各地で有名ネットショップを輩出。自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務め、DeNA、Yahoo!Japanショッピング事業部へのレクチャー、ドリームゲート起業講座の他、コンサルサイトの累計約600社、多業種でのコンサル実績も豊富。


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