ウォルマートの最新動向
昨年のウォルマートのアメリカにおける小売Eコマースの売り上げは660億ドルを超えたと予測されていますが、Amazonの約4,020億ドルと比較しますと、まだ16パーセント強の割合でしかありません。その背景において、かつては小売業者という位置付けで見られていたウォルマートは、現在はテクノロジーとサービスに軸足を移し、Amazonに追いつくためのさまざまな戦略を採用しています。
その一つが、月額12.95ドルの有料制メンバーシップのWalmart+です。下のグラフは、アメリカの成人が小売における有料制メンバーシップの利用割合を示したものですが、2022年12月の時点で、回答者の23パーセントがWalmart+に加入しており、これは2022年6月の11パーセントから倍以上の増加となっています。Walmart+は、食料品等は店舗と同じ価格設定かつ35ドル以上の購入で送料無料、通常商品は注文価格に関わらず送料無料、その他にキャッシュバックロイヤルティプログラム、特定のガソリンスタンドでのガソリン割引、ストリーミングビデオのParamount+とのパートナーシップ、メンバー向け特別価格やオファーなど、多くのサービスとインセンティブをバンドルしている点が消費者から好感されているのだと考えられます。事実、18歳から34歳までの年齢層では、実に43パーセントがWalmart+のメンバーとなっています。一方、同様のメンバーシップでありますAmazon Primeは、全体で6月の62パーセントから12月には60パーセントへと減少しています。
さらに、全体的にAmazonが突出して見えますが、ウォルマートグループのSam’s Clubと Walmart+の双方の合計をウォルマートとして見た場合、男性および18-34歳ではウォルマートがAmazon Primeを上回っています。また、ウォルマートは、顧客を惹きつけ維持するための創造的なアプローチにも目を向けており、自宅での返品受け取りサービスをすでに発表していますが、これが軌道に乗れば利便性の点でAmazonより優位に立つ可能性が高いと考えられます。
他にも、ウォルマートは今年1月初めに、GoLocal配送サービスと店舗アシストのローカルフルフィルメントアプリをSalesforceのクライアントが利用できるようにし、サービスとしての小売を拡大することを発表しました。小売業がデジタルとEコマースによる変革を続ける中、ウォルマートは満足のいく顧客体験を推進するローカルの力を活用しようとしています。2021年夏にサービスを開始したGoLocal配送サービスは、ウォルマートのクライアント企業が期待するスピードとサービスを備えたローカル配達を顧客に提供したいと考えている企業向けの”Delivery as a Service”タイプの配達サービスです。自動車部品からアパレル、食料品から一般的な商品、特大の商品まで、エクスプレス、スケジュール、同日/翌日など、さまざまな配送オプションを可能にし、クライアント企業の最適なビジネスオペレーションに合わせることが可能となっています。効率性を見つけ、配達範囲を改善し、配達コストを削減しようとしている大企業、あるいは配達インフラストラクチャーを構築して拡大しようとしている中小企業など、クライアントがローカル配達を通じて自社の顧客に到達できるよう支援することに重点が置かれています。そのプロセスは、(1) 消費者は、クライアント企業が所有するコマースチャネルを通じて注文、(2) ウォルマートがクライアント企業から配送依頼を受領、(3) ドライバーがクライアント企業の指定場所で注文商品を受け取る、(4) ドライバーが消費者への配達を完了、となっております。
GoLocalを使用しますと、企業は配達のスピードと効率をウォルマートに任せながら、最も得意なことに集中できるようになります。日曜大工用品などで有名なHome Depotは、GoLocalの最初の小売クライアントで、全国の約300店舗にてGoLocalによる配達を行なっています。GoLocalは顧客ベースを拡大し続け、2022年5月にはアメリカ国内1,600の小売店および事業所から配達を行い、昨年末には5,000ヶ所まで拡大予定となっています。そのカバー範囲は、大都市のみならず農村部も含まれ、1年で100万件以上の配送がGoLocalを通じて完了しています。
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。