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UIとマニュアル ・・・ LEGOに学ぶ・・・

今年の4月に小学1年生となった甥っ子は就学前にLEGOニンジャゴーの戦闘機を一人でマニュアルを見ながら組み立ててしまいました。就学前なので、ひらがなとカタカナは一通り読めるけどそれぞれきちんと文字が書けるかと言えばまだそこまでには至っておらず・・・という程度の日本語力だったかと思います。考えてみればレゴは元々が子供向けのブロック玩具であり、子供が組み立てられるのがアタリマエ。もしも子供がニンジャゴーの戦闘機を組み立てられなかったらお客様の満足度としては会社のブランドに傷がつくほどの厳しい評価になってしまうはずです。したがって、未就学児と言えども前述の「組み立てて“しまいました”」は少し大げさではないかとのご指摘があったとしても不思議ではないのですが・・・。笹本としては~“しまいました”は適切な表現だと思っています。

LEGOに学ぶ

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この戦闘機はレゴのブロックを組み立てて作るとは言え、ロケット砲も発射できるし“変身”もできるという具合に沢山の可動部を持ち、パーツの“種類”だけでも200種類弱。可動部が多いためココを先に組み立ててから次にソコをくっつけるごとくの“手順の錯誤を許さないステップ”も少なからず。これを組み立てるためのマニュアルは138ページあり、140ページ目が裏表紙となります。こんなスゴイものを就学前の子供に手順を追って理解させ、戦闘機を作らせてしまうことができるマニュアルです。外箱を見ると「3歳以下には不向き」という意味を「表していると思われるマーク」がついています。つまりレゴさんは200種弱のパーツを使っての140ページに及ぶ組み立て手順を「世界中の4歳児」に理解させる自信アリって言っているわけです。
とすれば6歳の甥っ子が組み立てられるのはアタリマエであり、レゴさんからすれば組み立てられる様に設計したのだから我が社の顧客のボリュームゾーン=就学前6歳のユーザーが一人で作れないはずがない。というところでしょうか。

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ちなみに外箱には31か国語で注意表示が載っています。英語だけでも対応国は英米加豪・・・となるので将に世界中の国々で販売されているのでしょう。日本語での表示は「警告!小部品があります。誤飲窒息の危険があります。」となっています。同じ内容が31か国語で記されているのですが、内包する危険を知らせるには文字の方が正確に伝わります。またこの注意表示は、各国の製造物責任法など法律や罰則を伴う制度などにおいて“表示義務”があると推察します。
ただし31ヵ国語で対応しているコンテンツは外箱からマニュアルまで含めて「誤飲の警告」だけです。他にLEGO専用サイトで見られる動画の題名やレゴのオンラインマニュアルへ誘導するためのQRコードの脇に主要(?)9か国語でごく簡単な説明がされているだけで、残りのコンテンツ=マニュアルの主目的である「組み立て方に関する全てのコンテンツ」は「文字言語に頼らない正確な説明」なのです。イラストと数字だけで構成されているにも関わらず大変正確なマニュアルであり、かつ一部の宣伝機能まで持たせています。このマニュアルの中には「スマホかパッドでこのQRコードを撮ると、レゴのサイトでニンジャゴーの動画が見られるようになる」ということが、まだ母国語でさえも充分には習得できていない世界中の4歳児にも理解してもらうことができるイラストコンテンツまでがあるのです。

「世界中の4歳児」について改めて補足しておきますねっ♪。何語を使っているユーザーかに関わらず理解してもらえるということであり、31か国語=数十か国の4歳児に対して「同一のマニュアル」が通用するということであり、個人差や各国の文化などにより大きく異なるかと思いますが、一般的には「時系列を追った整合性のある説明」が自分でできるまでには至っていないのが4歳児かと思います。
もちろん4歳児にECサイトで何かを買ってもらおうとしているわけではないのですが、レゴ社のマニュアル設計思想やページレイアウトにはECに即応用できる多くのヒミツが潜んでいると思います。一見するとデッドスペースが大変多い様にも思えるのです。でもex.今まで半ページの大きさで説明してきたものを倍の1ページの大きさで見せたのは何等かの理由があるのではないかと・・・。

LEGOに学ぶ

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例えば笹本が気付いたヒミツその1は、いきなりパーツを組み立てる工程に入るのではなく、まず初めに「今から始まる組み立て方の説明は ここの部分のこういう完成形を目指しています。」という趣旨のイラストを見せてから個々のパーツの組み立て方が始まるという形式が徹底されていることです。人は目標が見えないと挫折してしまうかも知れません。この場合の挫折とはレゴさんで言えば、組み立ての中断=大切なユーザーが組み立て完成という喜びを得ずに諦めてしまうことであり、これはユーザーエクスペリエンス)の劣化と同義でもあります。ECサイトであれば離脱ということになるのではないでしょうか。

とすれば、「まずは目指す完成形を見せる」ことがいかに大切であるかに気づかされます。このマニュアルにおいての「完成形」とはこれからニンジャゴー戦闘機を組み立てようとしているユーザー共通の喜び/目標であると同時に、組み立てるという面倒な作業を継続させるモチベーションの源でもある様です。さらにしつこく申し上げれば、少なくとも31ヵ国語に及ぶ世界中のユーザーに通用したコンテンツであろうし、138ページにも及ぶ組み立て工程にも関わらず、未就学児世代のユーザーをも挫折させずに最後まで工程を完了「させられるまでのパワー」を持つキラーコンテンツの可能性が高いと感じています。

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ちなみに「~させられるまでのパワー」という一文を見て、カゴ落ちの改善などをイメージした読者の方はなかなか鋭いです。入力のしやすさを改善するだけではたどりつけない部分があるのは既にお気づきのはず。狭義UIの改善という発想は現在障害となっている事象をとりのぞくことで中断や離脱を軽減させるであって、入力完了を推進するのとは趣旨が異なります。自転車に空気を入れて油をさして走りやすくすることとペダルを強く踏むとの違いはご理解頂けるかと思います。
その先の具体策はナイショにしておきますが、「お届け先住所の入力などがエラーもなくメデタク完了する」こと自体に喜びを感じるユーザーは皆無でしょう。であれば、それぞれのECサイトにおいてお客様に訴求する必要がある“完成形”がどのようなものに相当するのか是非考えて頂ければと思います。

LEGO社が世界中のお客様に対応するための方策として選択したものはコンテンツの「多言語化」ではなく、「脱言語化」と言えるのではないでしょうか。実はチャップリンの映画やミスタービーンあるいはちびっこに人気の羊のショーンなど、映像と効果音などだけで様々な感情や事象を表現しているコンテンツも意外とたくさんある様に思います。笹本は「コンテンツの脱言語化」がECにおいても相当に重要なテーマになってくると考えています。もちろん業種や商品特性などでの適不適は出てくると思うのですが、真剣に検討すべき課題ではないでしょうか。まず、多言語化はキリがありません。販売対象地域が増える度に全商品あるいはサービスについて正しい翻訳が必要となります。これに対しLEGO社の脱言語マニュアルは31ヵ国語に及ぶ世界中のユーザーに対して、全く同一のマニュアルがそのまま機能しているのです。えっ?「ウチは越境ECをやるつもりないし」って?ご心配には及びません。主眼を国内ECに向けたとしても同じことを申し上げたいと思います。

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LEGO社の脱言語化されたマニュアル=コンテンツはまだ文字が充分には読めない4歳児でも理解ができました。とすれば、たとえば長文の読解力などが衰えてきたご年配から見ても、やはり理解しやすいコンテンツになるのではないかと・・・。日本の個人資産の7割以上を持っているご年配からみても、やはり理解しやすいコンテンツになるのではないかと・・・。運転免許の返上でネット以外での買い物がとてもしづらくなったご年配からみてもやはり理解しやすいコンテンツになるのではないかと・・・。
たぶんこの辺りを真剣に対応しない限りは電子決済の普及なんてありえないと思いますし・・・。アプリごとに異なる決済画面の立ち上げ方なんて覚えてないし。ユーザーがレジ待ちの列に並んでいる内にアプリの決済画面を立ち上げられなかったら、その決済がコンビニ等で使われるハズがないわけで・・・。読まないし書かないと言われる現在の10代~20代も何年か後には彼らこそが(ウチの)主力購買層となるかと思いますが、この際に長文のリッチコンテンツを介してのリーチという、今現在多様されている形がどこまで通用するのかも疑問なのです。他にも例えばザッピングへ対応のヒントになる可能性も・・・。ザッピング=少なくとも「読解はしていない状態」なので、言語コンテンツで対応できるはずがないかと思っています。

注意喚起のための警告表示は脱言語化を進めた中でも、それでも文字言語でユーザーに伝える必要があった訴求項目と言えますが、「警告!小部品があります。誤飲窒息の危険があります。」この表現も相当に練り上げられていると感じています。
コンテンツの意図や必要性を深く考えずに普通の日本人がライティングをするとすれば、「本製品には多くの小さな部品があり、万が一小さなお子様が誤って口に入れてしまいのどに詰まらせてしまう危険性がございます。充分にご注意下さい。」ぐらいになるかと思います。しかしよく考えてみれば警告表示は子供の安全を強く図るべくのもの。コンテンツの意図をきちんと考えれば丁寧な言い回しは不要であり、簡潔明瞭にして内在する危険に対して強く認識させることまで表現を考察して初めてLEGOさんの警告コピーが生み出されたと思うのです。
LEGOの組み立てマニュアルを見ずしてUIを語る莫れ。

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JECCICA特別講師

JECCICA特別講師 笹本 克

全国各地で有名ネットショップを輩出。自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務め、DeNA、Yahoo!Japanショッピング事業部へのレクチャー、ドリームゲート起業講座の他、コンサルサイトの累計約600社、多業種でのコンサル実績も豊富。


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