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訪日客を「固定客(リピーター)」にしていくために

百貨店の復活とインバウンド
2024年の全国百貨店売上高は5兆7722億円、既存店ベースでは前年比6.8%の増、前年越えは4年連続で2019年比でも3.6%増となり、コロナ禍以降初めて通年でコロナ禍前を上回りました(日本百貨店協会発表より)。

同じくショッピングセンター(SC)の売上高は推定32兆1,254億円(日本SC協会発表より)で、過去最高の売上だった2018年(32兆6,595億円)に届きそうな勢いですが、既存店ベースでは百貨店にわずかに及ばず前年比5.8%の増となっています。

コロナ禍以前より「冬の時代」と言われて久しかった百貨店。人口の減少や二極化の進行による中間層の減少、イーコマースの急拡大など要因は様々ですが、1991年の9.7兆円をピークに売上は年々減少を続け、さらに追い打ちをかけるようにコロナ禍によって2020年の1年で1.2兆円もの売上が消失。小売業界においてコロナ禍からの復活が最も遅れていたと言われる百貨店。「本当にこの先どうなってしまうのだろう」といった不安がますます強まりました。

しかし、2022年10月からスタートした全国旅行支援や、水際対策の大幅緩和、揺り戻し消費などにより売上は上昇トレンドに移り、また2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行されたこともあり、国内顧客は富裕層消費が牽引するという形で着実な回復を見せ、また急速な円安も後押しする中、高額品消費を中心とするインバウンドが月を追うごとに加速。為替や地政学的な要素に大きく左右されるインバウンドは事業者側が操作できるようなものではないものの、それにしても、このような復活ストーリーを当時から予見していた方は決して多くなかったことと思います。

百貨店の好調をけん引している一番の要因はもちろん「インバウンド」で、2024年の免税売上高は実に前年比85.9%増の6,487億円、2年連続で過去最高額を更新し、訪日客によるラグジュアリーブランドや時計・宝飾といった高額商品の消費が売上を押し上げています。売上に占める海外からのお客様の割合が4割(!)を超える店舗も出てきています。

もう一つは外商。資産志向・高級志向が国内富裕層の消費を押し上げ、外商の割合は伸びています。また、パワーカップル・パワーファミリー、若年富裕層=30代~40代の外商顧客も増えてきています。

ただ、すべての百貨店でそうかといわれるとそんなことはなく、地場の中間層に支えられてきた地方・郊外の百貨店と、富裕層の顧客基盤を持ちインバウンドの割合も高い大都市の百貨店とではその明暗が明らかで、その差はコロナ以前より明確になったといえます。

訪日客は地方・郊外にも流れてはいるものの、観光はしても、あまり買い物にはつながっていない。地方・郊外の中間層は行き過ぎた円安による物価高に苦しんでいて、また人口も減ってきています。

受け身のインバウンドからの脱却
インバウンド=訪日客というと、一見さんのイメージが強いかもしれませんが、日本に5・6回以上来たことがあるお客様や、1年のうちに複数回来日・来店されるお客様も見られ、日本で買い物をする経験値は非常に上がってきているといえます。国内富裕層と同等、またはそれ以上に高額なお買い物をされるお客様も少なくありません。

訪日客に向け、情報発信を強化したり、買い物の利便性を高めたり、品揃えを充実させたり、顧客基盤の構築やCRMを検討したりという対応は今後ますます必要になってくるでしょう。

為替レートが変動すると、それに合わせてインバウンドの客単価も大きく変動します。そうした為替や地政学といった外部環境に左右される受け身の状態から、訪日客を「固定客(リピーター)」にしていくために、自分たちから仕掛けていけるようになることが理想といえるでしょう。

<SNSの活用>
すでにInstagramなどのSNSを上手に活用し、訪日客の誘客に力を入れている事業者さんも多いと思います。情報発信として、また海外のお客様との緩やかかつ継続的な繋がりつくりとして、大変有効であるのは間違いないでしょう。
TikTokやYouTubeなどでの動画コンテンツの配信もよいでしょう。視聴者の8~9割が海外、特に東南アジアの方々といった事例も出てきています。

<Google Mapの活用>
特に旅中においてGoogle Mapの重要度は高く、Google Mapをナビゲーションツールとして用い、口コミやユーザーレビューを参考にしてお店選びをされるお客様が非常に多いです。Google Mapをしっかりメンテナンスし、活用することが重要です。

<Webサイトの多言語対応>
基本になりますが、Webサイトの情報の外国語対応は必須といえるでしょう。英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語・タイ語など、来店されるお客様の多い国・地域の言語には必ず対応させましょう。

<アプリの多言語対応>
自社・自店のスマホアプリを多言語対応させるのも手です。主にお買い物をされる際にダウンロードいただき、ポイントやクーポンなど、お買い上げや再来店のきっかけつくりに利用できます。
また、中国からのお客様が多い場合、Alipayミニプログラムで同様の施策を行うのも効果がありそうです。

<CRMツールの導入>
来店いただいた訪日客に対し、店を離れた後もアクセス可能にし、帰国後も自社・自店の情報や(越境)ECの情報を届けられるようにする。また、登録情報やアンケートなどを通じて、訪日客の属性を把握し、マーケティングできるようにするためには、顧客基盤を構築したりCRMツールを導入したりするのがよいでしょう。

例えば、店頭での特別サービス(クーポンやノベルティ、優先入場など)と引き換えの形で、二次元バーコード読み取りや専用タブレットから多言語対応した登録フォームにアクセスいただき、お客様の承諾のもと、メールアドレス(やその他ご希望の連絡手段)を登録いただくようなイメージです。

上述のSNS活用を情報発信やファンマーケとすれば、こちらはコンタクト情報取得・ID顧客化の施策といえるでしょう。

実は何度も来店・お買い上げいただいているにも関わらず毎回一見さんで終わってしまう訪日客のID顧客化が実現でき、さらには、登録情報やアンケートから得られる属性情報、購買情報や利用店舗などと紐付けたりできれば、国内のお客様にしているのと近しいレベルでマーケティングを実施することも可能になります。

自社・自店が越境ECの機能を持ち合わせているのであれば、お客様の帰国後も継続して購入いただく後押しもできるでしょう。

政府は観光立国を目指していて、インバウンド・訪日消費は今後も右肩上がりが続くものと予想されます。が、先にも書いたとおり、為替や地政学的な要素に大きく左右されるため、事業者がアクセルを調整できるものではありません。

いまのうちに、訪日客を「固定客(リピーター)」にしていくために、自分たちから仕掛けていけるよう準備を進めましょう。

JECCICA特別講師

JECCICA特別講師 唐笠 亮

株式会社パルコデジタルマーケティングのコンサルタント。数々の専門店・ショッピングセンター等を背景とした大規模ECの構築やシステム連携のプロジェクトマネージャーを務める。


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