成功するEコマースコンサルタントとは?
JECCICA代表理事・講師 川連 一豊
10年前、私がネットショップ店長からEコマースコンサルタントになった時のことです。
特にEコマースコンサルタントになりたくてなったわけではないのですが、他のネットショップ店長さんから「ぜひコンサルを受けて欲しい!」と熱烈な依頼があって、それからやったことも無いEコマースコンサルタント生活が始まりました。
その時、困ったことが3つありました。
1つ目は、ネットショップの最新情報が入らないことです。
今までは自分のお店がありましたからいろんな実験やテストを行うことができました。7万人ぐらいのお客様がいらっしゃいましたのでテストをすれば必ずいろんな結果やプロセスの情報が得られていました。
それがまったくできないのです。
他のネットショップに依頼しても忙しくてなかなかやってくれない、間違ったテストを実施して時間を食うことも多々あり、最新情報がまったく入らない状態がしばらく続きました。
2つ目は、相談する相手がいないことです。
10年前に独立系Eコマースコンサルタントはほぼ数人しかいませんでした。当然、競合になりますから情報交換なんてとんでもない状態です。独立したばかりで相談相手がいないというのは非常に困ります。
税理士や弁護士に聞いてもチンプンカンプンで(当たり前ですが…)途方に暮れていました。
3つ目は、Eコマースコンサルタントはネットショップを持つことができません。
正確に言えば、お客様と競合になってしまうため、得意分野の商品仕入れや商品企画ができないのです。ネットショップは小売業ですから商品が入らなければ売ることもができません。
商品企画ができなければ新商品を出すことができません。メーカーや問屋さんにネットショップをやりたいので仕入れたい旨を伝えても、Eコマースコンサルタントなんて職業聞いたこともありませんから、相手にしてもらえません。
楽天に出店しようとして出店希望を出しても何度もNGになり、結果的に出店までに5年もかかりました。
しかし、ネットショップを出店しても自分のお客様と同じような商品、同じ業界の商品を扱うことはご法度です。
自分の得意分野の商品を扱ってネットショップを展開するのが売上利益アップの早道ですが、その得意分野のECコンサルを行えば、お客様から当然「?」が付きます。
結果的に自分のネットショップを持つことがなかなかできないのです。
この3つの困った理由で、Eコマースコンサルタントとしては非常に厳しいスタートとなりました。
今はJECCICAがありますから相談相手もいますし、最新情報もJECCICAのセミナーや懇親会に出ることで仲間同士の情報交換ができます。Eコマースコンサルタントと言う特集な職業とはいえ世の中から求められているのは間違いありません。
しかし、業界としては非常に弱い体質と言っていいでしょう。
そういう意味でもJECCICAはEコマースコンサルタント業界の基礎づくりをしていると言えます。
私は今まで約50名のEコマースコンサルタントを輩出してきたのですが、成功している人も失敗している人もいます。
失敗している人の共通点は、「仲間や第3者ととにかく戦う」や「人の話を聞かない」の2つが挙げられます。この両方の要因とも、コンサルタントとしての職業意識が強すぎるのかなと感じています。
コンサルなのだからと言う意識が強すぎて、いろいろ言い過ぎるのです。それが仲間や第3者に対してもコンサルを始めてしまうのです。
そうすると仲間も最初は「しょうがないやつだな。」と思っていても、お酒を飲んでもご飯を食べていても、ついついあれこれアドバイスを始めてしまうのです。
それはイヤですよね…。
このどこでもコンサルをしてしまう方はとにかく話すことが好きなので、「人の話を聞かない」ことになってしまいます。お客様は悩みを聞いて欲しいのに、すぐにいろいろアドバイスを始めてしまい、お客様はストレスを貯めてしまい、最悪解約になることも多いです。
コンサルの大事な業務としてお客様とTODOを作っていくことが挙げられます。
このTODOが120%以上満載になってしまうことがあります。あれもやらなければこれもやらなければ…となってしまい、お客様もEコマースコンサルタント側も業務で回らない、何が重要で緊急なのかわからなくなってしまうことが多くなります。
優秀なEコマースコンサルタントは「やらないこと」を決めていきます。
何が一番重要なのか、緊急なのか?を見極め、ネットショップにとって一番いい施策を決めていくのです。
実は、これがなかなかできないのです。
やらないことを決めるというのはかなりのプレッシャーがかかります。
だって、それがとても重要な事だったとしたら大変なことですよね。
しかし、誰でも1日24時間しかありませんし、人的リソースも資金的にも限界があります。とにかくやることを「スピード!スピード!スピード!でやる!」だけではそれは無理というものです。
この結果、どういうことが起こるかというと、売上・利益が上がらなくなります。無理やりいろんな施策をやっていますから、売上は上がるのですが続かなくなります。
こうなるとネットショップ側から「売上上がらなければこちらの要望通りバナーとかメルマガ作って!」と言われるようになるのです。
こうなると悪循環でいつのまにかネットショップ側の言われるまま作業をするようになっていきます。ネットショップ側から指示がないと何もしない、アドバイスもしない、言われるままやればいいや…みたいな流れになります。
当然、売上・利益は上がらなくなります。これが大きく失敗する要因になるのです。
失敗する事例もJECCICAの理事や講師はいっぱい持っています。
失敗はノウハウです。
そのノウハウを共有することで、魅力あるEコマースコンサルタントにいち早くなることができます。ただ、そんな簡単に自分の失敗事例を話してくれません。話をしてもらうためには自分から失敗事例を話してどうすればと良かったのかを聞くことです。
JECCICA代表理事・講師 川連 一豊
フォースター株式会社代表取締役。年間システム流通額1700億円を超えるシステム開発やセキュリティ専門オムニチャネルのおもてなし戦略、米国やEU、アジアなどのクロスボーダーEコマースを進める。