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DPF透明化法の本質的な意義について感じること

2021年2月1日に施行された「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(以降DPF透明化法)をテーマとしたオンラインディスカッションが、経済産業省の方々を招いて6月17日に開催されました。私は本ディスカッションを最初から最後まで拝聴しました。一言では上手く表現できないのですが、とても有意義な内容であったと思います。本ディスカッションを拝聴後、この法律の本質的な意義とは何かについてあらためて自分なりに感じたことを、以下の通り文章でまとめてみました。

期待される間接的な効果
DPF透明化法は法律です。そもそも法律とは表出化・顕著化した課題に対する解決策の一つであります。したがってDPF透明化法の施行により直接的な課題解決という明確なプラス効果が当然ながら期待されます。

しかし、同法の適用がグレーゾーンな課題もあるでしょう。また例えば一部の業務プロセスが商品販売事業者にとって最適化されていないとかコミュニケーション上のちょっとしたすれ違いのような、同法の適用外の課題も多岐に亘るのではと想像します。

DPF透明化法は対象のプラットフォーマーにとってインパクトのある法律です。同法の施行は行政がプラットフォーマーに対し「身なりを正すように」と問いかけている気がしてなりません。よって同法による直接的な効果はもちろんのこと、グレーゾーンや同法の適用外の課題についても「プラットフォーマーとしてどう振舞うべきか」といった、間接的な自浄作用効果を期待したいと思います。

消費者に目にDPF透明化法はどう映るか
消費者から見れば、プラットフォーマーとその上で商品を販売する事業者は同じ仲間のように見えるかもしれません。しかしながらプラットフォーマーと商品販売事業者は必ずしも利害が一致するもの同士ではなく、時として利害が相反するもの同士であるということを、DPF透明化法は明白にしたと私は見ています。とすれば、同法が消費者の目にどのように映るのかが気になるところです。

同法では商品販売事業者のメリットに目が行きがちですが、消費者にとっての効果についても経済産業省は具体的に示しています(詳細は同省のサイトを検索ください)。消費者にとっての効果という話になると、行政的には消費者庁の所管なのかもしれませんが、DPF透明化法であれその他の法律であれいずれにせよ消費者をどのように守るのかといった目線も同時に忘れてはならないということを、同法の施行を通じて感じます。

「成長」と「成熟」が同時進行するEC市場で誕生した同法の意味合い
1974年のセブンイレブン1号店を皮切りに、それから45年後の2019年にコンビニの市場規模は12兆円でピークに達しました。一方ECですが、2020年の物販系BtoC-EC市場規模は約12兆円です(※共に出所は経済産業省)。楽天市場開設の1997年を起点とすれば、僅か23年でコンビニの市場規模と肩を並べたことになります。

しかしEC市場規模はまだ拡大の余地を残しています。これが意味することですが、EC市場は未だ成長過程にありながらも、その規模の大きさ故に成熟も同時に求められている市場だと私は捉えています。「成長」と「成熟」が同時進行する市場がかつて日本には存在していたでしょうか?そのような状況下でDPF透明化法が施行されました。本来的に成長過程期と成熟過程期では施行される法律の質は異なると思うのですが、そういう意味で、DPF透明化法が担う役割はとても大きいと感じています。

同法も数年後には内容が追加され改定DPF透明化法が成立することでしょう。ある意味特殊な市場環境下における試金石のような法律ではないかという気がしてなりません。

今後のシナリオから考える同法の重要性
データに基づく推計では楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングのGMVがEC市場規模全体に占める比率は約7割です。DPF透明化法の施行はこの占有率の高さに起因すると思われます。

今後の想定シナリオですが、大手企業によるD2C等の拡大により占有率が下がると想定した場合、プラットフォーマーを利用する商品販売事業者の特性としてより小規模の比率が高まるかもしれません。そうなれば同法の役割は依然重要性を維持します。そうではなく仮に占有率が現状と変化なし、あるいは更に高まると想定した場合も同法の重要性に変化はありません。

すなわち、いずれのシナリオにおいてもDPF透明化法が果たす役割の重要性は大きいということが明らかに言えると私は考えます。

「透明化」が意味すること
DPF透明化法の意義を突き詰めると、結局のところ「プラットフォーマーの役割とは何か」という本質論に行きつくのではないでしょうか。

裏を返せば、EC市場におけるプラットフォーマーのあるべき役割が不明瞭なまま、市場原理に基づいてEC市場がこれまでに形成されたと言えます。

同法の名称の一部に「透明化」という用語が含まれていますが、透明化を通じて本来的なあるべきプラットフォーマーの役割を明確化することが、ある意味同法の目指す最終ゴールではないかと思います。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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