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製造業も構造的に変化すべき時

売上の構成比率が変化している
最近、製造業の役割が変わってきていて、従来であれば、問屋に卸せば良かったのが、ネット通販をやらなければいけない動きが出ているからです。

先日、RoomClipの記者会見で、イケヒコという1886年創業の家具の製造業の話を聞いて、驚きました。この20年ほどで、売上構成が相当、変わっているのです。1997年には卸が3割以上は占めていたのが、2020年ではほぼ「ゼロ」という状態でした。

ちなみにRoomClipは住空間の写真を投稿して、シェアするコミュニティサイト。模様替えや引っ越しなどをする人たちには重宝されて、マーケティングの色彩を持つとともに、そこ自体がプロモーションの場になったわけです。

イケヒコはここを活用するうち、その家具を使う人たち同士が「ヒコラー」と呼びあうようになっていることに気づきました。それで自らのブランド価値を発掘し、ネット通販での売上に上手に繋げたのです。彼らはうまく転換できていますが、そういう企業ばかりではありません。

そこで、RoomClipは子会社に『KANADEMONO』というECサイトを運営するbydesignという会社を持っているので、一緒になってマーケティングから販売までの助言をして製造業のD2C化を行っていきたいと話しています。

社会の変化に製造業が追いつく事が急務
この動きはこの20年でネットが浸透したという事に加え、人口減や価値観の多様化に伴い、製造業に構造的な転換が求められている事を示すものだと思います。

プロモーション費を投入して、大量生産をかけて、問屋を通じて、街の小売店に販売してもらうのではありません。生産数を最初から抑えて、単価は上がるかも知れないですが、その付加価値を訴求して手堅く売る時代です。そうなると自ずとD2C企業の手法に学ぶことになり、それで利益率を確保し継続性の高い商売を行うことで、安定した基盤を作って自らの技術を守る、ということが大事になります。

この話は中小の製造業に限らないと思っています。大企業もそうで、ただ僕も問屋の仕事をしていた事があるのでわかるのですが、メーカーが直販をすることに対しては抵抗を感じます。

そういう時、僕が思うのが、物流拠点の活用を見直し、付加価値に変えられないかという事です。先日、物流に関する企業と話して、世の中にある倉庫の殆どがBtoB向けと言われて、なるほどと。

メーカー、問屋、小売の仕組みが構築されていれば、メーカーと問屋を繋ぐ倉庫、問屋と小売を繋ぐ倉庫という具合に、圧倒的にシェアが大きいのはBtoBになるわけです。

倉庫の固定概念を見直してみる
そこで、昨今のアパレル企業の動きに目を向けてみるのです。

今までは、そこで製造工場から倉庫に入れて、全国の店に配送するのと同様に、EC向けにも別途倉庫を用意し、そこに商品を送っていたわけです。しかし、EC向けの倉庫からの出荷の割合が大きくなってきたので、最初からBtoB向けの倉庫で、BtoCも対応するようになりました。

すると、その物流拠点がいつしか、リアルなお店に相当するラストワンマイルの顧客満足度を向上させる付加価値になっていったという話なのです。

何が言いたいのか。大きな製造業も、今までBtoBが当然だと思っていた倉庫を、BtoC向けに一部解放するとともに、そこで小売店にはない付加価値をつけて顧客満足度を高めて、ECの比率を上げればいいのではないかと思うわけです。

そうすれば、小売店の事を変に意識する事なく、彼らは小売店より高い価格で販売し、それ相応の付加価値をつけて、継続的に繋がる設計をしていくことができますよね。

お客様に今よりもっと満足度を
先日、新宿駅のNEWoManに行ったのですが、その理由は「ニューバランス」の新店舗がオープンしたからです。彼らは勿論、スポーツシューズのメーカーですが、敢えてここではライフスタイル提案をしているのです。

街中を見ればわかりますが、彼らはランニングシューズの縫製や素材などをスポーツに止めることなく、一般の人に広く使ってもらうことで、日常生活における快適な靴を提供して、市民権を得ています。

ただ多くは直営店でも、ランニングシューズと一緒に並べられて、販売されていたわけで、敢えて春に開店したそのお店はそこを排除して、日常の提案に特化させました。

店内には足のサイズを測り、また専門知識を持ったスタッフがいます。だから、スポーツで培った知見を日常に取り込んで、その毎日の快適な靴というベクトルをさらに強化して、そのブランド価値を高めているわけです。お客様と近い関係性をダイレクトに作ろうとする動きもより深くなっています。

時代の流れによって、製造業も事業の転換が必要とされており、製造業自体がECをやる必要性は高まってくるでしょう。そこで大事なのはダイレクトに繋がることで、ずっと寄り添う関係性です。製造業に未来はきっとある。僕はそう思います。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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