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業界別の考え方[ファッション編]

JECCICA理事・講師 松本 順士

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アパレルEC(E-Commerce:電子商取引)市場が高成長を遂げている。

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アパレル企業がECに取り組む意義は、売上成長と収益構造の改善にある。

リアル店舗と相乗効果を出すように、ネットとリアルをうまく掛け合いながら事業展開すれば、売上の伸びが期待できる。長期的には人件費や広告宣伝費などの費用削減も期待できる。

アパレルEC単身は、差別化が難しい、広告宣伝依存の集客、客層の拡大、検索の限界、買物体験の提供、衝動買いの誘発といった課題に直面している。今後、こうした課題がクリアされれば、アパレルECは新たな成長ステージに突入し、市場成長スピードが加速すると期待される。

 

ソリユーションとしては、ソーシャルコマース、サブスクリプション型(定期購入型)EC、O2O(Online-to-Offline)が有効であり、新たなビジネスモデルに取り組む企業の中から、次世代アパレルECの勝ち組企業が出てくると考える。

 

アパレルECの現状・類型化

アパレルEC市場が伸びている。

矢野経済研究所によると、市場規模は、2008年の4,142億円から2010年に4,652億円へ年率5.9%の成長を遂げており、2015年には9,500億円に達すると予想されている(図表1)。

図表1

 

アパレルの全流通チャネルの中でECが占める比率(EC化率)も着実に増え、2010年の2.6%から2015年には6.0%まで増加する予想である。

アパレルEC市場における売上上位10社のうち首位は、ファッションモール「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイであり、2011年3月期売上高は238億円(前年比38.7%増)である。次いで、ファーストリテイリング子会社で「ユニクロオンラインストア」を運営するユニクロ、ファッションビル運営の丸井グループが上位である。

こうした上位企業のビジネスモデルは同一でなく、いくつかのパターンが存在する。

業界首位のスタートトゥデイのビジネスモデルは図表3の通りであり、「ストア企画開発事業」「ストア運営管理事業」「自社EC支援事業」の各事業で異なる。

図表3

 

ストア企画開発事業は、メーカーから商品を買い取り、在庫を持ちながら自社で販売する「仕入販売」モデルである。

ストア運営管理事業は、定量の在庫を受託形式で預かり、販売に応じて受託販売手数料を得る「モール」モデルである。

サイト内に店舗スペースを提供するだけでなく、商品写真の撮影、共通の梱包材を使った発送も行い、その対価として上代の26%の販売委託手数料受け取る。自社EC支援事業は、メーカーのECサイトの開発・運用、および、物流を受託し、上代の20%前後の手数料を得るモデルである。

 

2011年3月期の取扱高571億円の内訳は、ストア企画開発事業116億円(構成比20.5%)、ストア運営管理事業412億円(同72.2%)、自社EC支援事業42億円(同7.3%)である。

ストア企画開発事業は取扱高を売上計上するが、ストア運営管理事業と自社EC支援事業では、メーカー・小売店から受け取った手数料を当社の売上として計上するため、売上ベースでは、ストア企画開発事業116億円(構成比48.7%)、ストア運営管理事業106億円(同44.5%)、自社EC支援事業10億円(同4.2%)である。

各事業の粗利率は、ストア企画開発事業が約40%、ストア運営管理事業と自社EC支援事業は100%である。

 

これら3事業は、商品在庫の持ち方や販売サイトの違いはあるものの、商品はすべてスタートトゥデイの物流センターに集約し、一括管理している。物流コストや管理コストを抑えつつ、規模のメリットを最大化できる仕組みを構築している。

 

楽天のビジネスモデルは、「楽天市場」内に各メーカー・小売店の仮想店舗を出店してもらうモールであり、出店者から上代の3.5〜〜6.5%+固定費2〜10万円/月を手数料として受け取る。

スタートトゥデイのストア運営管理事業に近いが、楽天の標準的なモデルでは、スター卜トゥデイのような写真撮影や物流受託は行わない。

 

Amazon.comのビジネスモデルは、自ら商品を仕入れて「Amazon.com」を通じて販売するモデル(通常モデル)が主力であり、スタートトゥデイのストア企画開発事業と同じである。

一部、楽天のようなモールも行っている。

 

業界3位の丸井グループや業界4位のマガシークは、アパレルメーカーから商品を仕入れて販売する仕入販売モデルであり、スタートトゥデイのストア企画開発事業と同じである。業界2位のユニクロや、10代女性やF1(20〜34歳女性)層向けにアパレルECを行っている夢展望は、自社製品を自社サイトで販売している。

(2014.3 掲載記事)

 

JECCICA理事・特別講師 松本 順士

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数々のECサイトを運営し、レディースアパレルブランド「GRL」を立ち上げ、4年で年商30億に成長させた実績をもつ。ECコンサルティング業務にて多くのクライアントを成功に導いている。

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