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透明化法について知る(第4回)

透明化法 は、特定のECモール(amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo!ショッピング)を利用して商品を販売する事業者(以下「事業者」といいます。)とECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)との取引関係(出店契約など)を、より透明で公正なものにするために、ECモール提供者に一定の義務を課している法律です。
本コラムでは、読者の皆さまのビジネスに関係する透明化法について、わかりやすくQ&A形式で解説させていただきます。今回は、主にECモール提供者が事業者との相互理解を促進するための体制整備について、よくある質問を交えてご説明します。
(過去のテーマ…第1回:透明化法について知るメリット・透明化法が規律している対象、第2回・第3回:ECモール提供者による情報開示)

Q 透明化法の基本理念である「相互理解の促進」とは、何を意味していますか?

A ECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)と事業者との間の取引環境を改善して事業者を保護するための方策には様々なものが考えられます。独占禁止法による優越的地位の濫用の禁止もその一つです。透明化法は、そのように法律で禁止されている行為以外の問題について、ECモール提供者と事業者が互いの事業に関する事情を理解し合いながら、取引関係について必要な改善が継続的に行われることを目指しています。これが透明化法の基本理念である「相互理解の促進」であると考えられます。

Q 透明化法がECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)による特定の行為を禁止する代わりに、相互理解を促進するという緩やかなアプローチをとっているのは、なぜですか?

A ECモールは、日本の経済社会の活力の向上や持続的発展にとって重要な役割を果たしているデジタルプラットフォームの一つです。透明化法は、そのようなECモールの創意と工夫が十分に発揮されるよう、規制を必要最小限とすることとしています。そこで、“ECモール提供者は〇〇をしてはならない”といった規制ではなく、相互理解を促進することによる問題解決を目指すというアプローチを採用しています。

その背景には、ECモールをめぐる関係者の利害関係がやや複雑であるという事情もあると考えられます。ECモール提供者は、事業者と同様に、自由競争の中で利益を獲得する存在です。その上で、ECモール提供者にとって、事業者は、料金を支払ってECモールを利用してくれるお客様(取引先)であり、共により魅力的なECモールを作っていくために欠かせないビジネスパートナーでもあります。したがって、事業者が利用したいと思うECモールをつくる必要があります。

他方で、ECモール提供者と事業者は、商品の販売において競争関係に立つ場面もあります。さらに、ECモールに消費者(買い手)を集めることも非常に重要であり、そのために消費者の利益を十分に考慮する必要があります。ECモール提供者はECモールのルールを設計していますが、消費者の利益になるルールが事業者の不利益になる場面もあります。他方で、ECモールにより多くの消費者が集まれば、そこで商品を販売する事業者にとってもビジネスチャンスは広がります。ECモールは、このような利害関係を考慮しながら運営する必要があります。したがって、事業者にとって不満があるルールについて、事業者にどの程度の不利益が生じているのか、ECモール提供者としてはどのような考えに基づいて当該ルールを定めているのか、といった事情を相互に理解することが解決への第一歩になると考えられます。

Q  ECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)は、事業者との相互理解を促進するために何をしていますか?

A 透明化法上の義務として、ECモール提供者は、事業者との取引関係における相互理解の促進を図るために必要な措置を講じなければなりません。その指標となる基本的な考え方や具体的な取組例は、経済産業大臣が定める指針 に定められています。概要としては、ルール変更の際に事業者の利益に配慮すること、一貫性・公平性のある判断がなされる仕組みを構築すること、事業者からの苦情を受け付ける窓口を設置すること、事業者からの意見をECモールの運営改善に役立てることなどが求められています。

実際にECモール提供者が行っている取組は、経済産業省が公表している各社の定期報告書 に一部記載されています。

参照URL
1.特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の工場に関する法律(2021年2月1日施行)を指します。
詳細は経済産業省のウェブページ(https://www.meti.go.jp/press/2022/10/20221003006/20221003006.html)をご参照ください。

2.ECモール提供者が事業者との間の取引関係における相互理解の促進を図るために講ずべき措置についての指針(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digitalplatform/03_guideline.pdf)をご参照ください。

3.令和3年定期報告書(概要)
(https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221222005/20221222005.html)、令和4年度定期報告書(抜粋)(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_p-latform_monitoring/2023_002.html)

JECCICA客員講師

弁護士 角田 美咲

長島・大野・常松法律事務所
2018年弁護士登録。企業のコンプライアンスや不祥事への対応を行っている。
経済産業省で透明化法の運用を担当(2021年4月~2022年12月)。


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