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ネットショップの教科書79

健全な経済成長継続のために
「コロナ禍でEC事業者の出来ること」

国内のEC事業売上拡大は、商品ジャンルにより大きく異なりますが、売り上げは数十%から数百%と軒並み拡大傾向にあります。「巣ごもり消費」のネットお取り寄せですが、海外でも巣ごもり消費は拡大しており、従来なら海外からの観光客によるインバウンド消費の恩恵を受けている処でしょうが、世界的なコロナ禍のため、日本を訪れる海外観光客によるインバウンド消費から越境EC需要拡大と形を変えているものと思います。
以下は三井住友カードの調査ですが、2020年1月のクレジット決済件数を100%としたリアル店舗とECショップのシェア推移です。

従来、リアル店舗とECショップの比較でリアル店舗のシェア率が高い「ファッション小売り」や「家電量販」は、3月よりECショップの決済件数が増加し、4月の決済件数では半数を占めるまでになっています。「家具・日用雑貨」においても、シェアは目立たないものの3月、4月、5月と毎月増加しています。コロナ禍で売り上げ拡大は、

・旅行自粛など観光地での消費低下 ⇒ お取り寄せ需要の増加
・海外旅行客減少でインバウンド消費低下 ⇒ 外国人向けから国内向けに転換
・外出自粛、イベント自粛 ⇒ 巣ごもり消費の増加
・飲食店の営業自粛 ⇒ デリバリーやテイクアウト需要の増加
・リモートワークやリモート会議への変更 ⇒ 通信関連事業の売上拡大
など、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための対策がEC市場拡大という好結果をもたらしていますが、いずれも売上減少に苦しむ事業と同時に起こっている現象です。

コロナ禍で今年9月経済協力開発機構(OECD)は、最新の世界全体の経済見通し(成長率:実質GDP伸び率)を-4.5%と発表しました。日本の予測は-5.8%、アメリカの予測は-3.8%とマイナス成長です。最新の世界全体の経済見通しは厳しいものとなります。そのような中で、EC事業や一部の事業のみ成長を続けることはあり得ません。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で倒産発生件数

帝国データバンクの9月8日までの確認によると、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産件数は全国で500件に達し、業種別では「飲食店」が69件で最多となっているほか、「ホテル旅館」が53件、「アパレル小売」が34件と続いています。発生月別では「6月」(120件)が最多となっています。都道府県別では「東京都」が123件、都内23区の渋谷区が最多、続いて千代田区です。

コロナ禍で、売上現象で苦しむ事業と売上拡大へ好転している事業に二分されますが、このバランスがとれない状態での継続は、日本経済、世界経済の成長を止めてしまいます。全体の経済成長がなければ、現在好転のEC事業のユーザーの活力低下と共に売上低下へと転化していくものと思います。

EC事業が好機のこの時期に、広く他事業、社会に、EC事業で培った経験やスキルを提供しお手伝いすることで、アンバランスな経済状況から脱却し、均衡のとれた健全な経済成長となるようにしなければならないと思います。

EC事業者が今出来ること
EC事業者が出来ること、お手伝い出来ることを考える前に、新型コロナウイルスの感染拡大で受けている影響、それをどのように修復したらいいのかを考えましょう。

外出自粛、イベント参加自粛、大人数グループによる会議、会合、飲食などの自粛、県をまたぐ移動の自粛、旅行や出張の自粛、また、リモート会議、リモートセミナー、リモートワークなどの推奨などの対策が講じられ、その結果、来客数減少による大幅な売上低下となり得ます。

大幅な集客の機会を失ったリアル店舗の「飲食店」や「ホテル旅館」の売上回復の策を講じる上で手助けとなる有効なEC事業者のスキルは、
・店頭に設置のPOPやリーフレットなどビジュアルツールの作成
・ホームページ作成、整備最適化による集客
・SNSなどに投稿による紹介PR
・巣ごもり用商品転換への提案
・販路を見失った生産者へのネット販売サポート

などで役立つものと考えます。
実際にボランティアにて行った支援を具体的にご紹介します。

事例1):青森県産ニンニクの販路紹介
高校同窓会(青森県)の東京支部総会が毎年恒例で9月に開催され、青森県産ニンニク(生産量日本一の十和田市産)の即売会を会場にて行っていましたが、総会中止により、新たな売り先を募り、豊洲市場青果仲買人に販売することにとりまとめ生産者と小売り業者をつなげました。

事例2):テイクアウト用商品パネル作成
半蔵門の創業20年の焼き鳥やさん(女性にも人気のお店)、来客数60%減となり、売上回復策として「テイクアウト商品」のPR強化とし、コロナ禍となって間もなくのテイクアウト売上比率10%を30%にアップすることを目標に8月より実施しました。

赤ちょうちんだけの入り口の外壁に「テイクアウトメニュー」の画像を目立つようにアクリルパネルで設置し、テイクアウト、注文先電話番号など記載の持ち帰り可能なリーフレットを用意しました。

設置1ヶ月でテイクアウト売上が目標の30%を越え、成果ありを実感しました。焼き鳥やさん、居酒屋というジャンルのお店で、入店に躊躇していた近隣住民ファミリー層(お子さま連れご家族)の入店も増加する効果もあり、成功と言えます。店主より「我々の苦手な販売プロモーション的なパネルをネット販売で、それらの制作に慣れているプロの方に作ってもらい効果が出ました。今回、ビジュアルの力、威力を強く感じました。ありがとうございました。」というコメントをいただきました。

事例3):お一人さまセット
大人数グループでの入店を控えなければならない現状の中でも、一人での入店は「一人ではお店がいやがるのでは?」と遠慮がちになるもの。お一人さまセットなど、比較的ハードルの低い価格で、お一人さまセットメニューをお店入り口で紹介し、お一人さまの入店を歓迎している姿勢を積極的にアピールすることをアドバイスしました。

事例4):動線分析でお客さまと店員の動きを把握し売上向上を図る
顧客の滞在時間・顧客動線の流れを定量的に把握し、改善策を講じるECサイト導線分析、リアル店舗の動線分析ですが、飲食店の売上低迷により生産者⇒小売りとビジネスモデルを転換した港区赤坂に8月オープンした青果店を短期間で分析しました。

<分析結果>
有機、無農薬、減農薬、天然、オーガニック、産地直送のコンセプトが地域住民に支持されており、低価格販売の努力が評価され、開店間もなく人気店、リピーターの多い青果店となりました。小規模の店舗売り場、低価格販売から店員は1名(オーナー兼)。毎日入れ替わる野菜・果物の値付けは間に合わず、レジ清算に追われている店員に顧客も販売価格をうかがうタイミングを見計らう状態です。顧客は販売価格がわからず、中には購入を断念する方もおられる。
毎日変わる青果の価格が、値札なしで顧客に理解してもらう仕組みがあれば、転換率はかなり向上すると、以下をアドバイスしました。

<対策方法>
毎日の販売価格をホワイトボ-ドに記載し、目立つ位置にボードを掲示する。

<成果>
・価格の問い合わせがなくなり、レジ清算がスムーズになりました。
・販売価格が一目でわかり、低価格であることもあり売上がお大きく向上しました。
・顧客は、販売価格を問い合わせることなく、購入を決定できるようになりました。

本日の青果販売価格をホワイトボードに記載

事例5):観光客減少で販路を失った生産者や小売店のネット販売サポート
全国各地の特産品の生産、小売りを行う事業者を首都圏及び全国のお取り寄せ需要につなげる仕組みを構築サポートする。

コロナ禍で、その影響を受け飲食店やホテル旅館など厳しい経営状況を強いられている中、好調に売上を伸ばしているEC事業者、好機と現状に甘んじることなく、日本全体、世界全体の健全で各事業バランスのいい経済成長を遂げるようEC事業で培った経験とスキルを発揮し今こそ社会貢献すべきと考えます。

例え、小さなアイディア、EC事業者には気がついても、リアル店舗事業者には見えない場合もあります。コロナウイルスに負けることなく、ジャンルを越えた協力、知識の共有が成長率をプラスに導くものと思います。

JECCICA客員講師

JECCICA特別講師 松橋 正一

EC得意分野/モールEC構築、amazon出品支援
楽天、ヤフー、amazon、自社サイトなどECサイトの運営経験を基に、数々のショップを構築サポート。大規模ECサイトの効率的な構築、データ処理システム構築を得意とする。


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