通販サイトにおける新たな方程式の必要性 vol.3
1. はじめに(前回の振り返りと今回の内容)
前回のコラムでは、「顧客数 × 来店回数」の新方程式の中身について説明しました。今回は、その中でも「来店回数」にフォーカスし、顧客が何度も訪れたくなるECサイトの仕組みづくりについて考えます。
一度購入した顧客が再びサイトを訪れない場合、せっかくの集客コストが無駄になってしまいます。新方程式の成功には、「顧客数を増やす」だけでなく、「来店頻度を上げる」ことが不可欠です。
では、どのようにして来店回数を増やし、長期的な売上向上につなげることができるのでしょうか。
2. 来店回数の因数分解
「来店回数」は、単純に顧客がサイトにアクセスする回数ではなく、「来店理由」、「購入品数」、「商品価格」 の3つの要素に分解できます。
来店を増やすことが基本動作なので、この因数分解で顧客に合わせてそれぞれの要素を最適化していきます。
●「来店理由」:まずは来店したいと思う理由
顧客数に対して来店を増やす際の来店理由作りです。とても重要なキーとなります。この段階においては、まだ「買わせよう」という意識は無用です。ECサイトも基本構造はリアル店舗と同じで、来店してはじめて購入できる為です。ここで来店を無視して一気に購入させようと思うのは過去のやり方なので注意が必要です。まずは「お店に行きたい」と思わせる理由は増やしていきましょう。
●「購入品数」:来店後にいくつ買ってくれるかという要素
従来の方程式では、後述の「商品価格」とあわせて、「客単価」の一言でしたが、新方程式では、施策の目的とミス発見を明確にするために意図的に分けています。自社ECサイトの多くは専門店なので、専門分野の品揃えが良いことが顧客の最大期待と言えます。品揃えの豊富さは先の「来店理由」にもなり、同時に「購入品数」も増やすので一石二鳥です。
また、店長、店員、コンテンツが専門的であり、その筋の人に響くことも大切です。
●「商品価格」:来店後にいかに高い商品を買ってくれるかという要素
端的に言うと上位商品を用意することです。3万円のバッグを目的に来店をしたけど、隣に7万円、15万円のラインナップがされていれば、「最近頑張っている自分に奮発して7万円にしよう!」などおもてなしのコミュニケーションが可能となるからです。先に触れた、品揃えと専門性は、お気づきの通り、商品価格も引き上げます。
また、これらは、来店を促す段階から有効で、訴求商品に加えて、隣接品、上位品、下位品を専門性をもった納得のいく形で紹介することで、すべてに総合的に効果できます。
3. 商品を売る or お客に売る
次に方程式ではあらわされていないですが、「商品を売る」のではなく、「お客に売る」という観点です。
例えば「最新式の汚れが今までよりもよく落ちる洗濯機ができました!」と言われても、不自由ない洗濯機を持っているから特段変えなくても良いと思うことが商品を売ってしまっている失敗例です。これも一例ですが、「あまりに静かで夜中でも洗濯していることを忘れてしまう」をコピーにシングルや共働きで夜中しか洗濯機を回せないお客様に定めるなら、お客に売ると言えます。
このように「商品を売る」スタンスで商いをするのはもう厳しいのです。みなさんご存じのスターバックスもコーヒーを売らずに洒落た空間を売ることにしたことが成功要因の一つだと考えられます。繰り返しですが、商品に視点を置くのではなく、お客様に視点を持っていくことが新方程式の最上位の概念です。
4. リピートという単語はお店につく
端的に言うと、「買ってくれる1来店」よりも「来てくれる3来店」の方が結果的に生涯価値として購入が増えるのは古今東西のマーケ基礎です。それが今回の公式そのもので、ファンづくり&リピーターづくりが目的になっている背景です。
ここで考えたいのが、「ファン」や「リピート」という単語は、何に対してか?という点です。自分の例で考えてみていただきたいですが、多くは「お店」や「店員」に対してになると思います。
5. まとめ
来店回数を増やすことは、通販サイトの持続的な成長に不可欠です。その為に「来店理由」「購入品数」「商品価格」の3つの要素を最適化する必要があります。
さらに重要なのは、「商品を売る」のではなく「お客様に売る」という視点を持つことです。お客様が抱える課題やライフスタイルを考慮し、提案を行うことで、顧客との関係を深めることができます。
これは単なる施策ではなく、長期的な売上を向上させるための本質的な考え方です。最後に、ファンやリピートはお店への愛着であることを忘れてはいけません。新方程式における来店回数の本質なのです。
6. 次回について
次回は、新方程式の理解度をより深くするために関連する考え方などをお話していきます。

JECCICA理事・講師 豊島 恵太
EC得意分野/食品通販支援
大学卒業後、照明メーカーを起業。2013年、株式会社Eストアー入社。サポート、セールス、コンサルタントを経験し、現在は企画設計室のマネージャーとしてECの未来を作る活動
を行う。