JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

似て非なる リアルネット融合「楽天と東急」と「b8ta」

リアルとネットの融合、異なる価値が生まれてきた

 リアルとネットが融合する。そんな話は随分、語られているけれど、実は、その利点は組む相手によってまるで異なる。それらは東京・渋谷の異なる二つの「売らない」店を見ていて、気付かされた。

 一つは渋谷スクランブルスクエアに登場した「楽天ファッション」のポップアップストアであり、もう一つは「売らない店」の先駆けである「b8ta(ベータ)」の国内三店舗にあたる「b8ta Tokyo – Shibuya」である。

 まず渋谷スクランブルスクエアのポップアップストアについて説明するなら、「楽天ファッション」に出店するブランド同士、横断的にその垣根を超えて商品が集う。そこには各ブランドに共通したテーマを設定していて、今回で言うなら「二番手ニット」である。

 エッジの効いた“二番手ニット”が揃えられているから、オーソドックスなそれとは違って、実際に手に取り、試着したりすることでその価値を訴求できるものであって、テーマをフックに興味をひいて、その体験価値を高める。

 これらの商品には全てQRコード付きのタグがついていて、スマホで読み取ると、「楽天ファッション」の各商品にアクセスする。だから、お客様はネット上で購入できるとともに、ここでレジを通すことなく、通常の通販と同様、家に配送されるという仕組みである。

東急は楽天を広告的価値で捉えている

 では、東急にとって何がメリットかというと、集客力なのであって、東急にとってみれば、デジタル施策は得意だとは言い難い。それに対し楽天は豊富な会員IDを持っているので、そこに対しての訴求する力がある。

 つまり、東急はこの訴求力を自分たちの商業施設への呼び込む広告的な側面で活用しようと考えれば、この取り組みは両方にメリットをもたらすわけだ。

 一方、楽天の立場で考えれば、オンラインでの施策はこれまでオンラインに留まっていたけれど、それでは限定的だから、その外の世界にその伸び代があると見ている。

 例えば「楽天スーパーポイントスクリーン」というアプリをダウンロードしているユーザーに対しては、その属性に合わせて、ポップアップストアの告知をその近隣を歩き、属性にマッチした楽天会員にプッシュ通知で知らせるなどを発表した。

 だから、楽天にとってみれば惜しみなく、楽天IDの顧客データを外にも影響を及ぼすことで、楽天の経済圏の価値を高め、一方で、東急は新しい集客源を手に入れることで、新規顧客の獲得を目指すわけである。

斬新さ故にリアルな反応が商売になる

 さて、では「b8ta」の方はどうか。彼らは徹底的に、この場所をデータ収集の拠点と位置付けて、出品者を募る。出品者は「売れる」「売れない」でこの店を判断するのではなく、「b8ta」から情報を受け取り、商品開発やマーケティングなどに活かしていく。だから、売れているブランドというよりはこれから売れるブランドに価値を訴求するスタイルである。

 それ故、「b8ta」では天井にカメラが設置されて、どの属性の人がどこで立ち止まり、何回その商品が見られて、どんなリアクションをしたのかを明確にし、ネット通販のようにして顧客の動向を把握していく。さらにスタッフはその商品の良きプレゼンターとなって、ブランドの姿勢からきちんと伝え、お客様から生の声を拾い上げ、それを出品者にフィードバックするわけである。

 だから、売ることを重視していないからこそ新規性の高い商品が集まるし、そういう感度の高いユーザーが集まる。「youkai express」は、日本初上陸のラーメンの自動販売機であって、その場でラーメンが作られているかのような、出来栄え。正面には、NISSAN ARIYAという車が置かれていて、度肝を抜くが、車に関心がないお客様のリアクションこそが、日産にとっての今後の戦略における価値となるわけだ。

b8taでこそ、活きる商品もある

 僕が個人的に注目したのは、「ベレアラボ」というロート製薬のフレグランスのブランドであって、語弊を恐れず言えば、フレグランスなのに香りを売りにしない。むしろ香りによって換気されるそのイメージに重きを置いて、そこに付加価値をつけているブランドである。

 だから「b8ta」においては、このフレグランスブランドの価値を、シャンデリアで伝えようとしている。このシャンデリアはクリスマスの香りを意図しており、そこにはチキンローストの香りやシガーの香りなど、意外性に満ちた香りが複数、嗅げるようになっている。そして、お客様に問いかけるのである。「あなたにとってのクリスマスはどれか」と。

 香りで選ぶのではなく、自分にとってのクリスマスはどんな香りか?とすることで、彼らが意図する香りの「イメージ」を価値に変えて、販売しているその姿勢を伝えるのである。これは、「b8ta」というお店だから成立することなのではないかと思う。

 リアルとネットを活かして、その場では売らないお店の類は、今後も増えてくるだろう。ただ、それは企業ごと発揮される力は案外違うのであって、僕は、まだまだリアルとネットの融合は深掘りする価値があるし、色々な可能性を秘めていると言っていいのかもしれないと思ったのである。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


 - JECCICA記事, お知らせ, コラム, ニュース

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2022 All Rights Reserved.s