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本格化するEC業界のAI・ML化でやるべきことは

SHOPTALK 2019 でもAIにかわりMLが定着か
今年もラスベガスで開催された、世界最大のリテールイベント「SHOP TALK 2019」。昨年は現地で参加させていただいた筆者ですが、今年は〆切に追われるオフィスから、グーグルやフェイスブック、Nordstromなどの基調講演を、YouTubeチャンネルで拝聴させていただきました。
来店した顧客データから、体型にマッチしたサイズの洋服を提案するなど、ECや店舗への「AI、センサー、ロボット」などの導入による、いわゆる「パーソナライズ化」は、共通した大きな波のようです。しかしこれは、データ化の流れからすれば代わり映えしない当然のキーワードで、EC関係者でAIの情報収集をしていた方であれば至極当然で想定の範囲内のワードだと思います。
一方で、筆者が各社の基調講演を聞いていて気になったのが、「機械学習」というワードです。昨年は、まだまだバズワード的な意味合いを持たせた「人工知能」という表現が目立ちましたが、今年はより明確な用途は現場での利用実績などをベースとした「機械学習」という表現を使う企業が増えてきました。
この傾向は、SHOPTALKのオープニングムービーや、各基調講演の登壇者紹介のムービーにも現れていて、一定の「仕込み」がなされていたことは想定されます。

SHOPTALK 2019 基調講演 facebook オープニングの様子

つまり、正体不明で擬人化されたアンドロイド的な「人工知能」のイメージから、あきらかにシステム制御されたロボットレベルの人工知能としての「機械学習」という、より現実に沿った表現がなされるシーンが随所に垣間見られました。すでに数年前から、AI開発や研究者から指摘されていた、マーケティング方面の人々はなんでもかんでも「人工知能」と過剰期待をあおった表現するがいかがなものか、実態は「機械学習」なんだ、という指摘から脱皮して、いよいよ現場にも本格的に「人工知能」が定着してきたんだな、と改めて感じた次第です。

人工知能(AI)から、機械学習(ML)へ
「それがパワーポイントで書かれているなら『人工知能』、Pythonで書かれているなら『機械学習』さ」、というジョークはさておき、要は絵空事ではなく導入が進んできた今、もう一度おさらいとしてEC事業者が何をすべきかを「明確な役割をもって」考えるステージに来ている、ということです。ちなみに、Pythonとは人工知能開発の現場で代表的に用いられるプログラミング言語のことです。
ここで、おさらいになりますが、人工知能を区分すると、以下の図の様に、弱い人工知能から強い人工知能まで大きく4つに区分することができます。 

AI(人工知能)の4つのレベル

例えば、シナリオ型チャットボットやサーモスタット付きの電子ジャーなどは、AIと冠していても、予め組み込まれたシナリオ通りにしか動きません。少し発展させたレベルになると、相当数のデータが与えられていてそこから検索したり類推するなどして、シナリオ型よりもより精度の高い結果を得ることが可能です。わかりやすい例としては、一昔ブームになった「アキネータ」などがあります。これは、頭の中で想像した人物を、画面に表示される質問に答えて行くと「アキネータ」がドンピシャと的中させてしまうと言う、ネット上に公開されている玩具的なプログラムです。これは実際に「アキネータ」と検索してみればすぐに試してみることができるので、まだ試されていない方はぜひ。

アキネータの画面

そして、これ以上になると、いわゆる「ディープラーニング」も含めて「機械学習」という部類のプログラムになってきます。このレベルの人工知能は「学習」します。学習することでより正しい「知能」を身につけ振る舞うことが可能になります。良い例は、お掃除ロボットで有名なルンバの最新バージョン「i7シリーズ」がそれです。さしづめ、Googleが、アリゾナ州フェニックスですでにサービスを始めている、無人自動車タクシーサービス「Waymo One」のように、運転者不在でも部屋の中をムダな動きをせずに障害物を避けたりしてお掃除してくれます。従来型のゴールは、以下に満遍なく掃除するか、というレベルでしたが、2019年2月に発売された新型ルンバでは、Adapt3.0 ビジュアルローカリゼーションにより、部屋の環境を学習、記憶して、どの部屋をいつ掃除するかも自由自在、という触れ込みですが、いわゆる「機械学習」です。

AI時代の経営層やコンサルタントの役割
4つの人工知能のレベルのうち、最も弱いAIであるレベル1は、マニュアル(ルール・しくみ)に基づいて単純作業をこなしてくれるので、現実的にはアルバイトにたとえられる事が多いですが、このレベルですら、あらかじめルールが必要なので、それ以上となると、しっかりと「しくみ」を考えてから人工知能を導入する必要があります。昨今、AIを導入したが数ヶ月したら使っていない、という事例もチラホラと耳にするようになりました。これはAIが悪いのでは無く、目的が明確でなかったり、導入した結果による「しくみ」を想定していなかったことによる負荷過大が原因です。
先ほど、パワポで書かれていれば「AI:人工知能」、Pythonで書かれていたら「ML(Machine Learning):機械学習」だ、というジョークをご紹介しましたが、だからといって全員が開発言語を覚える必要はありません。特に「私はプログラミングとは無縁だ」と断言されるのであればなおさらです。ただし「AIを使ったしくみ(ルール)を考える」ことは、経営層やコンサルタントに与えられている仕事なので、ここは全うしたいところです。
例えば、経営層によくAIを理解してもらうために提示しているプレゼン資料にこんなものがあります。
時給1000円で単純作業をお願いしているスタッフがいるとして、山積みの段ボールを、縦横がそれぞれ90cm以上ならAの棚へ運ぶ、90cm以下ならBの棚へ運ぶ、という「しくみ(ルール)」を作って効率的に作業をしてもらうのは経営層の仕事です。

縦横が90cm以上ならAの棚へ運ぶというルール

おうおうにして、こうしたしくみを作らずに、経営層自身が「まったくオレの言うことがわからないな、オレがやる!」と作業をしてしまい何のしくみ化も着手できない経営層がいる会社や部門は、往々にして負のスパイラルに陥りがちです。

社長しくみがありません

CにおけるAI化も同様です。AIなのか機械学習なのか、呼び名はいったん置いておき、まず、自社が他社よりも優れた成果を出すにはどのようなAIを使ったしくみが効果的なのか。 AIに学習させるとどんなことができるのか。そろそろ情報が加速しはじめてきたので、私自身も、大学で機械学習を学ぶデータサイエンティスト候補の学生さんや、現場で活躍する第一線の研究者の方々と交流・会話をして生まれたアイデアを具現化するトライをしている毎日です。

JECCICA客員講師

株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博

1993年、独自に開発した顧客管理システムで営業業績を伸ばし、1997年システム売却。1998年、インターネットに公開したフリーウェアがヒット。そのヒット要因を解析するツールを開発(現在のGoogleアナリティクスの簡易版)し、2000年からECで活用。EC立上げ初年度で月商1億円に急成長するも数年後に上場失敗。新たなECを3年で年商20億円に成長させ(現ライザップ)、2006年株式上場と同時に保有株を売却、海外視察の後、2011年「小よく”巨”を制す」株式会社ISSUN立上げ。WEB/ECの運営・制作・コンサルティングで、業界No.1に成長するクライアントを多数抱える。2017年には、EC業界と大学との連携強化を目指した日本イーコマース学会を数名と立ち上げ奮闘中。


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