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転売ヤーは顧客か否か

「転売ヤーは顧客か否か」この命題が最近よく議題に上がります。
とくに私がこの点に注目しだしたのは、ある大手小売業のECサイトについてご相談を受けたときでした。

相談の内容としては、自社のサービスドメインがなぜか頻繁にブラックリストに載ってしまい、メルマガだけでなくサンクスメールなどの重要なメールも届きにくくなる事象が発生しており、問い合わせが増える、というものでした。

本相談対象のECサイトは有名企業が経営するサイトですし、扱っている商品も日用品を中心とした安全なものばかりであるため、何かコンテンツ的に危険性を誤認させるものはなさそうでした。

実際に、顧客へ一斉大量送信し受信ブロックされた際のメールログを見ても、送信サーバに対する注意やURLやコンテンツが危険として判断された形跡はなく、あるタイミングから急に受信までに時間がかかるようになり、最終的に受信拒否されている状態になっていました。

その後、調査を継続したところ気になる点が見えてきました。送信先メールアドレスを整理していたところ、“連番ユーザ名”を利用したフリーメールサービスアドレスが同一送信ログ内に大量に存在していたのです。

偶然同時に多数の人間が似た文字列でメールアドレスを作成したとは考えにくく、このECサイトの仕様を確認したところ、商品購入の際には会員登録は必須とはしておらず、連絡先としてメールアドレスが入力されていれば購入できる、というルールになっていました。

“連番ユーザ名”の購入履歴を追ったところ、購入個数制限のある人気商品を転売目的で購入するためにアドレスが大量偽造されているようでした。

私共のお客様では化粧品の定期販売をされている企業も多く、そういった企業では、初回特典を転売目的で申し込み、2回目以降の通常購入時には連絡がつかなくなる、いわゆる「転売ヤー」を防ぐ必要があるため、商品購入希望時には会員登録を必須とし、かつ会員登録時に申込者の実在を確認する「ダブルオプトイン」という手法をとることが推奨されています。

「ダブルオプトイン」とは、会員登録フォームに入力完了した段階を仮登録状態とし、その入力されたメールアドレスに送信した確認メールが開封できた(またはメール文面内URLをクリックした)段階で本登録となる、という方法です。

この方法をとることにより、存在しないメールアドレスを入力して商品をみだりに購入することを防ぐことができるため、代金回収リスクを軽減できるというメリットや、実存するユーザをリスト化できる点からもその後のマーケティング施策的にメリットであると考えられています。

一方、いくつかのEC業者様にヒアリングしたところ、会員登録を必須とすることや「ダブルオプトイン」をカゴ落ちリスクとして捉えている方も一定数存在していることがわかりました。とくにリアル店舗販売がメインの小売業で多い傾向がありました。

特に興味深い点として、そういった企業では「転売ヤーも顧客である」という概念であったことです。たしかに店舗販売では購買者の実態や販売後の商品の扱いについて関心が薄いのは仕方がないのかもしれません。

しかしながら冒頭のECサイトで起きているトラブルのように実存しないメールアドレスをキーとして顧客対応することにより、正しい顧客へのメールが届かなくなるデメリットが生じたり、最終的にWEBビジネス上大変重要なドメインそのものが信頼度を失いがちになってしまうという危険性もはらんでいます。

「転売ヤーは顧客か否か」という命題は、本日現在、販売価格の多寡、決済方法、商品の性質等によって判断の差異が生じていますが、今後の規制や状況によりその捉え方がどう動いていくのか、対策を含めて気になるところです。


JECCICA客員講師 酒井 愛子


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