テレワーク時代の「チーム・マネジメント」考
問題が山積み!テレワークの現場
オンライン懇親会でも複数の会社のマネージャクラスが集まると、だいたいこんなテレワーク導入の悩みが挙がります。
「明らかにスタッフの業務量が減っている」
「いや逆にサービス残業させてしまっている気がする」
「サボってるのか、能力が低いのか分からなくなってきた」
「以前のように新人を育てられない」
「今の管理体制では業績が不安」
「スタッフのやる気をアップさせられない」
上記の様な感じでしょうか。中には
「今までは怒鳴りつければ、なんとかなってたのに!」
とキレるマネージャも・・・。
いずれにせよ、どの組織でも何らかの悩みを抱えている様子で、単純に業務監視ツールなどでは解決できない問題だと経験的には思います。
今後、都内では45%の企業がテレワークを継続。
本稿を執筆している2020年9月の4連休中、最悪時は95%減と報道されていた国内線の利用率は平常時の30%減程度にまで戻りつつあります。それでも都内のテレワーク導入企業は昨年対比で25%から57.8%に増えたそうです。またそのうちの80%が「このままテレワークを継続したい」と回答しています。
※2020年09月14日:東京都テレワーク導入実態調査結果より
ツールで解決できる問題
そもそもペーパーレスもクラウド化も対応できていない、セキュリティ対策も不備だらけ、と準備不足が原因なら以下のようなツールで改善すれば良いだけです。
オールインワン:G suite/Microsoft Teams/サイボウズ
チャット:Slack/チャットワーク
WEB会議:Zoom/Skype/Microsoft Teams
タスク管理:Wrike/Trello/Toggle
グループ学習:ClassRoom/Moodle/manaba
グループ開発:Backlog/Redmine/asana
その他:SKYSEA/ジョブカン/ベステレワーク/あしたのクラウド/など
解決の糸口が見えない問題
しかし冒頭の「スタッフの仕事ぶりが見えない」「スキルが一定レベルで停止した」といったマネジメント課題は、いわばテレワーク時代の新しい悩みでもあります。ネットを検索したところでこれといったツールやノウハウが見つかりません。最も大きな原因は「会議とチャットでしかやりとりできなくなった」という、コミュニケーションの変化があげられます。たとえば複数名のオンライン会議といっても現在の技術では実質1対1の会話が関の山なので、○まで生テレビレベルの優秀なファシリテイターか仕切り役がいない限り、自由闊達な意見をオンライン会議で出席者から引き出してゆくのは至難の業のように思われます。でもちょっと物事を難しく考えすぎのようにも感じます。
リアルならどうしていたか?
では同様の課題に直面したとき、リアルのオフィスならどうやって解決していたのでしょうか?
スタッフ:「マネージャ、ダメです、みんなの考えがまとまりません」
マネージャ:「よし、みんなホワイトボードに集まって!」
と、全員の意見を書き出し、雰囲気を盛り上げながら、結論を導きだして、チームのゴールを明確にする。10名程度のチームマネージャならこのような「ブレイン・ストーミング」ですぐに対応していたはずです。
まずはデジタルに「置き換え」てみる
これは簡単で、100円ショップでホワイトボードとペンのセットを買ってくれば問題解決です。zoomにもホワイトボード機能がありますが使い物になりません。まずは100円で「オンライン・ブレインストーミング」を開催してみましょう。ホワイトボードは壁にかける必要もありません。カメラに向かって腕で抱えて書き込めばよいだけです。
もしデジタル・ホワイトボードが使いたいならiPadやアンドロイドタブレットで使えるGoogleが提供する無料ホワイトボードアプリ「Jamboard」がお薦めです。タブレット端末で描いた画面が、PC側にリアルタイムに共有されるので、あとはそれをzoomなどで画面共有すれば良いだけです。背景にはあらかじめスキャンしておいた資料や教科書を選択することも可能なので、オンライン授業にも活用できます。
Jamboardに書き込んだ手書き文字は文字認識され変換も可能
その他にも
1.出社時の挨拶でスタッフの雰囲気を察知する
2.個別に「なにか困ってる?」と声をかけて課題を吸い出す
3.役割を与えて自信を付けさせる場を与える
など優秀なマネージャほど「五感を駆使したマネジメント」がデジタルでは使えない、という先入観に陥っていますが、
1.→オンライン朝礼:スタッフとの会話の時間を設ける
2.→「個別チャットは、ツイッター感覚で使ってね」と声をかけておく
3.→zoomのブレイクアウトルームを活用する
など、勉強熱心なマネージャ達は、不慣れなデジタルをゼロから学習してリモート環境下でも自分達のゴールを達成しようと試みています。
「置き換え」ができたら「塗り替え」が必要
比較的新しい「プログラミング」の世界では、それまで完成形とされてきた開発手法「ウォーターフォール型」から、Webの登場で「アジャイル型」とよばれるスピーディなPDCAによる開発手法に取って代わられた時期がありました。現在では両方の長所短所を取り入れたハイブリッド手法を採用する開発プロジェクトが一般的ですが、アジャイル型の登場によって世界に広まったソフトウェアやサービスは数多く存在します。
今直面しているリモート・マネジメントの課題も、一旦は従来のマネジメント手法を「置き換え」て突破を試みることも重要でしょうが、根本的にゼロから「塗り替え」なければ新しい時代には対応できないでしょう。実はアジャイル型の源流はソフトウェア開発ではなく「マネジメント組織論」だと言われています。リモートマネジメントの課題解決策も、少し離れた異業種を眺めていると見つかるのかもしれませんね。
JECCICA客員講師 宮松 利博
得意分野/Eコマースの立ち上げ・販売拡大
1998年に公開したフリーウェアがヒット。その知見で開発した商品が大手ECコンテストで12部門受賞、3年で年商20億円に(現ライザップ)。上場と同時に保有株を売却し、ECコンサルティング会社を立ちあげ、業界No.1クライアントを多数抱える。日本イーコマース学会専務理事。