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見落とされた価値を拾い上げて伸び代に

従来の縦割りの発想を捨てる
まだ掘り起こされていない価値があります。先日、僕はABCスタイルという会社に行って、そこで「サステナ缶」という商品の話を聞いたのです。ABCと聞いて、ピンときた方もいると思うのですが、クッキングスタジオのABCです。
そもそも商品を出していることすら知りませんでした。しかしABCスタイルの方々に話を聞くと、従来のイメージとは違う姿がありました。ABCの事業の肝となっているのは、料理教室というよりは、人材派遣業だというのです。

要するに、先生が存在しますから、自ずと食のクリエイター、インフルエンサーなど食にまつわる人材を世間に行き来させる業務を手がけることになります。料理教室はその一つに過ぎなかったのです。

多くの人材が行き来すれば、レシピも集まります。だから、それを応用し企業に情報提供するなど、幅を広げるほど、自分たちでも商品を作ろうという機運が生まれたのです。

強みを活かして新ジャンルへ飛び込む
ただ、普通の商品で提供しても、太刀打ちできません。ここがみそです。彼らは世の中で利用に至らなかった食材を、自らのレシピで生まれ変わらせた。それが「サステナ缶」です。
その一つはサクラマスという魚で、食材としてもよく使われるのですが、それはあくまでオスの話だというのです。メスにおいては非利用の箇所がある。だから、それを有効活用できないか、と養殖場の人たちに言われ、レシピ力を生かして、缶詰にしたわけです。

驚きなのは、非利用の魚でも味は利用されているものと遜色ないということ。調味料を工夫し、何を掛け合わせれば、それが活かせるのか。塩と合わせたり、様々な組み合わせを試したといますが、そこで、財産である、料理に関わる専門家とのネットワークが活かされます。それが、商品のクオリティを上げるのに貢献したわけです。

缶詰というのは保存のためではなく製法
もう一つ、缶詰というのは一種の製法であるということです。「サクラマスの和風甘酢あんかけ風味」であれば、缶の中に汁に浸したサクラマスと玉ねぎが入っています。その調和が絶妙なのは、実は缶に封をしてしまった後で、一つの大きな釜に入れて、熱して“調理”しているからなんです。缶に入れる前の味付けとこの缶詰という「製法」の賜物なのです。

何が言いたいのか。ずばりSDGsが理由で買い続ける人はそれほどいないでしょう。でも使われていなかった部位も美味しい料理として提供できることを示したことで、それを新たに購入し続ける人が出てきます。つまり、発掘できていない価値を拾い上げて、ビジネスにできた。その意味で、SDGsはその存在意義があると言えます。

時間も商品の付加価値となる
また、別の例をあげましょう。先日、ドットミーという会社が「サイクルミー」という商品を手がけていますが、それは健康機能食品です。そういうと、僕らはサプリメントのようなものを連想しますが、そうではありません。

えだまめチーズだったり、海鮮入りの中華粥だったりします。何が違うのかというと、彼らはその食品を「食べる時間」に焦点を当てたのです。これまでの健康機能食品は、多くがその機能性を謳い、そこで他よりも優れているとをアピールすることに奔走しました。

いつしかそれを見るうちに、消費者側が疲弊してしまったのではないか。そう考えた彼らは、栄養のあるものがどの時間において、摂取することがベターなのかを考えました。そこから時間で食品を割り当てて、商品化し、ECで販売しました。

そうすることで、朝、昼、夕方、夜という具合に、購入者のライフスタイルに近いところで商品を提示することになります。もはやそれらは、文化であり、日常だから、サブスクリプション的な要素を発揮するわけです。
これがECの話ではなくなっています。驚く勿れ、この商品は、今、皆さんの地元のセブンイレブンに並んでいるはずです。

全く違った角度から手がけることができる時代
なぜ、セブンイレブンは採用したのか。従来、コンビニは必需品を重視していました。しかし、ラインナップで心理的に訴えかけるものが必要だと考えたようで、そのきっかけは、おにぎりだったと言います。

最近、おにぎりでヒットしたものに、梅をまぶしたものがあるそうです。その理由はなんでしょう。実は、白いご飯に、細かな梅がまぶしてあるから、全体としての見え方がピンクだったからだと言います。女性を中心に、可愛いという口コミが広がり、自然発生的に売れました。つまり、機能だけではない切り口がこれからは必要だと考え、サイクルミーの導入に繋がりました。

彼らはそれをウェルビーイングと言っています。僕らはまだ、拾い上げられていない価値を見落としている可能性がありますが、拾い上げる可能性を秘めているのは、ECです。ECであれば、文化を伝え、その価値を訴求することで、ファンを形成できます。既存の事業は活かしつつ、改めて、その強みは何かを考えてみる。それを、今までと違った形で、みずからの強みを活かして、リブランディングした時に、新しい商流が生まれます。

それこそが、新しい伸び代となるはずでしょう。活かせる場所はまだあるのです。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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