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いま注目されているD2Cとは?いままであったEC専業の商売とは何が違うのか?

前回から続いて、D2C、DtoC(Direct to Consumer)について、掘り下げていきたいと思います。前回は、D2Cの概念についてお話をさせていただきましたが、そういった中で良くいただく質問があります。

それは「定期通販とか、サブスクリプションとかじゃないとD2Cじゃないの?だとしたら既存の単品通販とかはD2Cなの?」という内容です。

D2Cは「Direct to Consumer」。Consumerは消費者とか使用者といったような解釈になるので、実は「買うか迷っている人」よりも「既に使っている人に対してダイレクトである」ことを指しています。なぜこのような定義になったのかというと、D2Cという構造の最大のメリットとして定義された「顧客との長期的な関係性」はLTVで測られることが多く、そのLTVをあげる要素として、CRMの活用と次回以降の購入ハードルを下げる導線設計、つまり如何にして「気持ちよく使い続けるか」、そして「継続するにあたっての行動コストの低減を実現する」ことの重要性が高まり、その需要と「サブスクリプション」の勃興がマッチした結果、D2C= サブスクリプション文脈が生まれたと言えます。

故に、「サブスクリプション」「定期通販」を実現したら「D2C」だというのは大きな誤解です。

さらに言えば、この定期通販の世界の上位概念は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる、EC周りではもっとも激戦区であり、猛者たちが集結しているもっとも攻略難易度が高い分野と言えます。ダイレクトマーケティングは、顧客の直接反応を獲得し、リレーションシップを構築していくという点ではD2Cと非常に近い概念を持っていますが、決定的な違いは「エモさ」にあります。

D2Cは良くも悪くも「エモさ」が問われます。創業者、ブランドの思い、社会的価値など、共感や応援したい気持ち、感動、義憤など、情緒的なアプローチが多いと言えます。消費者、顧客と相互にやりとりしながら、商品の開発やビジネスの発展まで共創していく。そのため、SNSのような「パーソナルに近い」コミュニケーションが可能なプラットフォームの誕生によりD2Cは大きく成長できたのです。

一方で、ダイレクトマーケティングは、顧客は「顧客」として徹底的に理解し、究極1:1まで突き詰めた結果、顧客対応の一手までチューニングされ、人間とテクノロジーを駆使した究極の顧客満足度フォーカスのマーケティングシステムとなり、かつ、それらの成果はすべて可視化されている、故に「真のプロフェッショナル」の力がないと勝ち目がない世界と言えます。

既に大きな成功を築いている、皆さんがよくご存知の単品通販の会社さんのマーケティング担当者の方や、その支援企業の方とお話するとよくわかりますが、パフォーマンス向上のために徹底的にストイックであり、CS側では顧客のほんの少しの反応などに対しても侍の如き気迫で真摯に向き合っている世界です。D2C = 定期購入だと安易に考えて参入すると、大火傷をします。

じゃあどうするんじゃ!となるんですが(笑)

大切なことは、自分たちのブランドのお客様が、定期購入の仕組みを望んでいる、その方が最大限価値を伝えられるのであれば定期購入やCRMも導入することは、間違っていません。ただしそれらは、ブランド全体設計の元に設計された顧客へ提供する「象徴的体験」の一部であることの認識が必要です。部分最適の数値で見るのではなく、ブランド全体の最適値を設定し、そこに到達できるように、全体を調整していく。エモさの部分は可視化し辛く、モヤモヤしますが、そのあたりまで内包して全体設計しつつ、消費者と向き合う意識が必要です。

そういった意味では、D2Cを一言で例えるならば「総合格闘技」と言えるのかもしれません。

余談
ここまで脈々と語ってきましたが、結局は「ビジネス」なので「生き残ったもの」が勝者であることは否定できない事実でしょう。僕が言っていることも、5年後には笑い話になっているかもしれません。しかし、たとえそうであっても、今自分たちが考えていること、そして世界をどうしたいのかを語ることは自分たち自身もまた「D2C」という「運動」に参画している身として必要不可欠だと考え、このようなnoteを書いてみました。

思いを伝えることってなんだか気恥ずかしい部分もあります。でも、遺伝子に例えると、「一方的な情報」は単なる「RNA」に過ぎず、コピーされていく中で、様々なエラーや欠損、変化が生じ、結果的には人々に悪影響を及ぼす可能性すら生み出してしまいます。

しかし、そこに物語や歴史、思想、哲学、信念、スタイルそして願いが結合されることで、初めて、強力な「情報エラー訂正機能」を備えた「DNA(二重螺旋)」になり得る、すなわち人々に語り継がれていく遺伝子になり得ると僕自身は考えます。書いていて思いましたが、「DNA」が存在することもまた、D2Cの要素の一つと言えるかもしれないですね。

*(参考)DNAとRNAとの比較
DNAとRNAはともに [ヌクレオチド]の重合体である「核酸」であるが、両者の生体内の役割は明確に異なっている。DNAは主に核の中で情報の蓄積・保存、RNAはその情報の一時的な処理を担い、DNAと比べて、必要に応じて合成・分解される頻度は顕著である。DNAとRNAの化学構造の違いの意味することの第一は「RNAはDNAに比べて不安定である」。両者の安定の度合いの違いが、DNAは静的でRNAは動的な印象を与える。

すべての言葉、行動、商品、クリエイティブ、信念、願い、希望・・・それらに少しずつ思いをのせていきましょう。そして議論しましょう。この文章を読んでくださっているあなたもまた、D2Cという運動が正しい方向に進むか否かの鍵を握っています。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 河野 貴伸

株式会社フラクタ 代表取締役
EC-CUBEエバンジェリスト
Eコマースに関わる人材育成とブランディングに重点を置き、業界の発展とEC-CUBEの普及、デジタルイノベーションの推進支援をメインに全国でセミナー及び執筆活動中。


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