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採算とは?もう一つの考え方

JECCICA NEWS VoJECCICA特別講師 笹本 克

笹本さん

 

リアルショップの店頭でお客様に普通に買い物をして頂く時には、名前をお聞きする必要もありませんし住所や電話番号をお尋ねする必要もありません。
予約や商品の取り寄せ、あるいは会員カードを作って頂くなどの場合や、毒物や劇物の販売などのかなり特殊な買い物をして頂く場合を除いては、お客様は匿名性を保ったままでお買い物をして頂くことができます。
もう少し言えば、リアルショップでは実物の商品を見て充分に選んで頂き、品質やスペックにもご納得頂き、そしてCOD(Cash On Delivery=商品引き渡しと同時の支払い)という取引形態が常識となっています。

つまり売り手であるお店は、一義的には商品についての説明をする必要もなく、さらにはお客様の与信について確認する必要もありません。
スーパーマーケットなどの販売スタイルであれば、お買い上げ頂いた商品を袋にいれることさえ不要なのです。

一方でネットショップの場合は、お名前を聞いて住所を尋ねて電話番号やメールアドレスも教えて頂く必要があり、さらにはお届け日時なども聞かなければなりません。もちろん商品についても、実物を見て頂いていないのですから充分に説明をする必要があります。
また商品などについてHPの記載だけでは分からないお客様から質問が来たりもします。
質問の回答やクレームの対応、その他諸々のお客様に連絡する必要があった場合にはメールを書いたり電話をしたり。その電話もショップ側がかけた時にはお客様が電話に出ないこともあります。
他にも宅配のための梱包作業や納品書の作成など、リアルショップの店頭でお買い上げ頂く時に比べて大変多くの作業が発生しています。

ネットショップはこれだけの手間がかかります。
もちろん前記の「手間」は受注に関わる対応だけを書いたに過ぎず、当然ながらショップの制作や検索広告の管理などについては別の作業が発生します。
この「手間」についてのコストを「明確に」把握していないと、たとえば“こんなこと”が起こります。

売上が増えてショップが忙しくなり、人を増やしたら給料などの固定費が増えて「また売上と利益のノルマが上がってしまう」という状況です。
これは売上の規模は拡大しているものの、実は「手間」がかかり過ぎて採算割れ=つまり赤字要因が拡大しているという状況を意味します。結果として次の売上と利益を創るための「前向きなコト」に使える資金的余裕が減り、その後に「これ以上」マンパワーも増やせないということに気づいた時点で「伸び悩み」の状態に陥ります。

 
採算とは
 

ちなみにこれはショップの経営者やマネージャー自身も相当に忙しい状態が続いているということであり、トップが時間的な余裕を持っていないがために、省力化の仕組みづくりやさらなるノウハウを吸収するための勉強などに回せる時間もないということを意味します。
またトップ自身が担当者として実務作業もこなす必要がある状態である場合が多く、トップの時給を「実際の労働時間」で考えてみるとアルバイトのスタッフよりも少ないというようなことも少なくありません。
もちろん給与の額面ではスタッフよりも多いのですが、実は毎日14時間労働という様な具合です。

今まで笹本はこの様なケースのショップさんも数多くアドバイスさせて頂いてきましたが、この様なショップさんも「最初に」ご依頼頂く際のご趣旨としては「売上と利益を伸ばしたい」と言ってこられます。
つまり「伸び悩み」に陥っている最大の原因にこの時点ではまだ気づいていないのです。
そしてこの段階では、売上が向上し利益が増えれば今の状態から脱却できると考えられているのがほとんどです。

この様なケースのショップさんを笹本がコンサルティングする際には(実は「伸び悩み」の状態であることを察知しながらも)まずは最初のご依頼のご趣旨通りに、売上向上のための「諸々の課題を」出します。
そして一定のスパンをおいた後に再来訪すると、当然ながら日常業務で手一杯なので、諸々の課題は消化できていないという回答が返ってきます。
つまり、売上と利益を伸ばしたくても「実はそれができる状態にはない」ことを一度ご理解頂くのです。
そしてこの時点で初めて、なぜ「伸び悩み」の状態に陥ったのかを詳しく説明してから、実は売上向上の課題よりも先に着手すべき最優先課題=「手間」でコスト割れしている状態の改善 に着手します。

 

この状態を改善するには2つの手段があると思っています。

1)まずは「手間」=事務コストの把握です。
ショップの所在する地域によって人件費も異なるので一概には言えないのですが、ショップ経営者に一番分かりやすく伝えるために笹本は、

【 1分30円 】

というコトバを多用しています。

1分30円は時給1800円となりますが、これは8時間/日 x 実働平均21日/月=およそ30万
円/月という計算になります。
ここから源泉徴収分や交通費や各種保険、また仕事で占有するスペース分の家賃や光熱費の人数割りの金額など「お店で負担している様々なコスト」を引いて行くと手取りベースでおよそ20万円強になるかと思います。
またショップ経営者自身の給与がこの金額以上であり、経営者自身が実務作業もこなしているのであれば、かかる手間についての1分当たりのコストはさらに上がります。
そしてネットショップ運営に付随する「手間」は、このコスト負担をショップに強いているということを詳しく(時には執拗に)説明しています。

比較的人件費の安い地域で、かつ、若手やアルバイト採用のレベルで考えるとすこし高めのコスト計算になるかと思いますが、実は「1分30円」というコストボーダーは「外注できるギリギリの線」でもあります。
これは「伸び悩み」を改善する大変重要なカギになります。受注対応のみならずページの制作や更新、あるいは検索広告の管理、商品説明やメルマガのコピーライティングなど、ネットショップの運営に付随する業務は一定のスキルが必要なコトが多く、その作業や成果物には一定以上のクォリティーを要求されるので決して「高めのコスト計算」ではないことを理解して頂くのです。

「手間」についてのコストボーダーを明確に把握して頂いた上で、その次に省力化&効率化についてさらに真剣に考えて頂くべく、業務単体でのコストブレークダウンを考えて頂く様にしています。
たとえば、3000円の受注1件に対して粗利が3割だとした場合、この受注対応にトータルで30分かかったとしたら採算はどうなるか?などの質問をするのです。

“トータルで”とは、受注メールが来てからピッキングや梱包を行い発送して入金確認に至るまでの「この受注1件」に対応するための【 全ての 】業務です。
前記のケースの場合3000円x3割=900円ですから、「1分30円」で手間のコストを考えるならば受注対応だけで採算ギリギリ。
売上の集計作業や広告の運営管理などはもちろん、ショップの制作などにかかわる「その他の付随する業務コスト」は、この受注からは出せていないということになります。
お客様から質問のメールや電話が来た時点でこの受注分は完全に採算割れとなるのは言うまでもありません。

ようやくこの説明に至って初めて、省力化&効率化に「本気」になって頂くことができます。(笑)
省力化&効率化の具体策は様々ですが、過去のコンサルティングでの若干奇抜な例を挙げれば、メルマガを止めたり、商品点数を減らしたり、同梱する自筆のお手紙を止めたりという事例もありました。
もちろんシステムやソフトの導入の他、受注対応などに「毎回かかる10秒の手間」を一つ一つ探していってこれを改善したりQ&Aや商品説明を充足して問い合わせ自体を減らすなどの王道施策はもちろんですが。

もう一つの手段は「値上げ」です。これはショップさんの心理的抵抗も大きく、コンサルタントとしてはかなり「手間」がかかる施策なのですが、(笑)仮に粗利が2割の商品を1割値上げしたとして、その結果受注件数が3割減ったとした場合、その採算はどうなるでしょうか。
値上げ以前は受注1件当たり2000円だった粗利額が、値上げ後は3000円となります。仮に受注件数が3割減ったとしても粗利額は2100円という計算になるので、もちろん採算は向上しています。
採算向上は、粗利の絶対額だけではありません。受注件数が3割も減っているのですから、「手間」というコストもかなり採算が向上していることに気づいて頂きたいのです。

「手間」をコストとして明確に把握して頂き、これを改善してゆくことで時間的にもマンパワー的にも「次の売上と利益」を生み出すための余力が生まれます。「手間」という見えないコストの採算分岐点=たぶん「1分30円」をクリアできて初めて「売上&利益」を伸ばせる環境が整うと考えて頂ければと思います。

 

JECCICA NEWS Vol.34 掲載

JECCICA特別講師 笹本 克

笹本さん

自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務め、DeNA、Yahoo!Japanショッピング事業部へのレクチャー、ドリームゲート起業講座の他、コンサルサイトの累計約600社、多業種でのコンサル実績も豊富。l.34,サイト,ショップ,理解,納得,認知

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