パンデミックと食料品Eコマース
新型コロナウィルスのパンデミックにおいてEコマースの利用が加速していることは以前お伝えしましたが、アメリカでは特に食料品のオンライン購入が増加しています。食料品のEコマースと言いますと、ちょうどドットコムバブル時代のウェブバンを思い出します。良質の生鮮品も扱い、配送も30分枠で指定できる便利さから私も時々利用しましたが、急激な複数都市展開および過剰な設備投資によるキャッシュフロー難から、サービス開始後わずか3年で倒産してしまいました。その後、Eコマースで食料品の購入はなかなか根付かず、Eコマースの中でも遅れた分野となっていました。
が、最近発表されましたeMarketerのレポートによりますと、2020年はオンラインでの食料品の売上が前年より54.0パーセント増加し、次グラフにあるとおり958.2億ドルに達したそうです。これは、アメリカにおけるEコマース全体の総売上高の12.0パーセント、食料品全体の総売上高の7.4パーセントを占めます。また、Digital 360による他の調査データによりますと、2020年11月にはアメリカの6,010万世帯が平均2.8回の注文を行ったようです。
ソーシャルディスタンスおよび店舗への入場者数制限から、店舗側がEコマースサイトの充実やカーブサイドピックアップサービスの提供を始めるなど、食料品のオンライン購入の利便性が高まったことが大きな要因と考えられます。また、Amazonに買収されたWhole Foods Marketの一早いEコマースプラットフォームの提供がその後押しをしたとも言えるでしょう。私自身、店舗の外での長蛇の列を見て以降、WholeFoods Marketのオンライン購入を頻繁に利用しています。今後は、ワクチンの展開により消費者がより快適に店舗に戻ることができることから成長は鈍化すると考えられますが、それでも食料品のオンライン購入は引き続き増加し、グラフにあるとおり今年は初めて売上が1,000億ドルを超えると予想されています。Digital 360も、オンライン食料品の売上は2025年までに食料品総売上の21.5パーセントを占める2,500億ドルになるだろうと推定しています。
食料品のオンライン購入者のデータは次グラフのとおりで、昨年少なくとも1回購入したアメリカの14歳以上のオンライン食料品購入者の数は前年より42.6パーセント増加し、1億3,160万人と初めて1億人を超えました。2022年には、アメリカ人口の半分以上がデジタル食料品の購入者になると予想されています。
オンライン食料品の売上の成長は、購入者1人あたりの支出の増加によっても促進されています。購入者1人あたりの年間支出は2020年には728ドル、2021年には818ドルと見積もられています。さらに、2023年には初めて1,000ドルを超えると予想されています。
新型コロナウィルスによるパンデミックは、私たちの日常生活を大きく変えましたが、食料品Eコマースの定着もその一つと言えます。
(*グラフはeMarketerのデータをもとに作成。食料品の内容は食品、飲料品に加え、グローサリーストアで通常販売されているクリーニング、個人ケア、ペット用品なども含む。)
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。