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ノンオフィス時代ではじまった「スモールビジネスの台頭」

■オリンピックは延期になったが、未来は一気に近づいた
オリンピックの延期をはじめ、40兆円超ともいわれる経済損失を生み出した「緊急事態宣言」。特に都市部の飲食店では家賃交渉や店舗解約などのニュースが連日取り沙汰されただけでなく、一般的なオフィスにおいても解約や郊外への移転の話題が目立ちました。
一方で、海外ではTwitter社がリモートワークを無期限化するなど「仕事はオフィスでやるもの」という働くスタイルの旧常識は覆され、一定層にとっては「出勤しないほうが効率的」という「新しい働き方」が、期せずして定着している機運を感じます。
筆者も個人事業主時代はSOHOでしたが「オフィスの全員がテレワーク」という、いわゆる大手企業も含めた「ノン・オフィス時代」とも呼べる業務スタイルは、ある意味、オリンピックによって到来すべきだった未来を一足飛びに運んできたようにも感じます。

■2030年にそうなると思っていた未来が、10年前倒しでやって来た
たとえば、期せずしてこのタイミングでの出版となった『シン・ニホン』で、著者の安宅和人氏が以前から示唆してきた「未来」の様子のいくつかは、一気に目の前の現実となりました。人を介さずにサービスを受けるためのAIやロボット、物理的な移動を制した企業からリモートコントロールを制する企業へのパワーシフト、仮想体験(VR)やオンラインライブなど、そもそもは徐々に一般に浸透するはずだったサービスが、極端な環境の変化によって急激に需要が高まることで、ものすごいスピードで生活者全体の「リテラシー」をあげ、ある意味ウィルスよりも広範囲に伝播したのではないでしょうか。

「2030年頃かな、と思っていた未来が、10年前倒しでやって来た」と語ったのはショッピングカート最大手のshopifyのトビアス・リュトケCEOです。今までは「デジタル」「E(イー)」日本的にいえば「オンライン」がつくものは、何かのおまけ的に扱われてきたけれど、今回の社会の変化で一気に「主役に成り代わった」と指摘します。スポーツの爽快感をもとめてeスポーツをはじめるヒト、オンライン居酒屋や、オンライン婚活などはニュースでも紹介されたのでご存じの通りかと思いますが、個人的には見つけて驚いたのが「オンライン宿泊」です。

■観光業の「オンライン」での逆襲
1泊1000円、18:00までに支払いを済ませ20:00チェックインすると、zoomで店主が駅から迎えに来てくれて館内を案内するという「オンライン宿泊」。毎日が予約で満席です。お食事を紹介すると、その日の宿泊客もzoomで集まっていて「わぁおいしそー!」と子供も奥さんも盛りあがるわけです。もう「リカちゃんごっこ」です。食べられもしない「絵に描いた餅」をzoom越しに見て「宿泊気分」を楽しんでいるわけです。
 
ある番組で、落合陽一郎さんが、ウルフギャングという高級ステーキレストランの3万円のステーキをデリバリー注文したらやっぱりおいしくなかった、でもウルフギャングの味がするね、と家内はご機嫌だったので価値はあった、と話されていました。要は「今までは価値がないと思っていたことが、ガマンを強いられたとき付加価値になり、そしてヒトはそれに高額な対価を払う」という内容だったように思います。

まさに「オンライン宿泊」はこうした心理で成り立っているのではないでしょうか。フードデリバリー業界では後発ながら、ウーバーイーツ の約2倍の売上高を誇る、「ドアダッシュ」というサービスがあります。 アメリカでは、これに「 グラブハブ」を加えた3社がフードデリバリーでは3強で、「注文件数」でトップを走るのは、もちろん「ウーバーイーツ」ですが、「注文金額」では「ドアダッシュ」が「ウーバーイーツの2倍」なのです。なぜでしょうか。勝因は、「都市部の高級レストラン」に特化していることのようです。郊外のデリバリーでは「単価が低い傾向」なので、20%の手数料で売上をあげているデリバリー業としては、この差は大きいです。当然、このロックダウン下ではデリバリー業は活況となり、高付加価値の都市部のデリバリーは景気が良いようです。

■デジタルに疎かった「個人」がオンラインでECの利ざやを奪う
2月以降、さまざまなモニタリングツールでどのサイトがアクセスを伸ばしているのか徹底的に調査していて目立ったのが、「ミンネ」や「クリーマ」などの個人が自作品を販売しているアパレル用品サイトです。私も何度か利用したことがありますが、質の高いオーダー品を格安で作ってくれます。また、オンラインレッスン系のサイトも伸びを見せていて、新規で登録された方も多く見られました。

英語などの語学だけでなく、料理、楽器、洋裁、ダンスなど、教室運営が厳しくなったり解雇されたという「先生業」の方もいらっしゃれば、これを機に「先生業」にデビューした、という方もいらっしゃいます。中には、お店の味をご自宅で、を売りに、休業をやむなくされた飲食店のマスターが食材を販売して、zoomでオンライン飲み会をしながら予め郵送しておいた「焼き鳥セット」の焼き方指南をしながらお客様と盛りあがる「オンライン居酒屋」などもありました。いずれも「オフラインの時より、時間給が上がった」という声が多かったです。

■窮鼠猫を噛む、を侮ってはいけない。
このように「オンライン宿泊」もそうですが、個人商店に近い経営者が、知恵を絞って編み出したzoom活用法に、zoomなんて触ることも無かったであろう一般の生活者が「可処分所得」を使い始めているわけです。観光業だけでなく、地方の観光客頼みだったお土産屋さんも工夫次第で勝機に充ちています。
その一方で、我々Eコマースは安泰、と変化すること無くタカをくくっていると「ウサギとカメ」の二の舞です。そう感じていた矢先に、世界最大のショッピングカートサービス「ショッピファイ」のCEOトビアス・リュトケ氏は、するどい一言を社員につぶやいていて、ハッとさせられました。

「この変化というクルマに便乗するな、お客さま気分で乗り込む代わりに、ドーンと運転席に飛び乗って、新しい道を作るんだ。」

https://twitter.com/tobi/status/1263483502923841538?s=21

JECCICA客員講師

株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博

1998 年に公開したフリーウェアがヒット。その知見でECを立ち上げ、半年で月商1億円の単品記録となり多くのメディアに取り上げられる。蓄積したノウハウで開発した商品がECコンテスト12部門受賞、3年で年商20億円に成長(現ライザップ)。同社の上場と同時に保有株を売却し、ECコンサルティング会社を立ちあげ、業界No.1クライアントを多数抱える。日本イーコマース学会 専務理事。


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